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コロナ禍で歯医者に行ってなかったら、口の中が〝大変な状態〟に

コロナ禍で歯医者から足が遠のいていたら……。※画像はイメージ
コロナ禍で歯医者から足が遠のいていたら……。※画像はイメージ 出典: Getty Images

目次

コロナ禍で、歯科についても受診を控える傾向が指摘されています。かく言う記者もその一人でした。そして昨年、思い直して受けた歯科検診で、歯科医から口の中が「大変な状態になっている」と言われ、慌てることに。自覚症状に乏しい変化の原因は、遅く生えてきた“親知らず”による病気でした。口腔内の健康を見直す機会になればと、専門医への取材を交え、ことの次第をまとめます。(朝日新聞デジタル機動報道部・朽木誠一郎)
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「大変な状態」言われ

コロナ禍で問題視されている、医療機関の受診控え。厚生労働省など政府も注意喚起を続けていますが、医科だけでなく歯科についても、受診を控える人が多いことが指摘されていました。

日本歯科医師会は2020年9月のリリース『歯科医療に関する一般生活者意識調査』で、新型コロナウイルス感染拡大による影響について、以下のようにまとめています。

<2020年1〜6月に受診をキャンセルした人は「現在治療中」の約2割、「現在中断中」の約3割。3〜4月のキャンセルが目立つ>

記者も、コロナ禍以前は定期的に歯科受診をしていましたが、コロナ禍で足が遠のいた一人です。もともと受診しても歯石の除去などが中心で、虫歯など歯の病気を指摘された経験がなかったこともあり、その後、自発的に歯科にかかろうとは思わなくなっていました。

そんな中、21年に自治体の無料の歯科検診の対象の年齢となり、「そういえばこの2年、歯医者さんに行っていないな……」と重い腰を上げたのでした。

ところが、そこで歯科医から伝えられたのは、「下の奥歯が大変なことになっている」という、思わぬ事態でした。今も手元に残してある検診表には、「年齢の割に歯周炎が進行しており、歯の揺れも始まっています」と書かれています。

「歯周炎」「歯の揺れ」……もしかして、深刻な事態なのでは。ようやく危機感を抱きました。人並みには歯磨きなど口腔ケアを実施していたつもりだったのに──。

「大丈夫なんですよね」と尋ねても、担当歯科医師は「とにかく歯周病の専門医を受診してください」と繰り返すばかり。不安なまま紹介された歯周病専門医を受診しました。

原因は想定外の“あの歯”

前述した歯周炎は、歯周病の症状の一つです。日本歯周病学会​​によれば、歯周病は日本人が歯を失う原因の第一位で、罹患率は15 - 24歳が20%、25 - 34歳で30% 、35 - 44歳で40%、 45 - 54歳は50%、そして55歳以上は55 - 60%という割合になっています。

歯周病は、プラーク(歯垢)中の歯周病原細菌によって引き起こされます。まず起きるのが、歯の周りの歯ぐき(歯肉)の炎症で、これが歯肉炎。歯肉から周囲の骨などの組織まで炎症が進行すると歯周炎となります。

歯周炎では、歯を支えている骨が溶けてしまうことで、歯の揺れが始まり、場合によっては歯が抜けたり、治療として抜いたりしなければならなくなることもあると言います。

炎症は、歯と歯肉の境目(歯周ポケット)の清掃が行き届かず、プラークが停滞することにより生じます。自覚症状に乏しいため、気がつかないうちに進行してしまうことも。なお、喫煙により歯周病にかかりやすく、また悪化しやすくなります。

さらに、慢性的な歯周病は、心血管疾患、脳卒中、糖尿病の悪化、低体重児出産などのリスクを高めることが知られています。

さて、記者の奥歯はこの歯周炎と診断されてしまったわけですが、やはり、手入れが悪かったのでしょうか。

もちろん、清掃が十分ではなかったのですが、それだけとも言えない事情がありました。記者の場合の原因は「親知らず(智歯・ちし)」。実は、親知らずの生え方によって、周囲の歯に歯周炎を起こすことがあるのです。

日本歯周病学会の歯周病専門医である汐留高橋歯科医院院長の高橋潤一さんに話を聞きました。高橋さんは「親知らずと言うと、磨きにくく虫歯になりやすいというイメージがあるかもしれませんが、他に歯周炎にも注意が必要です」と指摘します。

親知らずは、大臼歯(大人の奥歯)の中で最も後ろに位置する歯。永久歯の中で最後に発育し、概ね10代後半から20代前半に生えてきます。上あごの左右と下あごの左右の計4本が基本ですが、もともとない人や、4本が揃っていない人など、個人差があります。

そして、後から出てくるために、生えるためのスペースが十分でない、生える方向が通常と異なるなどの理由で、埋伏(埋まった状態)していたり、傾いてきちんと生えてこなかったりすることがしばしば見られるのも特徴です。
 
親知らずとは/親知らずの生え方
親知らずとは/親知らずの生え方 出典: 朝日新聞社
「歯ブラシが届きにくいので虫歯ができやすいのはもちろんですが、歯が傾いて生えていると、親知らずと歯ぐき、あるいは親知らずと隣の歯の間に隙間ができるため、汚れがたまって歯ぐきの炎症が起きやすい​​という面もあります」

そうすると、親知らずの周囲が不潔になりやすく、歯肉の炎症を起こしやすい状態に。これが「智歯周囲炎(ちししゅういえん)」と呼ばれる病気です。
 
智歯周囲炎とは
智歯周囲炎とは 出典: 朝日新聞社
高橋さんによれば、記者の奥歯はまさにこの智歯周囲炎により、最初に診察した歯科医の言う「大変な状態」になっていたということでした。

コロナ禍で生じた油断

記者の下の親知らずは「水平半埋伏」と呼ばれる生え方で、横向きに伸びていました。

その親知らずが隣の奥歯まで到達し、それらを押し始めてしまったこと、そして、親知らずと歯ぐきの間・親知らずと隣の奥歯の間に歯ブラシが届かなくなり、清掃が十分でなくなったことで、炎症や歯の揺れが進行してしまったと考えられる、ということでした。

記者が最後に歯科医にかかったのは、2019年末。それまで、親知らずが生えてきたことを自覚したことも、歯科医に親知らずについて何か言われたことはありませんでした。多くは20代前半までに生える親知らずですが、記者のように30代で生えてくる人も中にはいることがわかっています。

おそらくは運悪く、コロナ禍で生えてきてしまった記者の親知らず。自覚症状がなく、放置していたおよそ2年の間に、隣の奥歯を「大変な状態」にしてしまったーー。では、記者の奥歯については、もう取り返しがつかないのでしょうか。

高橋さんは「進行しきってしまった智歯周囲炎でなければ、親知らずを抜歯し、並行して自分の歯並びを理解した上で、治療と、自分でも丁寧にブラッシングを継続すれば、歯周炎を改善し、歯を保存することは十分に可能」だとします。

「歯周病の治療としては、歯垢および歯石の除去、ぐらぐらする歯の咬み合わせの調整などを行います。こうした治療が正しく行われれば、プラークが溜まる歯周ポケットは浅くなり、歯周病は改善します。

歯周ポケットがゼロになることは考えにくく、また深くなった歯周ポケットには専門医による治療が必要になりますが、状態をコントロールして、歯周病になった歯を残すことは可能です」

水平半埋伏の親知らずの抜歯は、歯肉を切り開いた上で、顎の骨を削り、歯を割って取り出すなどやや難しい手法になるため、設備の充実した医療機関で行われます。記者も後日、大学病院の口腔外科で親知らずを抜歯することになりました。

並行して、自分でも歯磨きによるプラークコントロールを実施することになりました。高橋さんは歯磨きについて「自分では磨いているつもりなのに磨けていない人が多い」と注意を促します。

「まずは、歯ブラシの毛先を磨くポイントに確実に当てること。そして歯や歯肉を痛めずプラークを除去するため、小さく、軽く、細かく磨いてください。1カ所につき10〜20回ぐらい、1日に最低1回、特に寝る前に、時間(少なくとも5分以上)をかけてゆっくりと丁寧に、隅々の歯垢を取り除いてください」

結局、歯の周囲に炎症が起きている以上、記者のブラッシングは十分ではなく、今後は入念に歯磨きをすることが必要であることを、強く意識することになった今回の経緯。一方で、コロナ禍で生えてきた親知らずが原因の一つであるというのは、意外なことでもありました。

特に今回、奥歯のうち片方は、炎症の進行が予断を許さない状態だとのこと。コロナ禍、歯科受診から足が遠のいている間にこんなことになっていたとは……。振り返ればあっという間の約2年でしたが、実際に自覚症状に乏しい病気であることが、あらためて怖いと感じます。

もし、読者の中に、記者のように「最近、歯医者に行っていないな」という方がいたら。思わぬ口内トラブルを招かないよう、ぜひ、定期的に歯科を受診することをおすすめします。
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