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連載

#11 #ふしぎなたてもの

「まるで墜落した宇宙船」20年以上休館、手がけたのは世界的建築家

東京都江東区有明の『共同溝展示館(通称・K-MUSEUM)』
東京都江東区有明の『共同溝展示館(通称・K-MUSEUM)』 出典: 朝日新聞社
東京ベイエリアにあり、まるで「墜落した宇宙船」のようだと評判の建物。しかも、なんと“20年以上休館中”だと言います。一体、これは何なのでしょうか。建物を管理する東京都港湾局を取材し、竣工当時の専門誌を読むと、臨海副都心開発の歴史を映すデザインであることがわかりました。(withnews編集部・朽木誠一郎)
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「まるで墜落した宇宙船のよう」

りんかい線の国際展示場駅から徒歩で約10分のところにある建物。「モニュメントかな」と思わせる、非常に特徴的な形状をしていますが、周囲は立ち入り禁止の柵で囲まれ、特に何の説明もありません。見かけた人からは「まるで墜落した宇宙船のよう」などと評判になっています。

一体これは何なのか、建物を管理する東京都港湾局に話を聞きました。結論から言うと、これは『共同溝展示館(通称・K-MUSEUM)』という展示館でした。

共同溝展示館は、1997年4月に開館。96年に開催予定だった世界都市博で公開されるはずでしたが、都市博自体が中止に。利用者数の低迷などが理由で、2001年4月1日から、20年以上に渡り無期休館になっています。設計したのは世界的な建築家の渡辺誠さんです。

同展示館は、その名前の通り、臨海副都心の共同溝を紹介する目的で建設されました。共同溝とは、道路の地下に、電気やガス、上下水道などのライフラインをまとめて収容したもの。

臨海副都心の共同溝はやや特殊で、中に「ゴミ収集管」も入っています。地域内にあるビルなどのゴミ置き場と清掃工場とが結ばれ、一定量のゴミがたまると、清掃工場からの遠隔操作で、収集管から掃除機のように吸い取ることができるそうです。

『新建築』(新建築社)1997年1月号への寄稿『海の向うに見える街から』で、渡辺さんはこの大規模な共同溝システムを「土木工学の誇るそのインフラストラクチュア」と評し、「その共同溝の理解を深めてもらうというのが、この建築の役割である」と述べています。

同寄稿によれば、建物北側は波の伝播をシミュレートした三次元曲面となっており、150本・4.5メートルのロッドが設置され、頂部に組み込まれた発光ダイオードと太陽電池により、夜間に青く発光する仕組みでした。
北側から見た共同溝展示館。
北側から見た共同溝展示館。 出典: 朝日新聞社
こうした意匠、そしてそもそも特徴的な外観について、渡辺さんは<街への「視線」。この建築は、その「視線」を喚起する。>とし、街を自分の目で見ることの意義、そしてそのきっかけとしての同展示館の在り方を語っています。

都市博の中止もその一つですが、臨海副都心は現在の賑わいに至るまで、紆余曲折を経験した土地です。バブル期に開発計画が進んだものの、バブル崩壊と共に計画の修正を迫られました。

そんな土地だからこそ、お台場や有明だけでなく、その向こうに覗く東京タワーといった、新旧の街を見渡せる場所としての展示館という役割がある、とのことでした。

今は見ることのできない内部は、アクリルハニカムパネルを使用した、いわゆるSF映画を思い起こさせるもの。トイレブースも展示の一環として人工大理石を一体成形するなど、各所に工夫が凝らされていたそうです。

開館期間に比べ、休館期間が大幅に長くなっている同展示館。臨海副都心もまた新しい街ではなくなり、パレットタウン閉館のような大きな変化を迎える今も、その歴史を映す存在として、有明の地に立っています。

【連載】#ふしぎなたてもの

何の気なしに通り過ぎてしまう風景の中にある #ふしぎなたてもの 。フカボリしてみると、そこには好奇心をくすぐる由縁が隠れていることも。よく見ると「これなんだ?」と感じる建物たちを紹介します。

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