連載
#18 凸凹夫婦のハッタツ日記
ADHDの夫と暮らして変わった金銭感覚 「残金が月収」で気が楽に
お互いの凸凹を補いながら生活している自閉スペクトラム症(ASD)の西出弥加(さやか)さん(33)と注意欠如・多動症(ADHD)の光(ひかる)さん(26)夫妻。夫・光さんが苦手だったお金の管理や妻・弥加さんの節約意識について、弥加さん視点でつづります。(文:西出弥加)
ヒカルくんと出会い、お金のことについて考える機会が増えました。以前はなんとなく支出よりも収入が多ければいいかなと思って生活していましたが、結婚してから自分が何にどのくらい使っているのか細かく把握することができたので、向き合わせてくれたことに感謝しています。
まず、2人でノートに買うものをざっくり書いてみるということでした。
必須なもの、あれば助かるもの、今はなくていいものの三つに分けて書き、目に見えるようにして、その項目に優先度をつけました。
当初は払わないといけない光熱費などを払えず、必要ないものを買ったりしていました。つまりお金の使い方が上手ではありませんでした。悪気があるわけではなく、何が最も必要なのか分からなかっただけでした。
まず必須なものは家賃、光熱費、食費、携帯料金などで、それを足したら月にいくらかかっているのかざっくりと話しました。この支出額が収入より多いと赤字になってしまうと話したとき、月に大体いくらあれば生活していけるのかが見えました。
そして今月稼いだお金は来月入金され、再来月の生活費になると話しました。つまり2ヶ月前に収入がないと今月の生活が苦しくなるということです。
ここを把握したヒカルくんはバーコード決済で支払いをするようになりました。運よくクレジットカードの審査も通ったので、決済方法の選択の幅が増えました。
バーコード決済は月々の携帯料金と同時に生活費も引かれるので、一旦は、現金が必要ありません。今現在、手持ちがなくても1〜2ヶ月後にお金が入っていればいいので、この決済方法のおかげで「月の給与を待っていられない、明日のお金がない」状態から抜け出しました。
また、私が「もう少しだけ稼がないとまずい」と言っただけでヒカルくんは月に何百万円も稼がないといけないと思ってしまい、がむしゃらに働いてダウンしてを繰り返してしまったので、私は働いて得た金額が月収なのではなく「残金が月収だと思ってもらえたらうれしい」と話しました。
100万円稼いで95万円使っていたら月収は5万円、20万円稼いで5万円使っていたら月収は15万円という考えをしてほしいと伝えました。
がむしゃらに働いても浪費してしまったら月収が少ないのと同じだと話してからは、節約してくれることも増えました。
私は銀行も三つに分けています。
生活費が引き落とされる銀行、仕事で使っている銀行、2人の貯金を貯める銀行です。
稼いだら稼いだ分だけ使いがちなヒカルくんに、少しずつ貯金をしてもらうため、私は月にいくらか私の銀行にお金を入れてもらっています。
この入れてもらったお金以外は、ヒカルくんが自分のことに使えるようにしています。
また、あまり細かいことを話しても面倒になってしまうかもしれないので、私は「ざっくりと家賃の4倍の月収があれば絶対に大丈夫」「3倍だとギリギリあぶないかもしれない」と伝えています。
自分が月にいくら稼いで、いくら使っているのか把握するという、当たり前のようなことですが、これらを一度手書きで書いてみることでハッキリと把握でき、行動も変わりました。
毎月きちんと家計簿をつけているわけではありません。ヒカルくんのADHDの性質上、「家計簿をつけること」が大仕事になってしまい、負担になる可能性が高いです。なので半年に一度くらい、「今の状況はどうかな?」と通帳を見て話す時間を設けています。
私もこういうことは簡素にできた方がうれしいので、通帳の内容は全て携帯で閲覧できるようにしています。
家計簿アプリはいつでも、すぐ見ることができるので便利です。仕事を受けてくれた方への支払いも銀行アプリを使って携帯やパソコンから行っています。
しかしアプリは何年も前まで収支履歴を遡れないことがあるので、半年に一度くらい銀行に行き記帳をしています。
携帯の画面で収支を把握できる時代になり、大変助かっています。
私は10年前、いくら使っても稼げばいいのかもと思っていた時期がありましたが、結婚してからかなり節約をするようになりました。
以前ヒカルくんに「貧乏性でごめんね」と言ったら「節約と我慢は違う、サヤカさんは我慢しなくて良いように節約してるからすごい」と返事してくれてうれしかったです。
言葉の使い方だと思いますが、このような考えができて相手に伝えることができるヒカルくんを尊敬しています。
西出弥加(にしで・さやか)
1988年生まれ。「自閉スペクトラム症(ASD)」の当事者。2019年に「注意欠如・多動症(ADHD)」不注意優勢型の光と結婚。会社組織に所属するのは苦手で、フリーランスのグラフィックデザイナー・画家として文具などを作成している。描く絵は動物が多い。寝る時間が定まらないのが悩み。
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