連載
#41 どうぶつ同好会
チンアナゴ、砂の中はどうなってる? 「イメージと違った」驚きの嵐
見えている部分は、3分の1だったのです…!

巣穴から顔を出す姿がかわいく、水族館の来場者を癒やしてくれるチンアナゴ。でも、砂に隠れている部分はどうなっているか、考えたことはありますか? チンアナゴの巣の中を見せる展示が話題になっています。
砂の中の知られざる姿
ツイッターに投稿された1枚の写真。そこには、チンアナゴの知られざる砂の中の姿が写されていました。
長くて、くねくねしていて、その姿はまるでヘビのようです。「驚きました!」「イメージと違った」「めちゃくちゃ長い」などとコメントが寄せられていました。
この展示は、沼津港深海水族館(静岡県沼津市)の「春の特別展示『女性飼育員トリオのお仕事報告書』」のコーナーの一つで、7月10日まで開催されています。
沼津港深海水族館の飼育展示マネージャー・塩崎洋隆さんに話を聞きました。

見えている部分は10cm程度
多種多様な生物がいる中で、自分のすみかを作る生物もたくさんいます。岩の陰や砂の中が多く、なかなか我々が見ることはできません。どうやったら巣の中を見せることができるかに着眼し、飼育員みんなで考えました。
チンアナゴの全長は25〜30cmで、普段お客様が見ている部分は10cm程度です。体の3分の1しか見えていません。体全体が長いと知っていただきたくて、チンアナゴに合わせた奥行きの薄い水槽で展示することにしました。
ーー水槽はオリジナルですか?
特別展のために水槽を作りました。
チンアナゴは細い生物です。今回搬入されたチンアナゴを計ってみると、平均5〜6mmの個体が多く、窮屈にならないように7〜8mmの水槽にしました。
ーーこだわった部分を教えてください。
チンアナゴの全長と巣の形の見せ方です。砂の中にまっすぐ収まっているのではないかというイメージがあると思いますが、実際はくねくねしています。
直線ではなくくねくねしている理由は、巣穴の途中で止まる(砂面から出す部分の調整)ためと考えられます。
また、くねくねさせて粘液で固めることで、素早く出入りができるんです。
チンアナゴは臆病な生物で、水中で上に何かが通ったときには砂の中に素早く隠れます。

排泄するときは…
顔つきが犬の「チン」に似ている事が名前の由来という説があります。
インド洋や太平洋などの珊瑚礁(さんごしょう)域の砂の場所に、何十匹と集団で生息し、食べているのは、海流で流れてくる小さなプランクトンです。
海流が流れてくる方向を向く習性があるため、水族館の水槽内でも同じ方向を向いている姿を見ることがあるかもしれません。
体の下側から3分の1くらいのところに肛門があるので、排泄をするときは20cmくらい体を出します。
ーー今回、ツイッターで話題になったことはご存じでしたか?
はい。我々が見せたかったものを拡散していただけて、展示してよかったなと思います。
チンアナゴは、名前は知られた有名な生物ですが、普段見えない部分を見せたことが衝撃的に感じられたのかもしれませんね。
ぜひ本物を見に来てください。
沼津港深海水族館のHP:http://www.numazu-deepsea.com/
