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連載

#16 凸凹夫婦のハッタツ日記

「きちんと」がわからない…電気を止められてわかったADHDの深刻さ

当時から現在までずっと、郵便物全般はドアノブ付近に貼っているそうです
当時から現在までずっと、郵便物全般はドアノブ付近に貼っているそうです 出典: 画像はいずれも西出夫妻提供

目次

お互いの凸凹を補いながら生活している自閉スペクトラム症(ASD)の弥加(さやか)さん(33)と注意欠如・多動症(ADHD)の西出光(ひかる)さん(26)夫妻。光熱費を滞納していた夫・光さんの過去について、妻・弥加さんの視点でつづります。(文・イラスト:西出弥加)

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小さなミスが大きな失敗に

私はヒカルくんと出会った日からすぐに同居をすることになりました。ヒカルくんは1人で住んでいた家を引き払い、住所も私の家の方に移すことになりました。

私はヒカルくんが一人暮らししていた部屋に通い、何度か掃除をしていたのですが、ある日突然、電気が止まりました。停電かと思ったのですが、滞納しすぎて止められたということでした。ポストを見たら大量の滞納通知が詰まっていてびっくりしました。

「延滞利息の、たった100円が、あっという間に100万円になってしまう可能性があるから、支払いを遅らせてはいけない」と話しました。

それくらいたかが知れている額だと思ったとしても、この小さな出来事は大きな失敗につながってしまいます。

大きな失敗はある日突然起こるのではなく、小さなミスが何百も重なった結果の必然の出来事であると思っています。気にも止めないような小さなミスであっても、それに気づいて軌道修正をすれば大きな失敗が起こる可能性が減ります。

いきなり色んな話をしてもピンとこないと思ったので「まずは、ポストを見て、書類を封筒から出して確認をすることから始めたい」と段取りを話しました。

「届いてる書類はきちんとチェックして」という言い方はしませんでした。「きちんと」の度合いが人それぞれ違うからです。できるだけ修飾語はつけないで、物理的な行動だけを伝えました。

「帰宅時、毎日ポストを開ける動作をしてほしい」と言いました。「そして書類を手に取り、確認して放置せずその場で対応してから、夕飯やお風呂にしよう」と伝えました。ポストに届くものは大体が払込用紙なので確認さえしてもらえれば滞納が減ると感じたので、まずはポストを見ることが大切だと思いました。

支払い用紙からクレジット引き落としに

確認後すぐに対応してほしいと言えど、帰宅して疲れていて対応できないときもあると思うので、そうなると忘れそうで良くないなと思いました。

すぐに対応できないときは、払込用紙を玄関のドアノブ付近に磁石で貼り付けてもらいました。ドアノブ付近ならば毎日必ず目に入るため、払える確率が格段に上がりました。

当時から現在までずっと、郵便物全般はドアノブ付近に貼っている
当時から現在までずっと、郵便物全般はドアノブ付近に貼っている

ただ、バッグに用紙を入れて出発したは良いものの、そこからまた忘れてしまうことがあるので、クレジットカードから引き落とし払いにしました。これなら支払いまでの工程をかなり減らせるので助かりました。

簡単に感じる流れですが、実は当時、銀行引き落としやクレジット払いにする際の段取りがたくさんあり、一筋縄ではいきませんでした。ヒカルくんにとっては段取りが多すぎたのです。

一旦、クレジット払いなどの申し込みは数ヶ月後にしてみよう、まずは手間であっても、どれくらいの金額を使っているか把握できるし払込用紙のままにしようということになりました。結婚して3年、やっとクレジット払いの申し込みができてお互いまずはひと安心です。とにかく工程を減らすことが大切です。

相手に響く伝え方を

結婚当初は、毎日一つずつ指示をして、何度も同じことの繰り返しをしていました。無数に続く授業のような会話が毎晩繰り広げられており、そのおかげなのか、少しずつ感覚をつかめてきて支払いに関してはかなりスムーズに進むようになってきました。

たった100円の滞納料金であっても、放置したらどんどん増えてしまうので、「利子が膨れあがるよ」という表現をしたことがあるのですが、ヒカルくんはピンときていないようでした。そして「利子のせいで給与が減っているよ」という表現の方が心に響くと言われまして、私はなるほどと思いました。

私は未来への不安をほのめかした方が心に響くのですが、ヒカルくんは今現在の損得を伝えられた方が響くそうです。

伝えたいことがあるとき、その人に響く表現で伝えることをしないと意味がないのだなと、大切なことに気づくことができました。

数年経ち、今は滞納がありません。コツは工程を減らすこと、失敗しているところが微々たるものでも把握していること、デメリットも理解することで状況が好転したように感じます。

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西出弥加(にしで・さやか)

1988年生まれ。「自閉スペクトラム症(ASD)」の当事者。2019年に「注意欠如・多動症(ADHD)」不注意優勢型の光と結婚。会社組織に所属するのは苦手で、フリーランスのグラフィックデザイナー・画家として文具などを作成している。描く絵は動物が多い。寝る時間が定まらないのが悩み。
Twitter:https://twitter.com/frenchbeansaya
ブログ:https://ameblo.jp/frenchbeanstar/

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