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仏頂面だった私が「笑顔」を知った理由 生きづらさとの付き合い方
笑顔ってどんなときにしたらいいのか分からない――。子どものころから感情をどう表現したら良いか分からず「生きづらさ」を抱えていたというふくふくさんは、子育て中に発達障害と診断されました。二人の子どもも昔の自分自身と似た生きづらさを抱えています。「同じような境遇の人たちに少しでも力になれれば」とブログでマンガなどで経験を発信するふくふくさんに、発達障害とどのように付き合っていけばいいか、ヒントを聞きました。
<発達障害>
発達障害は、生まれつきの脳の働き方の違いにより、幼児のうちから行動面や情緒面に特徴がある状態。興味や関心に偏りがあったり、コミュニケーションでの自分の気持ちを伝えたり、相手の気持ちを読み取ることが苦手な「自閉症スペクトラム障害」(ASD)や、発達年齢に比べて落ち着きがなかったり注意が持続しにくい「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」、全般的な知的発達には問題がないのに、読む、書く、計算するなど特定の学習のみに困難がある「学習障害(LD)」などがある。文部科学省の調査(2012年)によると、全国の公立小中学校の通常の学級に、発達障害の可能性のある子どもは6.5%在籍している。
(厚労省・文科省HP参照)
勉強についていけず、友人とのコミュニケーションも難しかったというふくふくさん。一方で、母親がドラマが好きだったこともあり、演技の世界には強い関心を持っていました。
そして、「他の人になりきってみたい。違う世界を見てみたい」と、10代で芸能事務所に入り、ドラマや映画にも出演しました。
養成所では、最初は滑舌の練習もうまくいかなかったり、思うような表現ができなかったりして、ぼろぼろと泣いた時もあったそうです。
「当時は気づかなかった発達障害もあって、表現が人一倍苦手でした」
表情のレッスンでは、手を叩くリズムに合わせてころころと表情を変える練習がありました。「今から『赤ちゃんに戻れ』とか『感情を最大限出せ』とか、羞恥心を消すようなレッスンをどんどん受けるうちに、表情をコントロールする方法を自然と鍛えることができました」。
演技の練習をするうちに「今は笑顔でいなければならない時だ」「はきはき喋った方が印象がいいのかな」ということを学んでいったといいます。
「知らず知らずのうちに療育(障害の特性に応じて必要な能力を身につけること)になっていました」と振り返ります。
夫とは、趣味を通じて出会いました。これまでけんかは一度もしたことがありません。
「同じ趣味があるということ、そして夫も自分の考えを押しつけるタイプではなかったのが大きかったかもしれません」。
夫とコミュニケーションを取るとき、「小学生にでも分かるように話して」とあらかじめ伝えておくことで、お互いのストレスを減らしています。
「夫のように、何かを話すときに、説明に前置きがなくそのことを皆が知っている前提で話す人がいますが、私はその前提が分からないことが多い。だから、丁寧に説明してもらえるよう頼みました」。
ふくふくさんは、アルバイト中にマルチタスクがあると、うまく対応できず苦しみました。その経験を踏まえ、子育てでは様々な工夫をしているといいます。
料理は一度に何品も同時に作ることができません。そんな場合は、一品はあらかじめ冷凍しておき、もう一品だけ夕飯時に作れば良いようにしておきます。
他のことに気が散ると、子どもがいることを忘れてしまうことがあります。そのため誰かと話している時も絶対に子どもの洋服をつかんで離さないようにしています。
発達障害と付き合いながら、自分なりに対処方法を見つけてきたふくふくさん。好きなお芝居や、マンガの配信など、熱中できることを見つけることで、心が楽になったといいます。
「大学に行って良い会社に入って、というのが一般的に良いとされています。けれど、私はこれまで人間関係が上手くいかなかったからこそ、自分なりに好きなことを見つけて型にはまらない人生を生きてきました。今は幸せと感じています」
発達障害を抱える子どもたちにも、自らの好きなことを見つけて欲しいといいます。
「私の知人には、高校を中退して、ゲームセンターに入り浸ったことでゲームがうまくなって、攻略雑誌の記事を書くようになった人もいます。一般的な型にはまらなくても、たとえ不登校になったとしても、好きなことや楽しいことを見つけて自分らしく生きていって欲しいです」
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