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#3 #探していますの物語

誕生日も出生時刻も母親と同じ! 計算してみたらすごい確率だった…

万年数学赤点の記者ががんばってみた

青田孝宏さんと青田浩菜さんの第1子は、まさかの誕生日時だった
青田孝宏さんと青田浩菜さんの第1子は、まさかの誕生日時だった

目次

「親も驚くほどミラクルベイビーすぎてバズってます」。茨城県の夫婦の元に、まさかの赤ちゃんが誕生しました。何がミラクルかというと、その確率。母親と同じ誕生日、そしてなんと、生まれた時刻まで同じだったのです。そこで気になったのが、いったい何%の確率でこんなことが起きるか、ということ。ツイッターでの問いかけに記者が答えてみることにしました。

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「ツイートしたから見てみて」

4月5日、茨城県に住む青田孝宏さん(36)さんと青田浩菜さん(25)の元に、元気な女の子が誕生しました。

赤ちゃん誕生前の深夜、時計が午前0時をまわり日付が5日になった頃、陣痛に耐えていた浩菜さんはあることを思いました。

「(私と)同じ誕生日になる」

実は4月5日は浩菜さんの誕生日でした。
コロナ禍のため、立ち会い出産は叶いませんでしたが、午後2時43分、浩菜さんと同じ誕生日の赤ちゃんが生まれました。

夫の孝宏さんは、浩菜さんから無事赤ちゃんが誕生した報告を電話で受けました。「そのときの電話で(浩菜さんが)『生まれましたってツイートしよう』と言っていたのを覚えています」

その後、再び浩菜さんから着信。「ツイートしたから見てみて」

ツイートをみた孝宏さんは驚きました。「見てみたら、生まれた時間まで一緒。『すーごい』と思いましたね」

長かった陣痛はこのため…?

赤ちゃんの出産前、実家に滞在していた浩菜さん。部屋の片付けの最中に、アルバムを発見し、自分が生まれたときの写真を見つけました。
浩菜さんは「私が産まれたときの写真だよ」と孝宏さんにみせるため、その写真をスマホで撮影しておいたそう。

そして、我が子の出産報告をツイッターでするために、赤ちゃんの写真と自分が生まれたときの写真を並べたところ、出生時刻まで同じことに気がつきました。
気付いたとき、浩菜さんは「鳥肌が立った」といいます。

予定日から9日が過ぎてから生まれた赤ちゃんのことは「のんびり屋さんだな」と思っていた浩菜さんでしたが、生まれたのが同じ日時だと気付いてからは「長くてつらかった陣痛は、同じ誕生時間になるために長かったのか…?」とさえ思ったそうです。

父親が気になった「確率」

ミラクルベビーの父親、孝宏さんが気になったのは「確率」でした。
「母子が同じ誕生日・誕生時刻になる確率が知りたい」。さらに、浩菜さんが妊娠したのが孝宏さんの誕生月だったため、「父の誕生月に妊娠し」という条件を乗せた確率を知りたいと考えました。

そこで、浩菜さんのツイートを引用し、こんな投稿をしました。

《親も驚くほどミラクルベイビーすぎてバズってます
そこで気になったのが確率…
父の誕生日月の6月に妊娠して
母と子が同じ誕生日(4月5日)で
同じ時間に産まれる確率を知りたいです。
どなたか確率を専門とする方にこのツイートが届きますように…》

数学に詳しい記者に頼ってみた

高校時代、数学のテストで赤点をとりまくっていた記者ですが、ここで逃げたら一生逃げることになると気持ちをふるいたたせ、孝宏さんの代わりに、確率を計算してくれる専門家を探すことにしました。

まず最初に意見を聞いたのが、朝日新聞記者で、数学者の取材など続ける石倉徹也記者。「こんなツイートがあるのですが…」とメッセージを送ると、瞬時に計算式を送ってくれました。

《単純に、子どもが母と同じ誕生日に生まれる確率は1/365
そのうち、さらに時間(分)が同じ確率は、1/(24×60)
二つを計算すると、0.00019%になるかと思います。》

すごい。早い。さすが。

《(母子の誕生日時が合致する)0.00019%なら、「子ども52.5万人に1人は、母親と全く同じ日時で生まれる」ということを意味すると思います。》

なるほど。昨年の出生数が84万人ほどなので、確率でいえば、昨年は1組か2組の母子が誕生日時が同じだったわけか。

《また、子どもの妊娠月が父の誕生日月と同じというのは、1/12をかければいいと思うので、0.0000158%となるかと思います。》

ただ、石倉記者はこの数字については「妊娠月と誕生日月は、似ているようで全く別の話でもあるのでどこまで意味があるか疑問がある」とのこと。

さらに、石倉記者は、この計算が正しいかどうか確かめるべくサイエンスナビゲーターの桜井進さんを紹介してくれました。

「赤ちゃんが生まれやすい日はイーブンではない」

取材に応じてくださった桜井さんによると、石倉さんがはじき出した確率は「OKです」。
一方で、《(1/365)(1/24)(1/60)=1/525600=0.00000190…》の計算方法は、「誕生日が365日のどの日になる確率も均等、つまり1/365と仮定した場合(時・分についても同様)」だといいます。

万年数学赤点だった私は、ここでちょっとついていけなくなったので、詳しく聞きました。

「実際は、もう少し確率は大きくなると思います。というのも、実際は、赤ちゃんが生まれやすい日はイーブンではないですよね。実際は日時によって生まれる確率は異なるはずで、統計を見れば、365日すべてが均等ではありません」

「ですが、それを追求していくと、複雑になりすぎてしまう。だから今回の場合は、『365日すべて同じ確率』として『ならした』場合を仮定して計算したということです」

桜井さんの丁寧な説明で、私も理解できました。

サイエンスナビゲーターの桜井進さん
サイエンスナビゲーターの桜井進さん

計算結果を聞いた父親は「もっと…」

ただ、ここでも、そこに「父親の誕生月に妊娠」という条件を加えるかどうかが議論になりました。

「パパの誕生日を条件に加えるときには、母子の誕生日時が同じになる確率を出すための式《(1/365)(1/24)(1/60)》に、1/12をかければいいだけです」

「ただ、私はその問題設定がおもしろいかどうかということが気になります。確かに、ママと赤ちゃんの生まれた日時がまったく同じというのはめったにないからおもしろいし、わかりやすい問題設定です。ですが、『そこにパパの誕生月に妊娠』という条件をつけるのは、ちょっとわかりにくい」

というのが、桜井さんのコメントでした。

今回、確率の取材をするきっかけとなった、孝宏さんに計算結果を伝えると、「もっと高い確率かと思っていました」。

さらに「日本の人口が1億3000万人いて、茨城県人と埼玉県人で4月生まれと6月生まれで出会い、結婚、出産、母子の誕生日が同じ、産まれた時間も同じ、これらを考えたらもっと凄い数になりそうですよね?言い出したらキリが無いのでこの辺にしときます」と、探究心が止まらない様子。

確率を出す楽しさを感じているようでした。

意外な解が出る『 誕生日問題』

ちなみに、桜井さんによると誕生日にまつわる、確率を使った問題で、有名な問題があるそうです。

「『 誕生日問題』っていうんですけどね。クラスの中に、誕生日が同じ人たちが 少なくとも一組いる確率を出す問題です」(桜井さん)

単純な私は多分違うだろうなと思いつつ、「(1/クラスの人数)(1/365)で出るんじゃないんですか…?」。
桜井さんは「違います」と一言。残念。ただ、この時点で私、数字を使って考えることがとっても楽しくなってきました。

「『誰と誰が誕生日が同じになる』と考えて組合せを考えるのは大変です。そこで逆に『全員の誕生日がすべて異なる』確率を考えて、その余事象(ある事象に対してそれが起こらない事象)の確率として計算します」

この先の計算はちょっと私の手には負えませんでしたので、結論だけ教えてもらうと、実は23人のクラスで誕生日が一緒になる人がいる確率は約50%。40人いるクラスであれば、約89%にもなるという結論が導き出せるのだそう。

思ったより高い。

生活の中でも自然に目にすることが多い「確率」ですが、桜井さんは「確率という数値が比であること、前提条件(仮定)、どのような場合に確率は足したり、かけたりするのかなど計算の難しさとは異なる高度な理解が求められます」と話します。

とはいえ、今回のように理解を深めていく過程があると、数字への苦手意識が強い私でも数字を使う楽しさを少し感じることができました。

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