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連載

#241 #withyou ~きみとともに~

いじめっ子が車いすユーザーに…今も消えない複雑な気持ち

「障害を持つ前のA君」と「障害を持ったあとのA君」を分けて考えたことは一度もない。

イラスト・しろやぎ秋吾
イラスト・しろやぎ秋吾

目次

小学校時代、同級生が車いすユーザーになり、教室でお手伝いをすることに。20歳になった女性は、今も、その時を思い返すと複雑な気持ちになるといいます。なぜなら、その同級生は、いじめっ子だったから――。「せめて『ごめん』と言ってほしかった」。彼女の思いを、イラストレーターさんのしろやぎ秋吾さんが漫画化。記者も改めて本人に取材しました。

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この企画は、インスタグラムやツイッターを中心に作品を発表している、イラストレーターのしろやぎ秋吾さん(@siroyagishugo)との共同企画です。「10代のときにしんどかったこと、どう乗り越えましたか?」とSNSでエピソードを募り、しろやぎさんがマンガ化したエピソードの中から記者が取材を進めています。
※エピソードは現在も募集中
《マンガ全編はフォトギャラリーで読むことができます》

遊んだこともないのに…持ち物とられ

この春社会人になった20歳の紅葉さん(匿名)は、都内で過ごした小学生時代に、車いすユーザーの同級生の学校生活をサポートした経験があります。その同級生は障害を抱える前、紅葉さんに悪口を言ったり、持ち物をとったりする「いじわるな子」でした。

同級生のA君から紅葉さんへの「いじわる」が始まったのは、小学2年生のとき。休み時間、教室に備え付けてあったボールを紅葉さんに当てたり、筆箱やランドセルに付けていた巾着をとられたりしました。

それまで遊んだこともなかったA君がいじわるをしてくることに、「最初はただ、『なんでこんなことされないといけないんだろう』『関わりたくない』という気持ちだけでした」と紅葉さん。
先生にも訴えましたが、「あなたのことが好きだから、つい意地悪しちゃうのね」「いやがらないであげて」と軽くあしらわれてしまい、「自分に原因があったのかも」と思うように。ただ、いじわるをされる理由はまったく思い浮かばず、悶々とし続けていました。

親に相談したこともありましたが「もっと逃げるなり他の人に相談するなりしてみたら」との返事。「大人がそう言うのであれば、言うことを聞かないといけない」と気持ちを押し殺し、それ以降、そのことについて大人に相談することはなくなりました。

イラスト・しろやぎ秋吾
イラスト・しろやぎ秋吾

夏休み明け、教室から消えた彼

状況が一変したのは夏休みが明けた日のことでした。いつもは教室の後ろの方の席にいるはずの君の姿が見えません。

夏休みを延長して旅行に行っていた同級生が他にいたので、紅葉さんは特に気にすることはなく「今日はやられなくてよかった」と思う程度でした。

しかしA君は1週間経っても姿を現すことはありませんでした。その間、先生がA君について触れることはありませんでしたが、数日後、A君の席がなくなっていることに気がつきました。

そして、名簿からもA君の名前がなくなっていました。

「まさか病気をしていたとは思わず、当時は転校したんだろうと思っていました」という紅葉さん。「『もうやられることはないんだ』と安心したことを覚えています」

イラスト・しろやぎ秋吾
イラスト・しろやぎ秋吾

車いすで戻ってきた彼の手伝い役に

A君の姿が教室からなくなってから3年。紅葉さんが5年生になってからしばらくした頃、車いすに乗ったA君が教室に戻ってきました。

「3、4年生の頃も、A君と仲が良かった男の子たちがおうちに遊びに行ったという話をしたりしているのを聞いていたので、同じ町にいることはわかっていました。ただ、病気をしたという話は聞いていなくて…」

A君が車いすに乗ることになった詳しい経緯は紅葉さんにはわかりません。ただ、A君は言葉を発することがほとんどできなくなっていて、文字を書いたパネルを使って意思の疎通をするようになっていました。

「教室にA君が入ってきたとき、一瞬誰かわからなかったのですが、顔を見たら『あの子だ』と気付きました」
その後、先生からA君は病気によって麻痺が残ったという説明を聞いて「すごく驚いた」といいます。「大変だなと思ったし、普通に心配もしました」

当時、教室の後方の端の席だった紅葉さんは、車いすのA君が近くに座りやすいという理由から、食事や教室移動の際に補助が必要になったA君の手伝いを先生から頼まれました。

「先生から『お願いね』と言われてしまい、嫌だとは言えませんでした」という紅葉さん。その後「ずるずると」手伝いを続けることになりましたが、「1年生のときにやられたことがいやだったという気持ちも、ずっと残ったままでした」。

イラスト・しろやぎ秋吾
イラスト・しろやぎ秋吾

「なんで私にいじわるをした子のために…」

教室移動があるときに教科書を持って行ったり、配布物をまとめてカバンに入れたり、給食の配膳時にA君の分をとりに行ったり。

学期ごとに席替えはありましたが、先生の「手伝ってくれてすごく助かっているから」という理由で、紅葉さんだけは席替えの対象になりませんでした。

私だって教室移動のときに友だちとしゃべりたいし、給食だって自分のペースで食べたい。休み時間だってたくさん遊びたい。なんで私だけ――。

そんな思いを抱えていましたが、「途中でやめたら迷惑がかかるし、先生が大変」と思うと、放り出すことはできませんでした。

一度だけ、「なんで私にいじわるをしてきた子のためにこんなにいろんなことをやらなきゃいけないんだろう」と親に不満を伝えたときは、「嫌だったら先生にいやだって伝えて、やめてもいいんだからね」と気持ちを受け止めてくれました。

しかし、紅葉さんが先生に思いを伝えることはありませんでした。

「当時、クラス内が荒れた状態だったこともあり、私までワガママを言ってしまったらこのクラスはめちゃくちゃになり、先生がもっと大変になると思うと、伝えることができませんでした」

結局、6年生になるまでの間、紅葉さんはA君の手伝いを続けました。


「私がA君の手伝いをしたことは、先生にとって助かることだったとは思うけど、子どもだった私が自分の時間を犠牲にしてそれをしなければいけない理由はなかったはずです」と紅葉さんは振り返ります。
そして、1年生のときにされた「いじわる」についても、「障害があるからという理由で、いじめられたことを無しにすることはできません」。

イラスト・しろやぎ秋吾
イラスト・しろやぎ秋吾

いまでも知りたい「彼の気持ち」

あれから10年。いまでも紅葉さんは気持ちを整理できずにいます。

紅葉さんは、「障害を持つ前のA君」と「障害を持ったあとのA君」を分けて考えたことは一度もないといい、「いまでも1年生の頃のA君の気持ちが知りたい」といいます。

「A君は私がいやがっていたことをわかってやっていたんだろうか」
「やれられた理由はなんだったんだろう」
「A君は、私にしてしまったことを後悔しているんだろうか」

短大で「どんな子どもの支援もできるようになりたい」と障害児支援を学び、この春から社会人になる紅葉さん。もしA君ともう一度話すことができ、彼からの謝罪があれば、A君の学校生活を手伝ったときから感じ続けている「モヤモヤ」にも「踏ん切りがつくのだろうと思います」。

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