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白血病の少年が父と祖父の身を案じる…ユニセフ職員が見たウクライナ
もっと届けたい、医療品以外のもの
病院で出会ったのは9歳の白血病の少年だった。父親と祖父を残して泣く泣く避難してきたと話した。ただ、その病院でも薬が不足しており、十分な治療が受けられない。母親、祖母そして弟と隣国に避難していった。少年は言った。「父親と祖父は残してきた飼い猫に守ってくれるように頼んできたから大丈夫」。国連児童基金(ユニセフ)のジョー・イングリッシュ広報官(34)が見たのは、そんな言葉で言い尽くせない過酷な光景だった。(構成 朝日新聞記者・宮野拓也)
旅立つ日に立ち会って手を振った。彼はいま無事なのか……。そんな話がウクライナでは何百万と生まれている。
ロシアの侵攻直後からポーランドとの国境で活動を開始した。働くのは、ユニセフが設けた「ブルー・ドット」と呼ばれる難民支援の拠点だ。
訪れた人に渡すのは、食料や水だけじゃない。どこを目指せばいいのかといった受け入れ国の情報も提供している。さらに、家族とはぐれてしまった子どもを緊急保護することも。
3月中旬から下旬までは10日ほど、ウクライナのリビウに入って活動した。当時はユニセフの職員が130人ほど現地で活動をしていた。
ユニセフでは10年ほど働いている。シリアやイエメンで働いたことがあるけど、ウクライナは初めて。もともといたウクライナの担当者では人手が足りない。次々と応援に入ったうちの1人になった。
ユニセフとして、これまでに800トンを超える物資をウクライナ国内に届けている。
しかし、マリウポリなどアクセスできなかったり、安全が確保できなかったりする地域は少なくない。そういうところこそ、物資が不足して支援が必要なはずなのに……。
支援物資の多くは医薬品や医療物資で、病院などに直接届けていた。目の前の危機をまずは乗り越えなければならない。同時に大事に思っていたのが、子どもに希望をもってもらうこと。だから、おもちゃや、勉強道具の支援にも目を配る。
ウクライナに限らず、どこの国の子どもでも、戦場にいるべきではないし平和に暮らすべきなのは言うまでもない。今も世界では、たくさんの子ども支援を必要としている。
ただ、ロシアのウクライナ侵攻後の1カ月は、危機拡大のスピードがとても速いと感じている。
今回の危機は、これから1カ月、2カ月でなんとかなるといったものではない。子どもたちが生活を取り戻すまで何年にも渡って続く挑戦になるだろう。
いったんウクライナを離れて米国に戻る。でも、またすぐにウクライナに戻るつもりだ。
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