連載
#131 ○○の世論
強まる「生活負担」約50年前の日本でも起きていた…世論調査を分析
ガソリン・食費……歴代内閣に影響も
コロナ禍による経済活動の縮小の影響で、職を失ったり、賃金が下がったりする人も出ています。そんな中、食料品や光熱費などの値上がりが相次いでいます。朝日新聞の2022年2月の全国定例調査では、68%が「生活への負担を感じる」と回答しました。資源大国であるロシアのウクライナ侵攻とそれに伴う各国の制裁により、この数字がさらに高まる可能性があります。海外情勢に揺さぶられる生活負担へのストレス。今から約50年前の日本でも起きていました。(朝日新聞記者・藤方聡)
22年2月の全国定例世論調査(電話)で、「あなたは、食料品や光熱費、ガソリン代などの値段が上がったことで、生活への負担を感じますか」と尋ねました。「感じる」は男女とも68%。
「それほどでもない」は男性31%、女性もほぼ同じの30%で、値上げの影響は、男女の別なくみられます。
次に年齢別でみてみます。
18~29歳の若い世代では、58%が「感じる」、42%が「それほどでもない」でした。「感じる」は、ほかの年齢と比べ、最も低くなっています。
一方、30代から60代までは、7割台で「感じる」と回答しています。最も高いのは、50代で、75%が「感じる」と答えています。
男女別の年齢でみてみると、「感じる」は男性では40代が最も高く、75%。女性は50代が最も高く、76%でした。
地域別では、東北の80%が「生活への負担を感じる」と回答。「それほどでもない」は19%でした。北海道でも8割台が「感じる」と答えています。
一方、関東、中国・四国では「感じる」は63%と低めに出ています。東京では、「感じる」57%、「それほどでもない」は42%となっています。
内閣支持、不支持別でも違いがみられます。
岸田内閣の支持層では、61%が「感じる」と回答、「それほどでもない」は37%でした。
内閣不支持層でみてみると、74%が「感じる」、25%が「それほどでもない」と答えています。食料品や光熱費などの値上がりが内閣支持率に一定の影響を与えていることがうかがえます。無党派層では「感じる」69%、「それほどでもない」は28%でした。
2月の調査では、「岸田首相の経済政策に期待できますか」と尋ねました。
「期待できる」32%、「期待できない」55%でした。
「期待できる」と回答した63%が「食料品や光熱費、ガソリン代などの値段が上がったことで、生活への負担を感じる」と回答。「それほどでもない」は36%でした。
一方、「期待できない」と回答した73%が「生活への負担を感じる」。「それほどでもない」は27%でした。
生活への負担は、今から約50年前の日本でも急上昇していました。
1973年にイスラエルと、エジプトやシリアなどアラブ諸国との間で「第四次中東戦争」が発生。中東の産油国が原油価格を引き上げ、いわゆる「オイルショック」が起きました。田中角栄内閣の時です。
同年11月の全国世論調査(面接)で、「あなたの暮らし向きは、これからさき、楽になると思いますか。変わらないと思いますか。それとも、苦しくなると思いますか」と尋ねています。「苦しくなる」が最も多く、62%。「変わらない」27%が続き、「楽になる」は4%でした。
「苦しくなる」と答えた人に理由を尋ねると、「物価高」が最も多く27%、「物価と収入のアンバランス」14%が続いています。「暮らし向きに一番こたえているのは何でしょうか」との問いには、「食料品」が最も高く37%となっています。
内閣支持率はどうでしょう。
この時の田中内閣の支持率は内閣が発足してから最低の22%、不支持率は最高の60%にのぼりました。その他の要因もあったでしょうが、物価高が内閣の支持・不支持に一定の影響を及ぼした可能性があります。
有事には様々なことが起きます。資源大国であるロシアのウクライナ侵攻により、原材料や原油などは一層の価格上昇が懸念されています。
色々な分野でインフレ圧力も強まることが予想され、物価の値上がりによる有権者の負担感が政治への不満に転ずれば、岸田内閣の支持・不支持率や今夏の参院選にも影響するかもしれません。
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