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#124 #父親のモヤモヤ

「娘の下着どう選んだら」周囲に言えず、SNSに助け求めた父子家庭

思春期の娘の変化について周囲に相談できず、SNSに助けを求めたシングルファーザーの男性(画像はイメージです)
思春期の娘の変化について周囲に相談できず、SNSに助けを求めたシングルファーザーの男性(画像はイメージです) 出典: Getty Images

目次

#父親のモヤモヤ
※クリックすると特集ページ(朝日新聞デジタル)に移ります。

娘を育てるシングルファーザーにとって、悩みの一つになるのが、思春期の変化についてです。東海地区に住む男性(49)は、生理の問題などを周囲に相談できず、SNSに助けを求めました。身近に同じ悩みを抱える人が少なく、孤立しがちな父子家庭の父親。支援団体は「シングルファーザーに寄り添うことが必要だ」と訴えます。

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元妻から引き取った娘

「娘の下着のサイズ、どう選んだらいいですか?」
「男親、1人なので苦戦しています」

中学生の娘を育てる男性は、悩みがあるとTwitterに吐露します。「リアルの場では相談できる人がいないので」

別れた元妻から娘を引き取って2年半、男性にとってSNSが子育ての「つながりの場」です。

2人で暮らすようになってから、男性の生活は娘が中心となりました。

新型コロナウイルスの影響で2020年春にあった一斉休校では、聴覚に障害がある娘がまだ小学生だったため、家で一人にしておくことができず、会社に休みを相談。すると、有給休暇ではなく欠勤の扱いとなり、収入が得られないと分かりました。

「それなら……」。男性は退職金や失業手当を使って生活をしようと退職を決断。新卒から27年勤めた会社でしたが、「迷いはありませんでした」と振り返ります。1年後に再就職した際も、定時で退社できるかや、休みをしっかり取れるかなどを基準に会社を選びました。

元妻から引き取った娘(左)と暮らす男性=提供
元妻から引き取った娘(左)と暮らす男性=提供

リアルでは聞けない悩み

離婚した5年前までは、男性も子育てにも関わっていました。なので、娘の障害や性格については把握しており、基本的には2人の生活で悩むことはありませんでした。

勝手が分からなかったのが、思春期の体の変化についてです。引き取った際に使っていた娘の下着が古くなり、新たに買う必要が出てきたとき、頭を抱えたといいます。

「娘に『今のままのサイズで合ってる?』と聞いたら、『分からない』と返ってきました。下着は別れた妻が買っていたようで、『じゃあ、ちゃんとしたのを買わないとね』と娘に言ったものの、どうしたらいいか困りました」

「同性であれば、自分の経験をもとに判断できたかもしれませんが、異性の子供です。どういう下着を選んだらいいか、分からないことだらけでした」

元妻とは関係を絶っていて、学校の保護者たちとも接点はありません。センシティブな話題なので周りの友人たちにも、相談できませんでした。

募ったモヤモヤをはきだすように、男性は下着の選び方を尋ねるツイートをしました。娘を引き取ってから発信を始めたTwitterは、日頃の子育てで感じたことなどをつづり、ほかのひとり親たちと交流も生まれていましたが、下着に関する投稿は初めてでした。

「どんな反応が来るのか不安もありました」と振り返る男性。しかしツイートには、シングルマザーを始め女性のフォロワーからアドバイスが寄せられました。「店員さんに聞いて、しっかり採寸した方がいいですよ」といったコメントや、「こういう下着を買われては」と画像やリンクを送ってくれる人もいました。

娘が生理を迎えたときも、Twitterを使って相談をしました。そのときも、生理用品の使い方や「こういうアプリを使って管理された方がいいですよ」と日頃の向き合い方を教えてくれる声が集まりました。

「リアルなつながりでは、こうしたプライベートのことまでなかなかさらけ出せません」と語る男性。Twitterは匿名で使っているということもあり、より本音が言えるといいます。

「『こういう状況です』とつぶやくと、境遇が近い人たちに助けてもらえる。本当に救われました」

画像はイメージです
画像はイメージです 出典: Getty Images

ひとり親の交流グループも

男性は現在、Twitter以外にもひとり親たちとつながる場所を持っています。それが、ひとり親交流サークル「エスクル」です。

離別や死別などした全国のシングルマザー、シングルファーザーたち約9100人が登録し、お役立ち情報の共有や悩み相談などを受け付けています。そのうち300人は、LINEグループで日常的に交流するメンバー(有料)です。

LINEグループは住んでいる場所や子どもの状況などで分かれ、男性も地域のグループに参加しています。匿名で加わることもでき、男性のような異性の子どもの悩みから、日々の子育て、コロナ禍になってからはどういった支援が受けられるかなど、幅広い話題での相談や情報共有がされています。

男性はネット上でのつながりを、リアルなつながりに変える試みにも取り組んでいます。月に1度、男性が音頭を取ってバーベキューをしたり、レクリエーションをしたり。毎回10組ほどの親子が参加し、子どもたちを遊ばせながら、親たちの交流を深める機会になっています。

地元や学校・職場などでは、ひとり親の悩みを打ち明けられず、孤立していった男性。オンライン上では、同じ境遇の人たちとネットワークをつくることができ、そこからリアルな関係も生まれてきました。

「気兼ねなく話せるネットは必要ですが、孤立を防ぐには会って話せる関係も大事です」と語る男性は、「できたつながりを大事にしつつ、必要があれば、昔の私のように孤立している人たちにも手を差し伸べていきたい」と力を込めます。男性のもとには、活動を知った人から子ども服や筆記用具などの物品や食品などの支援が寄せられており、その「お渡し会」を男性は計画しています。

男性が定期的に開いているひとり親の交流会。バーベキューやレクリエーションに毎回10組ほどの親子が参加するという=男性提供
男性が定期的に開いているひとり親の交流会。バーベキューやレクリエーションに毎回10組ほどの親子が参加するという=男性提供

社会が関心を

「そもそもひとり親が少ないのに、シングルファーザーはそのなかでもマイノリティー。娘を育てるとなると、さらに少数派になります」

こう話すのは、エスクルを運営する一般社団法人「ひとり親支援協会」の今井智洋・代表理事です。厚生労働省の2016年度の調査によると、母子世帯が約123万世帯に対し、父子世帯は約19万世帯。ひとり親支援協会が父子家庭233世帯から回答を得た2020年のアンケートでは、「絶対数が少ないため、身近に同じ父子家庭がいない」「娘の思春期の対応など、シングルファザーならではの悩みを相談できない」といった声が寄せられました。

川崎市は2017年、市内のシングルファザーからの聞き取り調査をもとにした冊子「みんなどうしてる?」を発行しました。市民からシングルファーザーに関するグループや情報への問い合わせがあり、当事者たちが必要としている情報を市としてまとめようと、専門家の監修も入れてつくりました。

育児や家事、子どもと元妻の関係など多岐にわたって実体験や考えを紹介するなかで、娘の生理問題も取り上げています。

担当者によると、シングルファーザーへのインタビューでも娘の生理に関する悩みは多かったそうです。「相談相手をどうするかや、学校との関係。娘とのやり取りについて、色々な声を紹介しています。末尾には、市内の相談窓口やメールマガジンの案内も載せています」。冊子は市男女共同参画センターのホームページでも公開しています。

ただ、こうした取り組みは「圧倒的に少ない」と今井さんは指摘します。金銭的には生活できていても、母親側に子育てをまかせていた場合などはネットワークや情報が少なくて孤立する場合があり、精神的なサポートや適切な情報が必要だといいます。

「ひとり親になるのは、誰にでも起こりうることです。社会が関心をもって、シングルファーザーの支援を充実していってほしいです」

父親のリアルな声、お寄せください

記事の感想や体験談を募ります。いずれも連絡先を明記のうえ、メール(dkh@asahi.com)で、朝日新聞「父親のモヤモヤ」係へお寄せください。
 

共働き世帯が増え、家事や育児を分かち合うようになり、「父親」もまた、モヤモヤすることがあります。それらを語り、変えようとすることは、誰にとっても生きやすい社会づくりにつながると思い、この企画は始まりました。あなたのモヤモヤ、聞かせてください。
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