連載
#128 ○○の世論
岸田内閣の「不支持率」なぜ上がった? しびれを切らした人たち
「新しい資本主義」まだですか…
2月19~20日に実施した朝日新聞の世論調査(電話)では、岸田文雄内閣の支持率は45%(1月調査では49%)と低下する一方で、不支持率は30%(同21%)に跳ね上がり、初めて3割台となりました。昨年秋の衆院選で大勝して以来、野党の足並みがそろわないことにも助けられ、安泰なはずの政権にとって、気になるところでしょう。この変化がなぜ生じたのか、深掘りしてみました。(朝日新聞記者・君島浩)
岸田内閣が発足した昨年10月から今年1月までに実施した計5回の世論調査を振り返ると、同内閣は「4割・2割内閣」と言えます。
内閣支持率は41~49%と4割台を、不支持率は20~27%と2割台を維持していたからです。
内閣発足後やはり5回の世論調査で支持率が65%から33%まで半減した菅義偉内閣に比べると、変動が少なく、「中空安定飛行」型とも言えます。
支持・不支持を明確にしない(できない?)「その他・答えない」に分類される人が28%~35%と3割前後を占めていたのも、異例なことでした。
しかし、2月の調査では、支持率こそ4割台半ばでしたが、不支持率は3割に達し、初めて「その他・答えない」を上回りました。
やや乱暴な言葉を使えば、「好きか嫌いか分からない」という人より「嫌い!」という人の方が多くなった、ということです。
朝日新聞の世論調査では、内閣支持・不支持の質問の後、その理由について4択で尋ねています。
2月調査での岸田内閣の支持理由をみると、「他よりよさそう」が52%と最多です。微増傾向にありましたが、1月の57%からは減りました。5割前後を占めるのは通例で、例えば前任の菅内閣の平均値はちょうど50%でした。
これに対し、大きな変化が見られるのは、不支持理由です。
内閣発足直後14%だった「政策の面」がうなぎ登りに増え、2月調査では、40%に達しました。ちなみに菅内閣では「政策の面」は発足直後は27%でしたが、4カ月後の5回目の調査では60%に達しました。その後、退陣表明までの半年間の平均は55%と高水準でした。
岸田内閣の支持率を低下させ、不支持率を押し上げたのは、有権者の政策面への不満だったことが読み取れます。
この2年の最大の政策課題といえば、新型コロナウイルスへの対応です。
朝日新聞の世論調査では、ほぼ毎回、政府のコロナ対応の評価を尋ねており、これが内閣支持率・不支持率に連動していることは半ば定説になっています。
2月調査では「評価する」は45%(1月調査では45%)と横ばいだったものの、「評価しない」は44%(同38%)と上昇しました。岸田内閣では「評価する」が「評価しない」を常に上回っていますが、今回初めて拮抗(きっこう)しました。
1、2月の調査では、ともに首相の指導力についても聞いています。コロナ対策で岸田首相が指導力を「発揮している」と答えた人は、1月の37%から2月は34%とやや減り、「発揮していない」は1月の41%から、2月は53%に急増しました。
昨年秋まで視野を戻すと、大きな変化が生じたと言える政策課題は、経済です。10月上旬の調査では、首相の経済政策に「期待できる」は42%で、「期待できない」の28%を上回っていました。ただし、様子見の人も含まれるとみられる「その他・答えない」も30%と大きな塊となっていました。
10月中旬、11月の調査では、「その他・答えない」は減りましたが、期待「できる」「できない」はほぼ並び、有権者全体としては「どちらとも判断できない」という状況が続きました。しかし、2月調査では「期待できない」が55%と半数を超え、「期待できる」の32%を引き離しました。
経済政策への期待感の高まりが内閣支持率を押し上げたとみられるのは、「アベノミクス」を掲げた第2次安倍内閣です。発足直後の2012年12月、翌年1月の調査では、ともに「期待できる」が49%で、「期待できない」の32%を上回っていました。3月になると「期待できる」は63%と増え、「期待できない」の21%の3倍に膨らみました。発足当初59%だった内閣支持率は65%に上昇し、7年8カ月に及ぶ最長政権の発射台となりました。
岸田首相はアベノミクスに代わる「新しい資本主義」を打ち上げているものの、具体像はいまだに見えません。
調査結果は有権者がしびれを切らしたあらわれとも言えます。
2月の調査では、食料品や光熱費、ガソリン代などの値段が上がったことで、生活への負担を「感じる」と答えた人は68%にのぼっており、その人たちの内閣支持率は41%、不支持率は33%となっています。
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