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お金と仕事

サラリーマンをナメんなよ!「社畜」という卑下への違和感

ベンチャー社長だからわかる会社員のメリット

営業マン向け強化合宿訓練の様子。神奈川県湯河原町の湯河原観光会館で、太いゴムホースをテーブルにたたきつけ「やる気!やる気!」と絶叫する=1969年6月
営業マン向け強化合宿訓練の様子。神奈川県湯河原町の湯河原観光会館で、太いゴムホースをテーブルにたたきつけ「やる気!やる気!」と絶叫する=1969年6月 出典: 朝日新聞

目次

新卒で大手商社に入り、広告会社を経て起業した加藤公一レオさんは、サラリーマンを「社畜」と卑下する風潮に違和感があるそうです。ネットのインフルエンサーが声高に発信するサラリーマンディスり。でも、起業していきなり好きなことを仕事にできるのは一部の人だけだと強調します。給料をもらって仕事の勉強ができて、会社の看板で大きなプロジェクトにまで関われる。そして、組織に守られながら個人としてのブランドを育てることができるサラリーマンの“計り知れないメリット”について、つづってもらいました。

「カッコいい年のとり方」を考えたら、見えにくいモノが見えてきた(PR)
加藤公一レオ(かとう・こういちれお) 1975年、ブラジル・サンパウロ生まれ。アメリカで育ち、西南学院大学を卒業後、三菱商事入社。大手広告会社のアサツーディ・ケイ(ADK)などを経て、2010年に売れるネット広告社を設立
加藤公一レオ(かとう・こういちれお) 1975年、ブラジル・サンパウロ生まれ。アメリカで育ち、西南学院大学を卒業後、三菱商事入社。大手広告会社のアサツーディ・ケイ(ADK)などを経て、2010年に売れるネット広告社を設立

サラリーマンはもっと誇りをもつべきだ

最近、「サラリーマンよりも、独立・起業している人が“イケてる”」というような風潮がある。起業家やインフルエンサーなどがサラリーマンをディスり、サラリーマンも自身を「社畜」と卑下するなど、サラリーマンを軽く見るような空気が蔓延している……。

私は三菱商事と大手広告会社のADKでのサラリーマン生活を経て、2010年に通販(D2C)のネット広告を支援する『売れるネット広告社』を創業した。経営者とサラリーマンの両方の経験があり、サラリーマンのメリットとデメリットを理解しているからこそ言いたい。

ズバリ、会社の資本や看板をいかせるサラリーマンは、個人ではできないようなスケールの大きな仕事ができる! サラリーマンはもっと自分の働き方に誇りをもつべきだし、サラリーマンならではのメリットに目を向け、“主体的”かつ“戦略的”にキャリアを築いていくべきだ。

「今日の仕事は楽しみですか」と書かれた、アルファドライブ制作の新聞広告。同じ文言入りの広告が、JR品川駅にも掲示された=アルファドライブのプレスリリースから
「今日の仕事は楽しみですか」と書かれた、アルファドライブ制作の新聞広告。同じ文言入りの広告が、JR品川駅にも掲示された=アルファドライブのプレスリリースから

2021年10月、品川駅のコンコースに設置された『今日の仕事は楽しみですか。』という広告に批判が殺到し、1日で設置終了になったという騒動があった。この広告はSNSでも大炎上し、無数のビジネスパーソンが行き交う品川駅のコンコースを「社畜回廊」とからかう声も挙がっていたという。

近年、「好きなことで生きていこう」といった聞こえのいいキレイゴトの言葉が多用されるようになり「脱社畜」という言葉まで登場した。たまに私のFacebookの友だちでも、自虐的ネタなのだろうが「社畜ですからw」みたいなコメントを書いている人がいる。

「サラリーマンなんてただの社畜だ! さっさと辞めろ」などと、サラリーマンという働き方をディスる起業家やYouTuber、インフルエンサーも後を絶たない。でも、そういう起業家やYouTuber、インフルエンサーは、サラリーマンとして十分な役割が果たせなかっただけなのかもしれない。

サラリーマンのメリットとデメリットをちゃんと理解せず、サラリーマンという身分に対してネガティブな感情を抱いてしまっていないだろうか。

大企業サラリーマンを経験した経営者という立場だからこそ、私は言いたい。下請け的な“中途半端”な会社の社長やフリーランスよりも、サラリーマンの方が会社という舞台を借りて大きな仕組み作りに関われる可能性が高いのだ。

現在は経営者という立場にあるが、私は決して「サラリーマンより社長のほうがエライ」とは思っていない。「サラリーマン」「社長」「フリーランス」といった“肩書”よりも、「どんな夢やビジョンや信念を持って、どう行動しているか」のほうが100倍大事だと考えている。

1974年、朝の通勤ラッシュの様子=大阪市
1974年、朝の通勤ラッシュの様子=大阪市 出典: 朝日新聞

個人では無理なスケールの仕事ができる

実際のところサラリーマンという働き方には計り知れないメリットがある。

私は新卒で当時就職人気ランキング1位だった三菱商事に入社し、大手広告会社のADKを経て2010年に『売れるネット広告社』を起業した。実際に十数年間のサラリーマン生活を経験しているからこそ、サラリーマンのメリットもデメリットもフェアに理解しているつもりだ。

サラリーマンの最大のメリットのひとつが、会社の資本や看板、信頼、コネクションなどを利用して、個人ではとてもできないような大きなスケールの仕事がしやすいということ。

私自身、サラリーマン時代は20代の若さでTV・新聞・チラシ・ネット広告を絡めた、1社で年間40億円規模のキャンペーンを手がけることができた。

特に大手企業や有名企業に勤めている人は、大学を卒業して数年しか経っていない“ひよっこ”であっても、会社の名前を出すとさまざまな人が会ってくれる。これは、会社の看板のない個人ではほとんど不可能に近い。

確かに、会社という“組織”に所属している限り、色々なしがらみや制限があるため、自分のやりたいことが100%好きなようにできるわけではない。会社という“組織”では、立場が低ければ低いほど思い通りにいかないことが多いので、特に若い人は「自分のやりたいことができない」という不満を持ってしまうこともあるだろう。

とはいえ、今すぐ独立・起業をすれば自分のやりたいことが自由にできると考えるのは大間違いである。

ごく一部の天才を除いて、大学を出たばかりの人が「自分の好きなことをやりたい」と独立・起業したからといって、いったい何ができるだろうか。

当然、独立・起業するということは、売り上げや利益といった事業の結果に対し、全面的に責任を負わなければならなくなる。その結果、「やりたいことを自由にできる環境」を求めて独立・起業したはずなのに、むしろ手元の資金が尽きることを恐れて思いきったチャレンジができなかったり、横柄なクライアントにへこへこしながら働く羽目になったりする可能性が高い……。

独立や起業を一概に否定するわけではないが、「やりたいことを自由にできる環境」を手に入れるためには、キレイゴトなしに相応の実力や実績、コネクションなどが必要になってくる。

現実問題として、会社の資本や看板抜きで個人ができることは非常に限られている。世の中の99%以上の人にとっては、新卒でいきなり独立や起業をするよりも、大企業でサラリーマンをやったほうがはるかに大きな仕事ができる可能性が高いのである。

合同会社説明会の会場へ向かう学生たち=2021年3月1日午前10時56分、横浜市西区、杉本康弘撮影
合同会社説明会の会場へ向かう学生たち=2021年3月1日午前10時56分、横浜市西区、杉本康弘撮影 出典: 朝日新聞

失敗したとしても簡単にクビにならない

しかも、サラリーマンには「お金をもらいながら勉強できる」というメリットもある。

独立や起業をした瞬間、勉強は「お金を払ってするもの」に変わるし、まったく実績のない仕事はほとんど任せてもらえなくなる。ところが、サラリーマンはお金(給料)をもらいながら、知らないことを学んだり、やったことのない仕事に挑戦して新しい経験を積んだりすることができる。

サラリーマンはそれが当たり前だと思っているかもしれないが、勉強したり新しい経験を積んだりしながらお金がもらえるのは、サラリーマンの“特権”だと言える。

たとえ現時点では自分のやりたいことが30%とか50%ぐらいしかできなかったとしても、会社という“組織”にいるからこそできることが必ずあるはずだ。

今、サラリーマンをやっている人は、「この瞬間、自分のやりたいことが100%できているか」だけにとらわれるのではなく、サラリーマンだからこそできるスケールの大きな仕事を実績として、個人の“ブランド”を育てていくという中長期的な視点をもってほしい。

「お金をもらいながら勉強や新しい経験ができる」と思えば、「異動や配置換えで未経験の仕事をやらされる」とか「セミナーに参加させられる」といった“受け身”の考え方から、「自分の今後のキャリアを切り開くための経験ができている」という“主体的”な考え方に変わるだろう。

アメリカに比べると、日本の会社では、サラリーマンが簡単にクビになることはない。業績が悪ければボーナスは下がるかもしれないが、ひとつのプロジェクトに失敗しただけでクビになったり、給与が大幅カットされたりすることもほとんどない。

このように、視点を変えると、サラリーマンというのは手持ちの資金を心配することもなく、失敗したときに個人に降りかかるリスクを最小限に抑えながらおもいっきり仕事に打ち込める、ある意味非常に恵まれた身分なのである。

帰宅途中にちょっと一杯。のれんに首を突っ込むサラリーマンたち=1979年9月
帰宅途中にちょっと一杯。のれんに首を突っ込むサラリーマンたち=1979年9月 出典: 朝日新聞

自分のことを「社畜」と言ってしまう理由

断言しよう。やたらとサラリーマンをディスって「起業家やフリーランスがイケてる」というポジショントークをしたがる人がいるが、「独立・起業している人は自動的にイケてる」「サラリーマンは自動的にイケてない」ということはない。大事なのは立場や肩書ではなく、その人の仕事に対するビジョンやマインド、姿勢である。

大きな夢や希望をもって、圧倒的な実力をつけようと努力し、「会社という舞台を借りて成功しよう」と必死に頑張っている人は、たとえ会社勤めのサラリーマンでも「社畜」ではなく、「スーパービジネスマン』である!!

私が思うに、「社畜」とは、単に会社勤めのサラリーマンのことを指すのではない。「社畜」とは、なんの夢も希望もなく、努力もせずに、「一生会社に養ってもらおう」という“甘ったれた”メンタリティの人間を指すのだ。

お金のために行きたくもない会社に行き、やりたくもない仕事を嫌々やっている。そんな風に自分のことを「社畜」と卑下している人こそ、冷静にサラリーマンのメリットに目を向けてみてほしい。

公園のベンチでゴロリ。休憩中のサラリーマン=1998年6月4日、大阪市内で
公園のベンチでゴロリ。休憩中のサラリーマン=1998年6月4日、大阪市内で 出典: 朝日新聞

サラリーマンであることの誇りをもって

私は、サラリーマン時代も、経営者になった今も、会社というのは一種の“舞台”だと思っている。個人が会社に「使われる」のではなく、個人の夢や目標やビジョンをかなえるために会社があるという考え方だ。

今、会社という“舞台”にいる人は、たとえ入社したばかりの新卒社員であっても、自分の夢や目標やビジョンをかなえるために、会社の看板やコネクションなどをどんどん“利用”すればいい。

品川駅のコンコースに設置された『今日の仕事は楽しみですか。』という広告にイラっとした人は「なぜ今日の仕事が楽しみではないのか?」と自分自身に問いかけてみるべきだ。

人生は仕事だけで成り立っているわけではないが、仕事に費やす時間は人生の多くを占めているのも事実だ。やはり、仕事が楽しくないことは、人生の楽しさに影響してしまう。

どんなに前向きに考えようとしても、目の前の仕事が好きになれないという人もいるだろう。そんな時は、自分自身のキャリアに対して“主体的”かつ“戦略的”な考えをもってほしい。サラリーマンとしての仕事の実績を武器に“個人としてのブランド”を育てていくことに取り組めば、もっと自分のやりたい仕事ができたり、もっと自分が活躍できる会社に転職できたりと、いずれは大きな変化につながっていくはずだ。

今サラリーマンをやっている人は、サラリーマンならではのメリットにもっと目を向けてほしいし、サラリーマンであることに誇りがもてるような働き方をしてほしいと思う。

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