連載
#127 ○○の世論
支持率が全然、落ちなかった岸田内閣 オミクロン拡大しているのに?
医療逼迫「不安」だけど支持する人々
オミクロン株による新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、1月22、23日に実施した朝日新聞社の世論調査では、岸田内閣支持率は昨年12月と同じ49%と堅調でした。前の菅内閣のときは感染拡大とともに支持率が下がる傾向にあったので、少し様子が異なります。医療態勢に不安を感じる人ほど内閣を支持するという少し意外な傾向も。今後の支持率の行方を左右しそうな気になる数字も見つかりました。(朝日新聞記者・渡辺康人)
今回のオミクロン株は、感染の速さとともに軽症者が多いことが特徴です。
中には後者をとらえて「風邪と同程度では」と言う人もいますね。そこでまず、世論が従来のコロナウイルスと比べてどのぐらい深刻と感じているかを探った質問の結果を紹介します。
これまでほどじゃないと感じる人が約3割、これまで通り、またはこれまで以上だと感じる人が約7割という結果でした。「やはり多くの人が恐れている」とも「前より軽く見ている人もけっこういる」とも言えそうです。
重症者が少ないなかでも感染者の急増により医療逼迫が心配されています。
感染した場合に治療が受けられない不安を感じるか尋ねたところ、「大いに」「ある程度」を合わせて「不安を感じる」は69%で、「あまり」「全く」を合わせた「不安を感じない」29%を上回りました。
不安を感じるとの答えは女性では75%にのぼりました。年代別では60代が77%でした。中でも「大いに感じる」という人は全体では22%ですが、18~29歳の若年層に限ると8%と極端に少なめでした。
さて、こうした不安心理も広がる中で、内閣支持率はどうだったのでしょう。次の数字をご覧ください。
全体で49%という内閣支持率は、岸田内閣発足以降で最高だった前回12月調査と同じ。この1カ月間で感染者数が爆発的に増えたなかにあって堅調な数字です。
注目すべきは、先ほどの「治療が受けられない不安」を感じる人の内閣支持率です。
53%と全体支持率を上回りました。不安な人ほど政権評価が高まっていることになります。オミクロン株の影響を従来より深刻とみる人の内閣支持率も48%と、全体とほぼ変わらない数字でした。
岸田政権発足以降、コロナをめぐる政府対応を「評価する」という意見が「評価しない」を上回っています。不安な人の支持率が高いという結果は、政府による状況打破への期待が一定程度あることの表れなのかもしれません。
とはいえ、岸田政権への国民の評価はこの先、上向き、下向きどちらにも転がりうる「踊り場」の状況にあると見たほうがよさそうです。
感染拡大の中で支持率は足踏みしたとも言えますし、首相のコロナ対策での指導力について尋ねた質問では次のような結果も表れているからです。
全体の評価が二分されている中にあって、政府のワクチン政策を評価しているか否かで、見方が大きく違っていることがわかります。
ワクチン政策については「3回目のワクチン接種に関する政府の取り組みをどの程度評価しますか」と尋ね、「評価する」が68%、「評価しない」が29%という結果でした(それぞれ「大いに・ある程度」と「あまり・全く」の合計)。現状では評価する意見がだいぶ上回り、内閣支持率の堅調に結びついているようです。
ただ、ここにきて3回目接種がなかなか進まないことが問題視されつつあります。この問題の先行きは、岸田政権に対する国民の評価を左右する試金石となるかもしれません。
感染拡大が収まらないなか、今月の調査ではどうなるのでしょうか。
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