連載
#120 #父親のモヤモヤ
親になった武田双雲さん「感情整える、書道家として修行だと思った」
パネルディスカッションは、東京都の「東京ウィメンズプラザ」が主催。「ふたりで納得!の暮らしを築く」というタイトルで昨年11月、オンラインで開かれました。
進行役は、パネリストも兼ねる狩野さやかさん。ライターで「ふたりは同時に親になる 産後の『ずれ』の処方箋」(猿江商會)の著書もあります。
パネリストは、書道家の武田双雲さん。「『子どもといること』がもっと楽しくなる 怒らない子育て」(主婦と生活社)などの著書があり、3児の父親です。
そこに参加させて頂いたわけですが、何とも肩身が狭い…。取材で聞かせて頂いた子育てする父親の声を届けねばと、自分を奮い立たせて参加しました。
「『夫』という言葉がこんなにも大きいんですね」
進行役の狩野さんから冒頭、こんなお話がありました。
狩野さんの運営する「patomato」で、妻に「育児1年目で大変だったこと」を自由記述でアンケート。多く使われた言葉ほど大きな文字で表示するツール「ワードクラウド」で分析すると、「夫」という言葉が目立ったそうです。「気持ちや負担を夫と共有できないという声が目立ちます」
子育ての大変さは、育児自体よりも、夫との関係にあるのではないか――。そんな指摘です。
子育て本を多数出版する武田さん。それでも「20代後半で(子どもが)生まれて、子育ての大変さを知らなかった」と振り返ります。
「ネガティブな感情に家全体がなりました。(書道家として)感情を整えることを表現しようと活動しているのに……自分も修行だと思いました」
私の娘は、いま5歳です。振り返ってみると、3歳くらいまでは体調を崩しがちでイヤイヤ期もありました。当然、仕事はままなりません。
「恥ずかしいのですが、まず仕事との両立にモヤモヤしていました」
「夫婦で納得の暮らしを築くには最低限の共通理解が必要と思います」
そう話す狩野さんは、都のデータをもとに、子育て世代の家事や育児関連時間は、1日平均で女性の方が5時間以上長く9時間弱だと説明しました。「気持ちの問題ではなくて、物理的に時間の問題なんです」
私はここでハッとしました。
出産後、環境が激変し心身ともに疲労する妻と、私のように仕事との両立がまず気になってしまう夫――。
モヤモヤの中心に「夫」がいるのだとすれば、原因はまさにこの「目線の合ってなさ」にあるのではないか――-。恥ずかしさがこみ上げるとともに、そんなことも発言しました。
パネルディスカッションでは、夫婦間で「○○らしさ」にとらわれているのではないか、それは分かりづらい姿で根強くあるのではないかということも議論されました。
狩野さんが挙げたのは「親らしさ」。息子が3、4カ月の頃に迎えたクリスマスのことです。授乳で睡眠が取れず「ヘトヘト」だったにも関わらず、チキンの丸焼きを作るなど、「過去最高なぐらい頑張ってしまった」エピソードを紹介しました。
私自身にも思い当たることがあります。
家族で外食した時のことです。娘の定位置が「何となく」妻の隣になっていることに気づきました。
娘は食事の介助が必要な時期でした。隣に座った方が、自然とその役割を担うことになります。だとすれば、「食事の介助は妻」のような刷り込みがどこかにあったのかもしれません。以来、意識的に隣に座るようにしています。
夫婦間のコミュニケーションをどうはかるか。武田さんは、書道教室の「先輩夫婦」のアドバイスを元に実践した「傾聴」のススメを説きました。「1に傾聴、2に傾聴、3に傾聴」
狩野さんは、ストレスの高い人に対する対応として「傾聴」は有効と発言。夫婦関係で言えば「妻のストレス値が高いことを意識し、ケアのために必要だと思ってくれると」と話しました。
ただ、議論では、話す方も「弱み」を見せまいとして、攻撃的な言葉になってしまうことがあると指摘されました。狩野さんは「『助けて』が『自覚してよ』になってしまうことも」
お互いが「弱み」を見せ、お互いが受け入れる環境づくりが大切。そんなことを話し合いながら、あっという間の1時間が終わりました。
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