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世論調査が「格付け」されたらどうなる? アメリカのシビアな事情

「捏造」認定まで…大統領選、過去20年間で最も低い精度に

大統領選挙結果の「監査」を支持する集会に置かれた、「トランプは勝った!」と書かれた看板=2021年7月24日、アリゾナ州フェニックス、大島隆撮影
大統領選挙結果の「監査」を支持する集会に置かれた、「トランプは勝った!」と書かれた看板=2021年7月24日、アリゾナ州フェニックス、大島隆撮影 出典: 朝日新聞

目次

企業から国家まで「格付け」のニュースがあふれていますが、米国では世論調査組織も格付けされているのをご存じでしょうか。米国には、大学や研究機関、NPOや民間調査会社など数多くの世論調査組織があります。4年に1度の米大統領選などで調査結果の正確性が話題になります。そんな米国の「世論調査事情」とは……?(朝日新聞記者・齋藤恭之)

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実際の結果と「誤差」比較

選挙の勝者となるのは誰か――。

2021年10月末の衆院選でも報道各社は情勢調査を行い、獲得議席数の予測に加えて各選挙区での勝敗予測を報じました。朝日新聞では、選挙区の調査結果は取材も踏まえ、「リード」や「ややリード」「接戦」などの表現で伝えました。

一方米国では、多くの調査組織が大統領選挙などの選挙調査を行っており、たとえば、複数の世論調査を比較している政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によると、バイデン氏51.2%、トランプ氏44.0%などと数字を公表しています。実際の投票結果と比較することで、調査の「誤差」を知ることができます。

21年7月、全米世論調査協会は20年の大統領選の選挙調査の報告書を出し、「誤差」について、全国調査の平均では4.5ポイントで過去40年間、州レベルの調査の平均では5.1ポイントで、過去20年間でみると最も精度が低かった、と評価しました。

ちなみに、世論調査ではヒラリー・クリントン氏が優勢で、実際にはトランプ氏が勝利した2016年の全国調査の「誤差」は2.2ポイントと今回より小さな値でした。

演説するヒラリー・クリントン氏=2016年3月3日、ニューヨーク、真鍋弘樹撮影
演説するヒラリー・クリントン氏=2016年3月3日、ニューヨーク、真鍋弘樹撮影 出典: 朝日新聞

右寄りか左寄りかまで考慮

ところで、世論調査の分析を行うウェブサイト「ファイブサーティーエイト」は、1998年以降の大統領選挙や上院選挙などで実施された選挙調査の結果に基づく世論調査組織のランキングを発表しています。

このランキングでは、調査の結果と実際の投票結果の「誤差」を比較するだけではありません。有効回答が多くなると小さくなる「標本誤差」や、調査日程が投票日に近い方が、調査精度が良くなることなどを計算式に入れて、ランキングの計算をしています。

また、同じ選挙で、ある調査が他の調査より「誤差」が小さい場合はランキングの計算においてより優位になります。当選した候補者を正確に言い当てた調査の割合が高ければランキングに加算されます。さらに、過去のデータから全米世論調査協会などの加盟組織の調査の方が、非加盟組織より「誤差」が少ないことが分かっており、それらの点なども考慮しています。

調査会社が政治的に右寄りだったり、左寄りだったりすることにより調査結果に誤差が生じる、調査組織効果(ハウス・エフェクト)と呼ばれる影響も考慮されます。

例えば、「ラスムッセン」ですが、2020年の全国世論調査では、トランプ氏の勝利を予測した数少ない世論調査組織の1つでした。しかし、ラスムッセンは一貫して共和党系で政治的には右寄りの調査組織なので、トランプの勝利が予測できたとしています。

トランプ前大統領の集会に参加した支持者たち=2021年6月26日、オハイオ州ウェリントン、大島隆撮影
トランプ前大統領の集会に参加した支持者たち=2021年6月26日、オハイオ州ウェリントン、大島隆撮影 出典: 朝日新聞

評価の対象は「493組織」

さらにランキングには「群れ」という概念も加わっています。世論調査組織が、自分の調査が他と一致していない時、結果を選択して発表したり、方法を修正したりして、他の調査組織の「群れ」の方向と一致させようとすることがあります。

自分たちの調査結果の正確さに疑問を持たれることを避けるために、このようなことをしているのかもしれません。自社の調査が他の調査に比べて違う値であっても、「群れ」ずに発表する組織はランキングに対してよい要素となります。

全部で493組織が評価の対象となっており、A~DとFのランク付けがされています。最も良い「A+」が付いたのは4組織あり、最も多いのが「BまたはC」というランクで341組織ありました。また、最も悪い「F」がついたのは11組織で、これらの組織は調査の結果を「捏造」したとされています。

評価の対象となっている調査会社が493組織もあるということからも、米国では、民主党、共和党ともに、選挙調査に多額のお金をかけているということを実感しました。日本でもこうした格付けが行われる日がいつかは来るのでしょうか。

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