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#116 #父親のモヤモヤ
子育てアプリにパパモード、見直した妊娠期の「飲み会連絡」の文言
夫婦の「情報格差」をなくしたい。そう思ってアプリを活用する父親もいます。
髙橋さんは平日、午前6時半に自宅を出発し、車で1時間半かけて職場へ向かいます。始業までのひととき、スマホにインストールした子育てアプリに目を通すのが日課です。
1日2回程度だった離乳食は、2カ月ほどすると3回に。昼寝は1日1回に――。アプリには長男の生年月日を入力。成長の目安に関する情報などを確認します。
「赤ちゃんの成長は早いです。個人差が大きいことは理解しつつ、親として今、そして少し先にどう関わればよいかが知りたいです。知識の『入り口』としてアプリを使っています」
髙橋さんが子育てアプリを活用するようになったのは、夫婦間で子育ての「情報格差」が生まれないようにしたいと考えたからです。
「妊娠すれば、妻の体調は変わり、胎児もどんどん大きくなります。この間、夫が無自覚だと意識のズレが積み重なります。『任せきり』の子育てになってしまうことを恐れました」
妊娠期は、妊婦の体調変化や胎児の成長の様子、出産後に準備することなどを確認。生まれた後は、赤ちゃんの成長に加え、「100日祝い」など、節目にどんな風習があるのかも調べています。
髙橋さんは、ことあるごとに妻に尋ねるわけにもいかず、自ら情報を集める必要性を感じたそうです。活用するアプリは、「日めくりカレンダー」のように日々情報が更新され、髙橋さんの求めるペースとも合っていました。
髙橋さんが活用するアプリは、エバーセンス(東京)が2016年から提供する「パパninaru」です。
同社では、主に母親を想定したアプリ「ninaru」を前年にリリース。「パパモードがほしい」との声を受け、父親向けのアプリを開発したそうです。
アプリ担当の三木悠輝さん(32)は「夫婦でのコミュニケーションにつながれば」と話します。
妊娠期から体調の変化が伴う妻に対し、夫は意識の変化が起こりづらい場合もあります。アプリを通じて夫が「気づき」を得ることで、夫婦間の情報のでこぼこをなくす狙いがあるとします。
アプリは無料。「妊娠モード」と「育児モード」があり4歳まで使えます。
子どもの誕生日を入れて使うため、「今日の赤ちゃん」「今日のパパへ」「先輩パパのひとこと」といったメッセージが日替わりで表示されます。ほかにも、子育ての制度や行事、保育園や幼稚園の基礎知識などについても調べられます。提供する情報は、医師や管理栄養士ら専門家の監修を受けているとします。
男性の子育てに対する意識の変化を反映し、アプリで表示されるメッセージも見直されています。
例えば、かつては、妻の妊娠期に「飲み会などで帰りが遅くなるときは、今までに増してマメに連絡を!」というメッセージが表示されていました。しかし、ユーザーの声も参考に、「妊娠中はなにが起こるかわかりません。いつでもサポートできるよう、飲み会は控えましょう」に変わりました。
「妊娠モード」の月間ユーザーが10月に過去最高を記録するなど、アプリも受け入れられています。
担当の三木さんは「ユーザーの意見を取り入れながら、父親の行動をサポートできるアプリでありたいと思います」と話します。
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