MENU CLOSE

ネットの話題

「GLAYの20万人ライブみたい」ひじきの収穫後が〝まさか〟の姿に

ツイートの裏で繰り広げられていた壮絶作業

「大観衆のライブ会場」みたいなひじきの収穫後の様子
「大観衆のライブ会場」みたいなひじきの収穫後の様子 出典: 榮大吾さん(@sakaeruman)のツイート

目次

まるで「大観衆のライブ会場」のような1枚の画像がツイッターで話題になっています。写っているのは、食卓でもおなじみのあの食材でした。投稿した漁師に話を聞きました。

◆「カルガモ割」って何?お子様連れでも気兼ねなく 想いを広める一風堂の挑戦(PR)◆

「完全に野外ライブ」

話題になった画像は、照明に無数の「黒い影」が浮かび上がっています。ブロック分けされていて、一見、観客で埋まったライブ会場のアリーナ席のよう。

画像とともに投稿した文章は、こう種明かししています。

大観衆のライブ会場だと思うでしょ?

収穫したひじきだ。
「さかえる・ひじき漁師」(@sakaeruman)さんのツイート

この投稿には「だまされました」「完全に夜の野外ライブ」「照明の具合とか、ライブ会場感が出てる」「めちゃめちゃ盛り上がってるね!」と注目され、1.4万件のいいねを集めました。

おなじみの食材である「ひじき」の収穫されたばかりの姿に、「そうか……ひじきって”漁”だったんだ……!」などと、驚く声も上がりました。

「脱サラ」して地方移住

投稿した、ひじき漁師の榮大吾さん(@sakaeruman)にお話しを伺いました。

ひじき漁が解禁された直後の12月は、超多忙ですが、メッセージで裏話を聞かせてくれました。

榮さんは、山口県周防大島でひじきを生産している、32歳。

2019年に「師匠」について漁をスタートさせました。それまでは「ひじき漁」とはまったく異なる仕事をしていたそうです。

前職は東京・大手町にある日本政策投資銀行で、大企業向けの投融資を行ったり、銀行そのものの資金繰りや資金運用を担当したり。

「脱サラ」して地方移住し、いまの生活を始めました。

投稿した画像を撮影したのは、今年12月4日の明け方5時ごろ。収穫したひじきを干し場に広げているところを撮りました。

作業場で光を浴びて、黒く輝くひじき。以前、この様子をツイートしたところ、フォロワーから「GLAYの20万人ライブみたい」と反応があり、「ライブ会場」に見えてきたと言います。

収穫後のひじきの画像に反響が集まり、「多くの人に自分たちの収穫したひじきの情報が届いてうれしいです!」と榮さん。

収穫したひじきを持つ榮さん
収穫したひじきを持つ榮さん 出典: 榮大吾さん(@sakaeruman)のツイート

夜中2時半過ぎ、干し場に広げて

でも、なぜそんな未明の撮影になったのか。

裏にはひじきの、壮絶な収穫風景がありました。

ひじきは磯の岩の上に生えています。

ひじきの漁期は12月から4月まで。この時期の最も潮が引く時間を狙って、磯に出かけます。それが深夜から明け方だそうです。

岩の上に生えたひじきを刈り取る
岩の上に生えたひじきを刈り取る 出典: 榮大吾さん(@sakaeruman)のツイート

夜10時には、仲間と漁場や天候を踏まえて作戦会議。

漁場である磯は船が接岸できないところが多く、時には真っ暗な山道をかきわけ、ロープをつたって磯へ降ります。

夜11時ごろから、凹凸のある岩の上で、手作業でひじきを刈り取っていきます。

潮の満ち引きとの戦い。刈っては運びを繰り返して、多い時は一晩で1・5トンを運ぶといいます。

夜中2時半過ぎ、干し場にひじきを広げて、ようやく仮眠。そして日が昇ると、手作業でひっくり返して、乾燥させていきます。

そうして収穫し、手間ひまをかけて加工して、食卓に届くひじき。なかでも、漁期の序盤に収穫した状態が良い新芽は混じりっ気がなくて真っ黒で、最高級の「沖家室(おきかむろ)ひじき」として販売しているそうです。

普段口にするようなスーパーのひじきとの違いを聞いたところ、「最も異なるのは、水で戻してサラダでお召し上がりいただける食感の良さかと思います」と榮さんは誇ります。
「収穫したての新芽ひじきは日光が当たると黄金色に輝きます」
「収穫したての新芽ひじきは日光が当たると黄金色に輝きます」 出典: 榮大吾さん(@sakaeruman)のツイート

しあわせに生きること

ひじきを手で刈り取るのにも「けっこうなコツ」が必要で、きれいに刈り取るようになるまで2年かかったと言います。

前職の銀行での仕事とはまったく違う「ひじき漁」。

一方で、「漁も他の仕事同様、情報が命です」と言います。

「風向きや潮、天候、湿度まであらゆる情報を仕入れて予測を立てながら業務を遂行します。金融マーケットの分析などにも共通するようなところがあるなぁと感じていますし、高度な経験と分析に基づく判断が必要になる仕事です」と榮さんは話します。

いまはひじき漁以外にも、畑やWeb・動画・講演まで手がけ、収入の柱をいくつも持つ「現代の『百姓』」を自称します。収入は脱サラ前を上回るまでになったそうです。

田舎での暮らしは厳しさもありますが、庭付き一戸建ての家に暮らすという都会ではなかなか難しい生活もかなえました。

なにより、移住前の生活とは、まったく違う光景に出会う日々。

「以前の生活を思い返すことはほとんどありません!」と言います。

「最近の夕陽贅沢セット」
「最近の夕陽贅沢セット」 出典: 榮大吾さん(@sakaeruman)のツイート

榮さんの目標を聞きました。

「しあわせに生きること」。

そのために、「自分が成長し、家族や友人と良好な関係を維持し、所属するコミュニティに貢献し続けていきたい」と言います。

目標に向き合いながら、進路を選んできた榮さん。

目下、集落内に「次なる若手事業主を育てる」ために、チャレンジしたいと考えているそうです。
CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます