連載
#18 眠れぬ夜のレシピ
朝まともに起きられた日は…ふかふかホットケーキをごほうびに
「夜を共に過ごす仲間がいる」
夜寝て、朝まともな時間にすっきり起きることが苦手というSNS作家・午後さん。起きられた朝には、もっちりふかふかの特製ホットケーキを焼きます。焼きながら「起きられない」自分に、幼少自体から染み混んだ、生きづらさを振り返ります。どこかで同じような孤独を抱えた誰かへ、手紙を添えて、お届けします。(漫画・コラム、午後)
午後さんのプレイリスト
眠れない夜。午後さんの身近にあった音楽を教えてもらいました。
あなたの夜の隙間も、少しでも埋められたら、幸いです。
こんばんは、午後です。
すっかり寒くなりましたね。急にやってくる朝晩の冷え込みに、毎年驚かされてしまいます。一年はあっという間に過ぎてゆくのに、夏の猛暑や冬の凍てつくような寒さの到来に、毎年新鮮な驚きがあるのが不思議です。少し話が脱線しますが、年齢が上がるにつれてどんどん一年が短く感じるのは、その時々の人生において一年という時間の占める割合が異なるからなのだそうです(例えば、5歳児にとっては人生の1/5の時間ですが、20歳では1/20、60歳では1/60です)。なるほどなあと思いました。
私は最近、ストーブを出しました。そろそろ膝かけも出そうと思っています。本格的な寒さに向かう時節、皆さまも、風邪など召されませぬよう充分にご自愛ください。
さて、作中に書いてある通り、私は生まれた時から睡眠のとり方が少し変わっていました(ちなみに今日は夜の9時頃に起床しました)。毎日、起床・入眠時間がズレてゆき、基本的に一日に12時間くらいの睡眠が必要です。となると、苦労したのは学校生活でした。幼稚園から大学に至るまで、毎日眠い目をこすりながら学校に行き、授業中に眠っていました。平日の6~7時間ほどの睡眠では到底足りず、休みの日はほぼ一日中眠っていました。やりたいことどころか、やるべきこともほとんど出来ず、日々、時間を守ることで精一杯でした。
恐らく睡眠障害の診断が下るのだろうと予想していますが、生まれ持った体質なので治せるものでもありません。私は生まれた時から、学校のシステムからは評価されるに値しない人間だったのです。
しかし、大人になってみると、なんて狭い価値観にとらわれていたのだろうと思います。
大人と子供の決定的に異なるところは、自分の居場所、ないしは、生き方を自分で選ぶことができるところだと思います。
大人になってから出会う人は、皆各々の個性が光り、ユニークで、それぞれ異なった生きづらさを抱えています。この人は子供時代、どうやって順応してきたのだろうかと思うたび、「私たち、よく頑張ってきたよね」といった、戦友への念のようなものを、私は送るのです。
いわゆる「ちゃんと」している人間像だなんて、この社会を円滑に回すために作られた、ただの概念上のモデルだと私は思っています。だって、欠点のない人間だなんていません。必ず枠からはみ出るところがあり、それがいわゆる個性なのに、子供時代にそれを徹底的に否定されないといけないだなんて、随分窮屈だと思います。
私のようにどうしても眠れない・起きられない子や、どうしても牛乳が飲めない子、じっとすることが難しい子、期限を守るのが難しい子、忘れ物をしないことが難しい子……たくさんの子供たちがいました。まずはその個性を受け入れられ、その上で個々に対応がなされる世の中になって行ってほしい。
みっともない、ワガママだ、怠けている、だらしがない……子供時代、散々言われてきました。人格を否定されて悲しい思いをする子供が、ひとりでも減る世の中になるよう、一人の大人として、考えていかなくてはいけないなと、思っています。
それでは、今夜も素敵な夢が見られますように。おやすみなさい。
午後
SNS作家。2020年5月からTwitterに漫画を投稿をしている。「眠れぬ夜はケーキを焼いて」の続編、「眠れぬ夜はケーキを焼いて2」(KADOKAWA)を10月28日に上梓する。Twitterアカウントは@_zengo。
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