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飛行機に乗って投票へ、郵便は届くかやきもき 混乱・不便の在外投票

それでも1票を託す人たちの思い

海外に住む有権者が投票する「在外投票」は、コロナ禍や解散から投開票までの短い日程などが影響して混乱。それでも1票を託す人たちの思いは
海外に住む有権者が投票する「在外投票」は、コロナ禍や解散から投開票までの短い日程などが影響して混乱。それでも1票を託す人たちの思いは 出典: 山口智美さんのTwitter

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「自分の1票は、開票に間に合ってくれるのか……」。国際郵便で送った投票用紙の行方を、この数日間、やきもきしながら追跡している人たちがいます。31日に開票を迎える衆院選、海外に住む有権者が投票する「在外投票」は、コロナ禍や解散から投開票までの短い日程などが影響して混乱しています。2万6千円かけて在外公館で1票を投じた人もいれば、投票をあきらめた人もいます。

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飛行機に乗って投票へ

ニュージーランドの南島の端に暮らす江頭由記さんは、今回の選挙で「在外投票」の1票を投じるため21日、朝一番の飛行機に乗って首都ウェリントンに向かった。

夫婦2人で投票し、午後2時半の飛行機で戻ってきた。飛行機代は一人約3万円、2人で計約6万円。マイルポイントも使って出費は12000円に抑えたが、投票のためだけに使った出費と時間は重い。コロナ禍で2年ほど日本に帰れていない分の帰省代が浮いたというのもあったが、「いや、なんか悔しいんですよ、制度があっても使い勝手が悪いのは。だから意地でも投票してやろう、と」。

外国から投票の場合、「在外公館投票」と「郵便等投票」の二つがある。実はこれまでに4~5回、郵便投票を試みたが、投票用紙が選管に届かなかった経験がある。といっても連絡が来るわけではなく、開票日前日に自分で選管に電話で確認したところ「受け取っていない」と言われたりした。それで、2017年以降はずっと、現地の公館で投票をしている。

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「日本にいたころは、正直、あまり選挙には熱心ではなかった」という。長時間労働で週末も仕事が入って忙しく、期日前投票にいく気力は残っていなかった。

それが、移住先のニュージーランドで約20年前に永住権を取り、地方選挙も国政選挙も投票ができるように。1票の違いで当選者が変わるのを目の当たりにした。さらに10代の息子が、友だちと「自分は労働党がいい、いや国民党がいい」と言い合っていると知って、「ひっくり返りそうなほど驚いた。意識が変わりました」 。

それでも、日本を離れて20年以上になるのに、これほど労力と時間をかけて1票を入れに行ったのはなぜか?

日本語教師として、日本の文化やアニメに憧れて日本語を学び始めたニュージーランドの若者たちと接するようになったこと。ニュージーランドで育った息子も、これから日本で暮らすことになるかもしれない。「彼らが日本に行ったときに、日本がいい国であってほしいから」。でも――、と江頭さんは言う。

「でも実際には、ウィシュマさん(名古屋出入国在留管理局の施設収容中に死亡したスリランカ人女性)の件だとか、ヘイトスピーチ問題だとか、政治の腐敗だとか、なんだか生徒に日本を誇れなくなるような感じがあって。そのうち、私なんかも『外国かぶれ』で『帰ってくんな』とかいわれちゃうのかなあ、とか。だから、日本が帰れなくなる国にならないように、投票します」

郵便投票、届くかやきもき

郵便投票も、投票用紙の郵送にかかる費用は個人持ちだ。

米モンタナ州在住の大学教員・山口智美さんは、飛行機利用か、車で片道10時間かかるシアトルの公館での投票ではなく、郵便投票を選んだ。公示日の翌日である20日、「Priority Mail Express International」で67.95ドル(約7700円)を払った。

それ以外では間に合わない日程だから仕方がなかったが、高い個人負担だと感じた。「この金額を負担できない人もいるだろうし、アメリカから投票用紙を請求する際にも郵送料がかかりますし。エクスプレスだと、同じ67.95ドルです」

山口さんは毎日、郵便物の状況を確認し、米国内で滞留していた時には郵便局に問い合わせ電話も入れたが、27日には必ず届くはずだった投票用紙は、日本時間の29日午前の時点でまだ届いておらず、「ギリギリになりそうです」とやきもき。その後、日本時間の29日午後3時過ぎに「配達された」という通知が来たという。

ニュージーランド在住の女性もやはり20日、コロナで不確実な郵便投票を少しでも確実に届けるため、自分と娘の郵便投票を、計173.94ニュージーランドドル(約1万4千円)かけて送った一人だ。

「なんで投票するのにこれほど手間とお金がかかるのかとは思いましたが、それ以上に、弱い人がより弱く、豊かな人がより強くなる社会ではなく、また日本の農家を守ってほしいという気持ちで投票しました」

イタリア中部の街・ペルージャに暮らす田上明日香さんも、早くから郵便投票の準備をしていた一人だが、郵便事情で間に合わないことが分かり、急きょ、在外公館での投票に切り替えた。

ローマの在外公館での投票日には、朝9時半に家を出て、タクシーで駅まで20分(30ユーロ)、電車は乗り継ぎ1回で約3時間、コロナ禍のため乗客の密度が少ない席を選んだので20ユーロ。13時半に到着した大使館近くで軽食を取って投票を済ませたのが15時。再び4時間がかりで戻る体力はなく、一泊(100ユーロ)して、同じ手段で帰宅。在外公館での投票に、200ユーロ(2万6千円)かけた。

「ずっと、在外投票の手続きの問題があったのに改善されてこなかった。自分の投票権が奪われそうになったときに、怒りと憤りを感じたんです。それに、イタリアに来て日本の政治のニュースがおかしいと思い、1票の重みを感じるようになった。選挙は自分自身の声を届けることだと思っています」

日程限られ、断念した人も

様々な困難を乗り越えて投票しようとする人の一方で、投票できずに終わった人もいる。フィンランド・ヘルシンキ在住の研究員は、在外公館へは自宅からのアクセスが小一時間と、在外邦人としては恵まれている。気持ちに余裕があった。

しかし、今月15日、総領事館から在留邦人向けに送られてきたメールで在外投票の日程が「10月20日、21日の2日間」で、思わず二度見した。まったく同じ日程で、遠方での調査が入っていた。

前回の参院選では、二度の土曜日を含む9日間で投票可能だったのが、今回はたった2日……。投票をあきらめたが、21日の夜以降は、日本の選挙のニュースを見ても、自分の選挙は終わってしまって「かやの外」という気持ちになる。

「東京で外国人と結婚して子どもも生まれて3人家族、でも投票権を持っているのは自分1人だったので、いつも『今からみんなの分まで投票してくるぞ!』と出かけていました。でも考えてみると自分にとって、投票できるのは当たり前の権利で、投票したくてもできないことがこんなに『もどかしい』こととは分かっていなかったんです。日本で投票権がある人は、パスポートを準備しなくても、投票カードを持っていなくても、投票所に行けば31日の夜8時まで投票できる。うらやましいです」

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