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IT・科学

摂食障害の子ども急増、前年度比1.6倍に 「食べられない」理由は?

メディアやSNSの〝コロナ太り対策〟も影響

子どもの食や体重に異変を感じたら「かかりつけ医に相談してほしい」と専門家は呼びかけます。子どもが受診をいやがったら保護者だけで訪れても良いといいます
子どもの食や体重に異変を感じたら「かかりつけ医に相談してほしい」と専門家は呼びかけます。子どもが受診をいやがったら保護者だけで訪れても良いといいます 出典: ※写真はイメージです Getty Images

目次

コロナ禍でのストレスや不安感から、食事をとれなくなって極端にやせる摂食障害の子どもが増えています。全国26の医療機関では、2020年度に摂食障害で外来を受診した子どもが前年度に比べて1.6倍に増加。入院患者も1.4倍に増えました。外出控えやメディア・SNSでの「コロナ太り対策」特集などの影響も考えられるといいます。専門家は「子どもと食卓を楽しく囲み、しっかり食べているか、成長期で増えるはずの体重が止まっていないか目配りしてほしい」と話します。

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コロナ禍で拒食症患者の増加

摂食障害のひとつ「神経性やせ症」は「拒食症」とも呼ばれ、食事を極端に制限したり、食後に吐き出したり過剰な運動をしたりして、正常な体重よりも明らかに低くなる病気です。

最悪の場合、命を落とすケースもあります。肥満への恐怖や、体重を増やさない行動が続いていること、自己評価に体重や体型が影響している、自分が「やせすぎ」とは感じない……といった特徴があります。

新型コロナウイルスの流行で子どもたちの生活も大きく変化。厚労省の「子どもの心の診療ネットワーク」事業に参加する26の医療機関からは「摂食障害の患者が増えている」「入院期間が延びた」「ベッドが足りない」といった声が上がっていました。
そこで26医療機関へ2021年4月~6月にアンケートを送付、20歳未満の患者について回答してもらいました。
子どもの神経性やせ症の患者数が増えています
子どもの神経性やせ症の患者数が増えています 出典: 国立成育医療研究センター提供

すると2020年度は神経性やせ症の初診外来患者数が男子は28人・女子は230人。コロナ流行前の2019年度と比較すると男女ともに1.6倍に増加していました。新入院者数は女子で1.4倍に増加しました。

治療可能な病床数は不足

一方で、摂食障害を治療できる医療機関に入院が集中しており、病床数は不足しています。

病床充足率について回答があった5施設では、4施設で病床使用率が増加。充足率(いま摂食障害で入院している患者数/摂食障害の入院治療のために利用できる病床数×100)が200%を超える施設が2 施設あったそうです。

国立成育医療研究センターの副院長・こころの診療部統括部長の小枝達也さん
国立成育医療研究センターの副院長・こころの診療部統括部長の小枝達也さん 出典: 国立成育医療研究センター提供

コロナ対策で小児の病床が減らされていることが影響している可能性があります。アンケート結果を発表した国立成育医療研究センターの小枝達也・こころの診療部統括部長は「感染症としてのコロナ病床も大切ですが、コロナに関連した病気も増えていることを知ってほしい」と訴えます。

「コロナ太り対策」の情報も影響

感染対策のために外出を控え、友達とも会えず、修学旅行や卒業式といった行事も中止になりました。

神経性やせ症の患者の増加について、小枝さんは「緊急事態宣言や学校の休校などで生活環境が変化し、子どもはストレスや不安感にさらされている」と指摘します。

国立成育医療研究センターが実施した「コロナ×こどもアンケート第5 回調査」(2021年2月~3月に実施)では6~18歳の回答者約500人のうち76%に、何らかのストレス反応がみられたといいます。
SNSやメディアなどで「コロナ太り対策」の情報も流れています
SNSやメディアなどで「コロナ太り対策」の情報も流れています 出典: ※画像はイメージです GettyImages
また、社会の「やせ」が美しいといった価値観や、SNS・メディアなどでの「コロナ太り対策」「コロナで運動不足を解消」といった情報に影響された可能性も指摘されます。

小枝さんは「成長期の子どもは体重増が当たり前です。そんな中で『運動不足に気をつけて』『太った?』といったささいな一言がきっかけで食べられなくなってしまう子もいます」と話します。

センターの第5回調査で、子どもたち自身の体型の印象について尋ねると、38%がいまの自分の体型について「太りすぎ」「太りぎみ」と思っていると回答。半数近くの48%が「やせたいと思っている」と回答していました。

また、4%が「食事の量を普段の3分の2以下に減らす」、2%が「食べたものを吐く」と答えています。

小枝さんは「受診したり入院したりする子どもは氷山の一角と考えられます。アンケートの患者数以上に、摂食障害の潜在患者や予備軍の子どもがいると推測されます」と話しています。

「食べなさい」は逆効果になることも

神経性やせ症は、本人は「やせすぎ」とは自覚できず、医療機関の受診が遅れがちといいます。小枝さんは「無理に食べさせたり、『食べなさい』と追い詰めたりすると逆効果になることもある」とした上で、子どもの異変を感じたらまず内科・小児科のかかりつけ医へ相談することを勧めます。

子どもが受診をいやがったら、保護者だけで訪れてもかまいません。体重が激減するなど深刻な状態になってからではなく、『最近食が細いな』とか、体重が変わっていない・むしろ減っているなと感じたら、早めに受診してみてください」

特に成長期には、十分な栄養がとれていないと、体温低下や発育不良、女子では生理が止まるといった影響が出ることもあります。
小枝さんは「食べていない子どもに聞いても『食べていない』とは言いません」と指摘します
小枝さんは「食べていない子どもに聞いても『食べていない』とは言いません」と指摘します
出典: ※画像はイメージです GettyImages
小枝さんは「『コロナ禍で子どもたちが不安感を抱いている』といった情報は出ていますが、私たちがお伝えしたかったのは『子どもの〝食べる〟も見守ってほしい』ということです」と話します。

「朝起きる、夜眠る、ごはんを頂くのは、子どもにとって大事なことです。給食は黙食になってしまっているので、せめて家では楽しく食卓を囲みながら、しっかり食べているか、身近な大人が早めに気づいてあげられるようにお願いしたいです」
◆体験談をお寄せ下さい
コロナ禍を経て、「太るのが嫌で食べるのが怖くなった」「食事量が減った」など、子どもの「食べる」にまつわる変化はありましたか。ご意見や体験談をこちら(https://forms.gle/LzT2fKs6wzgxdrMP9)までお寄せ下さい。

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