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#112 #父親のモヤモヤ
男性の育休後、働く時間〝変わらず〟8割「職場に迷惑かけた」の声も
withnewsでは2021年9月~10月、「Yahoo!ニュース」を通じて、男性育休の取得者を対象にアンケートを実施。Yahoo!ユーザー1506人の回答を得ました。
回答者は10代が1%、20代が6%、30代が25%、40代が38%、50代が23%、60代以上が7%となりました。
育休期間は、2週間未満の人が7割超を占めます。
2週間未満が7割超という傾向は、厚生労働省の「雇用均等基本調査」(2018年度)からもうかがえます。この調査によると、女性の場合は「10カ月~12カ月未満」「12カ月~18カ月未満」の人があわせて約6割を占めます。男性の育休は、女性に比べてごく短い期間であることが分かります。
育休中の家事や育児への関わりについて、0点から100点まで、20点刻みで自己採点してもらいました。最も多かったのは、60点(38%=小数点以下四捨五入、以下同じ)です。100点の人は6%、0点と採点した人も3%いました。
60点の人は、「仕事と違って分からない事ばかりで、あたふたしました」(40代)、「結局、幾らかは妻の手を借りる事があったから」(50代)などを理由に挙げています。
100点の人は「夫婦で協力し、問題がないので」(50代)、0点の人は「役に立たなかった」(30代)といった理由を述べています。
育休の期間という「量」は、育休の点数という「質」の評価にも関係しそうです。
育休が5日未満と回答した人(782人)と、1カ月以上の人(200人)を比べると、短い方が得点が低くなりやすく、長いと高く出る傾向がありました。
5日未満の場合、「0点」「20点」「40点」とした人は、あわせて41%を占めました。「80点」「100点」は24%です。
一方、1カ月以上の場合は、「0点」「20点」「40点」は19%。「80点」や「100点」といった高得点をつける人は47%を占めました。
育休中の評価はさまざまです。それでは、復帰後の働き方はどうでしょうか。
アンケートでは、労働時間が「変わらない」と答えた人は81%で大半を占めました。「増えた」は11%、「減った」は8%です。
働く女性の場合、違う光景が浮かびます。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの「仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業」(2018年度)によると、正社員の女性は、「末子が1歳になるまで」は半数程度が「長期の休業」で対応しています。
ただ、「末子が2歳になるまで」の時期は、「仕事のある日はできるだけ残業をしないようにして子育てをする」(18%)、「短時間勤務で働きながら子育てをする」(21%)と、働く時間をセーブする方向にかじを切っています。この傾向は、小学校入学以降も続きます。
育休後の働き方をめぐる思いについて、選択肢から三つを選んでもらったところ、「職場に迷惑をかけている」(43%)、「収入アップが見込めない」(34%)、「昇進が見込めない」(26%)など、ネガティブな回答が上位を占めました。
アンケートを通じて、男性の育休後は働く時間に変わりがなく、「昇進が見込めない」などの葛藤を抱きながら働いていることが分かりました。
こうした結果を専門家はどうみるのでしょうか。
「さあ、育休後からはじめよう」の編著などがある育休後コンサルタントの山口理栄さんは、まず育休後の働く時間に変化がないことについて「男性だけ、働き方がまったく変わらないのはおかしいと思います。多くの女性は、キャリアに影響が出ることを半ば覚悟しながら子育てをしています」と指摘します。
一方で、管理職も「育休を取った分、働いてもらおう」という考えに陥りがちと言います。「働く側も、育休を負い目に感じ、『もっと頑張って働きます』となってしまいがちです」
山口さんは、昇進が見込めないといった停滞感は、育休後の男女に共通した葛藤だと話します。その上で「負担が一方に偏らないように、どう働きたいのか、子育てはどうか、夫婦としてできることは何か。2人でよく話し合い、イメージをすりあわせることが必要です」と言います。新型コロナの影響で在宅勤務が進んだ企業もあり、仕事と家庭を両立する環境はさらに整ってきたとします。
「働き方を変えるチャンスだとも言えます。男性の育休も促されています。今こそ、夫婦で仕事と子育てを両立させるため、育休直後だけでなく、子どもが自立するまでの十数年間の協力体制を考えてみましょう」
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この記事はwithnewsとYahoo!ニュースによる共同連携企画です。Yahoo!ニュースが実施したアンケートの結果を利用しています。アンケートは全国のYahoo!JAPANユーザーを対象に2021年9~10月に実施しました。
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