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陶芸でエヴァ作っちゃった!粘土使い躍動感まで再現、プロの技に驚愕

「プラモに集中できない」悩みが生んだ逸品

人気アニメ「エヴァンゲリオン」シリーズに登場する人型兵器。まさかの陶芸で再現した作品が、話題を呼んでいます。
人気アニメ「エヴァンゲリオン」シリーズに登場する人型兵器。まさかの陶芸で再現した作品が、話題を呼んでいます。 出典: 上村慶次郎さんのツイッター(@2Grq2X6QEhyNon0)

目次

陶芸作品と聞くと、お皿や壺といった、陶器類を思い浮かべる人が多いかもしれません。そんな予想を裏切る作品が、SNS上を震撼させています。人気アニメ「エヴァンゲリオン」シリーズに登場する巨大人型兵器を、陶土(粘土)を使い再現したものです。他にない魅力を、どのように実現させたのか? 手掛けた職人を取材しました。(withnews編集部・神戸郁人)

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渋さと躍動感伴う人型兵器

9月30日、四枚の写真がツイートされました。写っているのは、エヴァンゲリオンの作中で重要な役割を果たす、汎用人型決戦兵器人造人間「エヴァ零号機」の陶芸品です。

左膝を地につけ、やや前傾姿勢を取りながら、顔を前方に向けています。全体的に、土の風合いをそのまま活かした、茶色みが強いカラーリングです。ところどころ見受けられる焼きむらも、渋さを醸し出します。

注目すべきは、その完成度です。細くくびれた腹回りに、印象的な一つ目。肩から突き出し、天空に向かい伸びるパーツと、〝筋肉質〟で人間を思わせる腕。機体の特徴を押さえつつ、迫り来るような躍動感をもまとわせることに成功しています。

「とんでもない質感」「遠い未来に土中から掘り出されそう」。驚異の仕上がりを受け、感嘆する人々のコメントが、投稿に次々と寄せられました。8日時点で、1.7万超の「いいね」もついています。

陶土製の「エヴァ零号機」。今にも立ち上がらんばかりの勢いを感じさせるポーズだ。
陶土製の「エヴァ零号機」。今にも立ち上がらんばかりの勢いを感じさせるポーズだ。 出典:上村慶次郎さんのツイッター(@2Grq2X6QEhyNon0)

全国で集めたプラモの数々

この作品を手掛けたのは、熊本県八代市で陶芸工房「一夢庵風流窯(いちむあんふうりゅうがま)」を構える陶芸家・上村慶次郎さん(51・@2Grq2X6QEhyNon0)です。創作の背景について、話を聞きました。

同県出身の上村さんは、東京のゲーム会社で背景画を描く仕事などを経た1998年、陶芸家・吉田明さんに師事します。七輪で焼き物を作る「七輪陶芸」を始め、様々な技術を身につけ、各地で個展を開いてきました。

その作風は実に独特です。リアルな外見の恐竜が、壺の内側を蹴破って出てくるモチーフを採用したり、平皿の表面に始祖鳥の化石のような形の彫り込みを入れ、「発掘皿」と名付けたり。型にはまらない自由な発想でファンを魅了しています。

展示のため全国を駆け回る中、楽しみの一つがプラモデルの調達です。京都や名古屋などの都市圏に寄ると、地域のおもちゃ屋を訪れています。そのたびに、大好きなロボットアニメなどにまつわる商品を買い、愛着をもって扱ってきました。

「学生時代から『機動戦士ガンダム』や『装甲騎兵ボトムズ』などに親しみました。ロボットや兵器のプラモを組み立て、パーツを加工し、塗装するのが好きなんです。40年近く前に買ったものを含め、100個ほど自宅に保管しています」

「でも最近は忙しく、なかなか作る時間が取れません。陶芸品の制作が本格化すると、3~4日ほとんど寝ずに作業するんです。(説明書通りに組む)素組みまでできれば良い方。プラモから『もっときれいにしろ!』と言われている気になります」

恐竜が内側から壺を蹴破る構図の作品「恐竜の壺」。
恐竜が内側から壺を蹴破る構図の作品「恐竜の壺」。 出典:上村慶次郎さんのインスタグラム(ichimu_anne)

こだわり抜いた製法

陶芸に集中すればプラモに手を付けられず、プラモに気を取られると仕事が進まない――。悩ましい状況下、導き出した最適解は、「陶芸でプラモを作る」という発想でした。

約2年前に初めて手掛けたのが、「装甲騎兵ボトムズ」で活躍する人型兵器・アーマードトルーパーの一つ「スコープドッグ」です。アニメ本編や、雑誌に掲載された資料集などを参照しつつ、細部に至るまで忠実に模倣しました。

試しに個展会場で公開すると、作品を見た来訪客の表情が、ぱっと明るくなるのに気付きます。「これはいいなぁ」。人々の目を楽しませる、新たな手法を編み出した上村さん。以降、アニメ由来の造形物を、合計で10個ほどこしらえました。

今年4月に焼き上げた、高さ約40センチのエヴァ零号機も、そのラインナップの一つです。「製法にはこだわり抜いた」と振り返ります。

例えば、陶土。一般的な土と比べ、粒子が小さいものを複数入手し、半年ほどかけ独自に配合しました。市販品を用いるよりも、細やかな動きの表現が可能になるからなのだといいます。練り上げた後は、機体の成形に約3日費やしました。

重要となるのが、窯焼き時に形が崩れないよう、中身を空洞にすることです。陶土の密度が濃いとへたりやすくなるため、上方ほど薄く軽くしなければなりません。そして各部位にビニールをかけ、湿度を調整しつつ、10日間ほど乾燥させます。

更に一度素焼きし、表面に釉薬(ゆうやく)を塗りつけ、つやを出します。最後に18時間かけて、1250~1270度の熱で一気に焼成するのです。制作期間中は、他の作品の生産も並行するため、1時間半程度しか眠れない日もざらでした。

「装甲騎兵ボトムズ」に登場する機体「スコープドッグ」を再現した陶芸品。
「装甲騎兵ボトムズ」に登場する機体「スコープドッグ」を再現した陶芸品。 出典:上村慶次郎さんのインスタグラム(ichimu_anne)

陶芸の魅力伝える一助に

職人としての技術力の粋を集めた、エヴァ零号機。より多くの人々に見てもらいたくて、画像をツイートしたところ、予想外の拡散ぶりに混乱したと、上村さんは苦笑します。

「スマートフォンの通知音が止まらず、壊れてしまったのかなと焦りました。SNSは、いつもインスタグラムを使っていて、ツイッターは慣れていないもので……。最終的にキャリアショップまで行き、通知の止め方を教えてもらいました(笑)」

エヴァンゲリオンを巡っては、別の機体である「エヴァ初号機」「エヴァ2号機」も、陶芸品として再現しています。販売には、版権元企業の許諾が必要なため、あくまで趣味の範囲内で活用しているそうです。

「エヴァンゲリオン」シリーズの人型兵器「エヴァ2号機」を再現した陶芸品。
「エヴァンゲリオン」シリーズの人型兵器「エヴァ2号機」を再現した陶芸品。 出典:上村慶次郎さんのインスタグラム(ichimu_anne)

そして今回のように、世間の注目を集められれば、陶芸そのものの魅力を伝えることにもつながる――。上村さんは、そう考えていると話しました。

「私の師匠・吉田明さんは、『誰でも陶芸を楽しめるように』との思いから、七輪陶芸という技術を発明しました。焼き方もモチーフも、決して一つではありません。その豊かな可能性に面白みを感じ、夢中になって取り組んできました」

「興味を持って頂けた方は、ぜひ展示会に遊びに来て下さい。毎回、恐竜や古代魚などをあしらった、オリジナル作品もご用意しています。一つひとつに込めた思いについて、お話しできたらうれしいです。ご来場、楽しみにお待ちしています」

エヴァ零号機は、10月15~27日に京都陶芸会館(京都市東山区)で開く個展「上村慶次郎陶展 ~夢のひとかけ~」でも展示予定です。
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