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休日の「私」に政治を届けるには…記事に出ない同世代の気持ち

考えているけど「うまく語れない」だけ?

堀越理菜記者=2021年9月30日午前10時42分、熊本市、藤脇正真撮影
堀越理菜記者=2021年9月30日午前10時42分、熊本市、藤脇正真撮影 出典: 朝日新聞

目次

毎日つくっている新聞には、明快な主張や考えを語る人たちがたくさん載っていますが、20代である私や周りの同世代の気持ちは映し出されていない気がしています。選挙が近付けばもっとそうかもしれません。それは、うまく語れなかったり、賛成や反対にまでたどり着けていなかったりするからなのかもしれません。モヤモヤした若者の声を探すため、取材を始めることにしました。(朝日新聞熊本総局記者・堀越理菜 24歳)

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分かりやすい言葉を探してしまう

思い返せば、日々の取材で話を聞く人たちは、問題の当事者や社会に訴えたい主張を持っている人などがとても多い。締め切り時間までに原稿をまとめることに追われ、ついつい分かりやすい意見を語ってくれる人や、原稿にはまりやすい言葉を探してしまうこともあります。

6月、熊本大学でコロナ禍の学生に無料で食料品などを配る活動を取材しました。学生たちに話を聞くと、生活が苦しい中で東京五輪が開催されることへの複雑な思いや、ワクチン接種の順番はいつになるんだろうか、といった話をしてくれました。

五輪へのモヤモヤした思いは共感したし、ワクチンの接種時期は直前の熊本市の発表を記事にしていたので、情報が届いていないリアルも感じました。

でも、当時のノートをめくり返すと、そうしたメモはない。その日の原稿にはうまく入れられず、「支援はありがたい」といったコメントを書いて、次の仕事に向かいました。

電話で取材をする堀越理菜記者=2021年9月30日午前11時5分、熊本市、藤脇正真撮影
電話で取材をする堀越理菜記者=2021年9月30日午前11時5分、熊本市、藤脇正真撮影 出典: 朝日新聞

私自身「うまく語れない」若者かも

一方で、世の中の人たち、特に同世代って明快に自分の考えを語れるのだろうか、と思うのです。もちろん、政治を「自分ごと」として捉え意見を話せる人などのことも知っていますが、語れない人も多いのではないかと日々の取材や友人との会話では感じます。

それは、「何も考えていない」のではなくて、「なんとなく」の思いはあるけれど、表に出していなかったり、賛成や反対にまでたどり着けていなかったりするだけではないでしょうか。

そして私自身も「うまく語れない」若者の一人かもしれない、とも思います。仕事中は、衆院選に向けた取材をし、熊本に関係する国の動きも気にしています。

一方で、休日はインスタグラムでカフェを探したり、美容院で「最近よく見る動画」の話をしたり、平日の私と全く違う自分にスイッチします。

「難しい」と苦手意識のある政治や経済のニュースまでチェックするのは、「記者になった」というとっかかりができたから、という理由が大きい。休み明けの仕事のために記事を読みながら、今まで知らなかったことばかりだと感じて反省する。

政治について、自分なりに思うところはあるものの、新聞で語っている人たちや、社内の先輩記者のような知識も背景もない。まだ自信が持てず、人には語れない。

同世代のみなさんはそういうことありませんか?

もしも、街中で記者から「今度の衆院選について」と意見を求められ、質問を重ねられたら、いつも私が期待したり求めたりする、端的で筋が通った分かりやすい主張はできず、原稿には採用されなさそうです。

堀越理菜記者の取材ノート=2021年9月30日午前11時33分、熊本市、藤脇正真撮影
堀越理菜記者の取材ノート=2021年9月30日午前11時33分、熊本市、藤脇正真撮影 出典: 朝日新聞

同世代に記事を届けるためには

そんな私たちの姿は、日々の記事に映し出せているだろうか。「よく分からない」という声を切り捨ててしまっていないだろうか。

あいまいで、モヤモヤした若者の声を「わかりにくい」「きっと意見はない」といって聞こうとせず、若者たちの本音と交われなくなっていないだろうか。

では、どうすれば一緒に政治や選挙についての話ができるだろうか。もっと「政治に興味がない」「自分に関係ない」といった気持ちについて一緒に考えてみたい。

そして、どうすれば同世代にも私が書いた記事が届くのだろうか。それは実際に可能なのか。毎日のやらなければならない取材をしつつ、若者と政治、若者と新聞、それぞれの距離を縮め、つながるための答えを探していきたいと思います。

堀越理菜記者のツイッターは@horikoshirina

「#若・記者が見る衆院選」はじめます

いよいよ衆院選が間近に迫ってきました。あなたの街でも、街頭に立つ政治家やところどころに貼られているポスターなど「選挙の季節」を感じさせる場面が、ちらほら増えてきているのではないでしょうか。

でも、政治家がなにをしようとしていて、どんな役割を担い、選挙の結果が私たちのくらしにどんな影響があるのか。街頭演説や断片的なニュースを聞くだけではよく分かりません。身近な生活との関わりの薄さ、政治へのとっつきにくさが、とりわけ若者と政治との距離を広げているように思います。

全国各地で選挙の取材にあたっている若手の記者たちも、じつは同じような感覚を抱えながら選挙と向き合っています。彼らの声にじっくり耳を傾けてみると、そんなモヤモヤこそ若者と政治との間に横たわる溝そのものではないか、と思うのです。だからこそ、モヤモヤをモヤモヤのまま終わらせず、その源や正体を解き明かすべく、山口・熊本総局の4人の「若者×記者」が政治への違和感と向き合う企画を始めます。

4人がそれぞれのツイッターで、取材の経過やその時々の本音、企画以外の仕事の一面などを発信していきます。まずは巻頭として、4人が日々の取材で感じてきた「違和感の起点」からお伝えします。(朝日新聞西部報道センターデスク・石松恒)

 

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