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連載

#3 まんがコラム「こうえつ堂」

試合、早く終わって! 校閲泣かせのナイター、ネット時代の秘密兵器

締め切りが迫る〝嵐の中〟で「全集中」の夜

校閲記者泣かせのプロ野球ナイター。データの誤りから誤字脱字まで、短期決戦でチェックしています=イラスト・澤田有希子
校閲記者泣かせのプロ野球ナイター。データの誤りから誤字脱字まで、短期決戦でチェックしています=イラスト・澤田有希子

目次

初の開幕先発! いやいや、実は「5年ぶり」でした――。プロ野球のシーズン中、新聞社のスポーツ面を担当する校閲記者は、締め切りとにらめっこしながら大量のデータと戦っています。ネットを駆使しつつ、意外なアナログツールが頼りになる場面も……。新聞社の校閲の姿をまんがと共に紹介する「こうえつ堂」。今回は「嵐のなか『全集中』で乗り切るスポーツ編」です。(朝日新聞校閲センター記者・小汀一郎)

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こうえつ堂

試合早く終わって!

プロ野球は「ナイター」が最多で6試合あります。試合終了はたいてい午後9時過ぎ。これは朝刊の締め切りが近づく、とてもドキドキする時間なのです。乱打戦や延長(今季はなし)になって試合が長引くと、点検の持ち時間が少なくなり、追い詰められていきます。

先日は、プロ野球の試合がなかなか終わらず、一部の結果が朝刊紙面に載らない地域もありました。

Jリーグも相次いで出稿され、手分けしますが、担当者は「全集中」で臨まなければなりません。

しかも、スポーツ記事は、確認に手間のかかるデータが満載。「A投手が5年ぶりの勝利」「B球団は2013年に並ぶワースト連敗」といった記録を、資料やネット検索を駆使して手際よくチェックしていく必要があります。

締め切りが迫る時間帯こそ、校閲記者の腕の見せどころ=イラスト・澤田有希子
締め切りが迫る時間帯こそ、校閲記者の腕の見せどころ=イラスト・澤田有希子

実録ヒヤリハット事例

データが盛りだくさんなのは、ほかのスポーツも同じ。実際にあったヒヤリハットを紹介すると……

いずれも、誤ったまま掲載されれば、後日、「訂正」記事を載せなければいけません。こうした「落とし穴」も、大忙しの夜の前に、もしくは並行して点検していきます。

間違った情報が記事になると「訂正」に…校閲記者にとって大事な短時間でチェックするスキル=イラスト・澤田有希子
間違った情報が記事になると「訂正」に…校閲記者にとって大事な短時間でチェックするスキル=イラスト・澤田有希子

秘密兵器〝切り貼り〟

ほかのニュース面とは違う、スピードや、大量のデータ確認が求められ、校閲自体がまるで、嵐の中のスポーツ競技のよう。「スポーツファンとして記事を楽しみたい」と思っても、その余裕はなかなかないのです(涙)。

Jリーグでは、totoやBIGといったくじのチェックも校閲の仕事。お金に関わるデータで、神経を使います。

ちなみに、プロ野球やJリーグ、大相撲は紙面の記録を切り貼りしています。後日、勝敗記録などをチェックする際に役立てるため。この切り貼りをたどった方が、ネット検索よりも素早く確認できるケースも少なくありません。

たとえば、大相撲で「無傷の10連勝は一昨年の九州場所以来」を点検する場合、ネットだと、各場所の千秋楽の星取表を一つずつ検索しないといけません。かなり時間がかかります。でも、これまでの千秋楽の星取表を切り貼りしているファイルを見れば、短い時間でチェックできるのです。

プロ野球で「今月3日以来となる2位に後退」を点検する際、ネットで素早く確認するのは難しい。しかし、日々のリーグ順位表を貼っているファイルを見れば、正しいかどうかすぐに分かるのです。

全ての記事の点検を終え、紙面はできあがった。次の校閲に備えた切り貼りもやった。そこで、ようやく後は片付けをしておしまい。でも、ぐったりして、さっさと片付ける気力や体力が、私には残っていないということも多いのです。

校閲記者の〝秘密兵器〟である「切り貼り帳」。その日あった試合の結果などを足して、一日の仕事が終わります
校閲記者の〝秘密兵器〟である「切り貼り帳」。その日あった試合の結果などを足して、一日の仕事が終わります
こうえつ堂

〈イラスト・澤田有希子〉校閲のマスコット「ルー」と四コマまんがの作画を担当。子育てをするかたわら、アニメーターとしても活動中。趣味はドラマや漫画鑑賞。

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