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コラム

アルビノの私は「異物」だった「正しい見た目」決める学校への違和感

大人の都合で子どもを支配する危うさ

学生時代、級友たちと異なる見た目により、居心地の悪さを感じてきたアルビノの雁屋優さん。大人が一方的に作った「校則」が、その感情を増幅させたといいます(画像はイメージ)
学生時代、級友たちと異なる見た目により、居心地の悪さを感じてきたアルビノの雁屋優さん。大人が一方的に作った「校則」が、その感情を増幅させたといいます(画像はイメージ) 出典: Getty Images

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肌や髪の色が薄く生まれる遺伝子疾患・アルビノの雁屋優さん(26)には、忘れられない記憶があります。学生時代、校則により、生徒たちの外見が規制されていたことです。自らは「例外」として指導対象にならなかったものの、髪を染めていた同級生が、教師に注意される様子を目の当たりにしました。頭髪が生来のものと示す「地毛証明書」制度など、「正しい見た目」という概念に基づき、大人が子どもの容姿を規定する例は、後を絶ちません。その判断は、決まりを定めた側の意向次第で、簡単に変わるものでもあると、雁屋さんは考えています。背景にある理由について、意見をつづってもらいました。

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金髪に染めている、あの子は「不良」?

最近、ある本を読んだ。今年8月に刊行されたばかりの、『見た目が気になる 「からだ」の悩みを解きほぐす26のヒント』(河出書房新社)。「見た目」にまつわる悩みを抱えた十代に、各界で活躍する大人たちが、生きやすくなるためのヒントを伝える内容だ。

26人の著者は、社会学者や漫画家など、それぞれに個性豊かである。生まれつき外見に症状があり、人生の色々な局面で苦労する「見た目問題」の当事者もいる。アルビノである私の心にも、響くメッセージばかりだった。

私自身、周囲との「見た目」の違いに、居心地の悪さを感じてきた一人だ。例えば、髪。今はミルクティーブラウンといった色合いだが、幼い頃はもっと色素が薄く、ブロンドに近かった。特に学生時代は、黒髪ばかりの同級生の中で、ひときわ浮いていた。

小学生の頃、大人たちの中には、私の髪色を「きれいな色だね」と褒めてくれる人もいた。ところが同じ人物の口から、「金髪は不良だ」という言葉が飛び出て、驚いたことがある。ファッションで髪を金色に染めていた、同級生に対する発言だった。

その生徒は、別に素行が悪かったわけではない。外見を除けば、ほかのクラスメイトと比べて、特段目立つ存在でもなかったと思う。にもかかわらず、「不良」とジャッジされていた。

もちろん、私が知らないところで、好ましくない行動をとっていた可能性はある。しかし仮に、本人の振る舞いとは関係なく、金髪であることがマイナス評価につながっていたとしたら、その判断は適切と言えるだろうか。

『見た目が気になる』の中では、社会学者の森山至貴さんが、「見た目」とその人自身を完全に切り離せるのか、考察している。ある人の人格と、「見た目」の印象が一方的に結びつくことで、その人の尊厳が傷つけられてしまう危険性は、常にあるのだ。

ファッションで髪を染めていた同級生は、教師から指導を受けていた(画像はイメージ)
ファッションで髪を染めていた同級生は、教師から指導を受けていた(画像はイメージ) 出典: Getty Images

校則は「子ども本位」でつくられているか

私が子どもの頃、周りの大人達は、「見た目なんか気にしている暇があったら勉強しなさい」と言った。そうして、子どもたちメイクやファッションを制限した。

私は幸か不幸か、メイクやファッションよりも活字に興味があり、大人に制限されるようなファッションをしたいとも思わなかった。ピアスは痛いと聞いていたので恐ろしく、今でも、ピアスの穴はない。

見た目なんか気にしている暇があったら、と言う割に、大人達は「見た目」にうるさかった。象徴的だったのが、私が通った中学校の校則だ。

制服の着こなしに始まり、髪の長さを制限したり、染髪を禁じたりと、身なりに関するものだけでも多岐にわたった。ただ、それでも、まだ「まし」な方だったと思う。

女子の髪型はおさげしか認めない。生まれつき色素が薄い髪も黒く染めなくてはならない。冬でも黒タイツの着用を認めない……。伝え聞いた他校の校則の内容は、いま思えばびっくりするようなものばかりだった。

こうした決まり事は、教育上の理由からつくられている。児童・生徒が自ら物事を考え、判断する力を育むために、人生経験が豊富な大人の手助けは不可欠だろう。社会性を養う上で、一定のルールのもと、集団生活を送る経験も大切だ。自立に向けた訓練の場として、学校を位置づけるなら、校則の必要性も理解できる。

ただしその細目は、あくまで「子ども本位」で定められるべきだ。例えば生来髪色が薄い私が、「黒染め」を強制されたらどうなるか。地毛が傷むのはもちろん、皮膚に異常が生じるかもしれない。中学時代、教師から染髪を命じられたなら、きっと反発しただろう。

大阪府では府立高校に在学中、茶髪を黒く染めるよう「指導」され精神的苦痛を受けたとして、元生徒の女性が訴訟を起こした。また沖縄県教育委員会は、頭髪が生まれつきのものと示すため、学校に提出する「地毛証明」が人権侵害にあたるとして、県立高に廃止を求める方向で検討している。

【関連記事1】地毛を黒染め「校則」強要訴訟、府に賠償命令 大阪地裁(朝日新聞デジタル)
【関連記事2】校則「地毛証明」廃止へ 県教委「人権侵害に当たる」と指摘 県立高校の校則調査(琉球新報デジタル)

校則が、本当に児童・生徒のためにつくられているか。「子どもを管理しやすくしたい」という、大人たちの意図が含まれていないか。これらの点は、何度でも問い直されなければならないはずだ。多様な「見た目」が、当たり前に存在する社会を目指すためにも。

ある都立高校の地毛証明書。「地毛が黒色以外であるため、地毛証明書の発行を申請します」と書かれている=2021年2月26日午後2時46分、池上桃子撮影
ある都立高校の地毛証明書。「地毛が黒色以外であるため、地毛証明書の発行を申請します」と書かれている=2021年2月26日午後2時46分、池上桃子撮影 出典: 朝日新聞

同じ「校則違反」でも、対応に差が出る危うさ

そしてこれは、頭髪に限ったことではない。

なぜ、女子がスカートで男子がスラックスを履くと決められているのか。
なぜ、男子がネクタイで、女子がリボンなのか。
そもそも、性別によって、着る服が決められることはおかしくないのか。

学校という場は、子どもの「見た目」をありとあらゆる面で、規定し過ぎているように思う。髪色や髪形を画一化し、性別によって決まった制服を着用させる。その規定は、本当に必要で、合理的なのだろうか。

もちろん、そこには子どものためを思って、という気持ちがあることも否定できない。学校ではよくても、就職などで社会に出たとき、不利になるようなリスクを背負わせるようなことはさせたくない、という配慮もあるだろう。

しかし、中学時代、私のブロンドを、学校側は問題視しなかった。一方、生まれつき髪の色素が薄い別の学生は、指導対象になっていた。同じ条件なのに、人によって、なぜか対応に差が出る。そこには、子どものためを思って、という理由だけでは説明できない根深さを感じる。

「染髪禁止(ほとんどの場合、黒髪でなくてはいけないと解釈できる)」という校則がある限り、ブロンドの私は、例外で、特別に存在を認められている、いわば異物だ。しかも運用する側の裁量で、その判断はたやすく覆る恐れがある。

制服の件も同じだ。割り当てられた性別に応じたデザインの服を着ることが当然視されるなか、異性向けの制服を着たければ、学校に「申請」し、「許可」をもらわなければならない。それが、例外で、特別だから、他の人にはいらない許可がいる。性別で服装を左右する校則は、性自認に悩む子ども達を傷つけるだろう。

こうして文章にしてみると、校則はあるべき「見た目」を規定するだけでなく、ややもすると支配につながりかねない危うさをはらむことに気付く。「ふつう」と異なる外見に向き合ってきた一人として、このような現状は、やはり改められなければならないと強く思う。

なぜ性別によって、異なるデザインの制服を割り当てられるのか――。雁屋さんの疑問は、その点にも向けられている(画像はイメージ)
なぜ性別によって、異なるデザインの制服を割り当てられるのか――。雁屋さんの疑問は、その点にも向けられている(画像はイメージ) 出典: Getty Images

「正しい見た目」を決めつけないために

今、『見た目が気になる』のような本が出版されたことそのものが、希望だと言える。他人の「見た目」を「こうあるべき」と規定する側の方がおかしいと、しっかり説明できる大人の主張が、世間で受け入れられやすくなった証拠だからだ。

他人の「見た目」に介入することに、もっと慎重であるべき、という考え方は極めて自然だ。ただ、油断してはいけない。「見た目」への介入が学校や職場など、あらゆるところで当然のごとく行われていることを考えると、折に触れて思い出さないと、その重大性が簡単に忘れ去られてしまう。

だから、もし今あなたが「見た目」に悩んでいるなら、希望を捨てないでほしい。そして「正しい見た目」を決めつけることについて、考え直すきっかけとして、『見た目が気になる』が広く読まれるよう望んでいる。

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