連載
#104 ○○の世論
災害の「危機感」高い地域と、そこまでじゃない地域 関東高めだが…
「3日分の備蓄」で差、単身の人も備えへの関心は…
9月は防災月間です。呼びかけを目にする機会が増え、備えを改めて確認する人も多いのではないでしょうか。朝日新聞社の世論調査で、災害への意識について尋ねると、災害への想像は働くものの、具体的な備えについては、エリアごとの違いが浮かびあがりました。(朝日新聞記者・植木映子)
東日本大震災から10年。災害は地震だけでなく、毎年のように豪雨による洪水や土砂災害が起こっています。今年の夏も、静岡県熱海市の土石流など、豪雨災害に各地で見舞われました。
「自分が生きている間に、自分の身に大きな自然災害が降りかかる可能性がどの程度あると思いますか」。昨年11~12月に実施した世論調査(郵送)で尋ねと、「ある」と答えた人は9割を超えました。「大いにある」40%と「ある程度ある」51%という内訳です。
2013年秋の調査で同じ質問をした際は、「大いに」37%、「ある程度」53%という結果でした。多くの人が何らかの災害に遭うリスクを感じながら暮らしている、という傾向は続いています。
地域差はあるのでしょうか。衆議院の比例ブロック別にみてみます。
「大いに」と「ある程度」を合わせた「可能性がある」と答えた人で見ると、9割前後の地域がほとんどです。
ここでは「大いに可能性がある」と思う人に割合に注目します。最も高いのが東京と南関東の47%、東海も45%と高めです。
一方、最も低いのは中国地方の29%。九州の33%も低めでした。
大きな自然災害といえば「地震」のイメージが強いからかもしれません。
関東や東海地方の人が感じる首都直下地震や南海トラフ地震のリスクほどには、中国・九州地方では、巨大地震への恐れは切迫していないのかもしれない。そんな背景を想像することもできます。
では防災の意識はどうでしょうか。
水や食料の備蓄はあるだけあるに越したことはありませんが、ひとまず救援が来るまで食いつなぐための「3日分」が一つの目安にされています。調査で、この3日分の水や食料を「備蓄している」と答えた人は43%、「備蓄していない」は54%でした。
地域別にみると、東京が55%と突出して高く、続いて南関東の50%でした。
いずれも「大きな自然災害の恐れ」を「大いに」感じている人が比較的多い地域です。
一方で中国は33%と最も低く、九州も34%と低めでした。
世帯人数別には、単身の人は「備蓄している」36%で、2人暮らし以上の人の44%より低めでした。筆者自身の感覚を振り返ってみると、同居人がいれば安全も気になりますが、1人暮らしだと「1人なら何とかなる」という考えもあるのかもしれません。
また、都市規模別にみると、
上記のような結果となり、人口が多い地域ほど「備蓄している」が多い結果となりました。
理由を想像すると、人付き合いの薄めな都市部の方が、それぞれの世帯で何とかしておかなくては、という意識が強いのかもしれません。
また、人の入れ替わりが多い都市部の方が、引っ越しの際などに、地域のリスクについて意識する機会が多いとも考えられます。
日本列島のどこにいても、いつ災害が起こるかわからない。9月はそのことを改めて考えるいい機会です。まず、自分自身の備えから、見直してみようと思います。
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