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#102 ○○の世論

横浜市長選、菅首相の支援はプラスだった? 自民支持層はバラバラに

無党派層の投票先、2位に田中康夫氏

横浜市長選に敗れ、支援者らに頭を下げる小此木八郎氏。後ろには「祈 必勝」と書かれた菅義偉首相からの「ため書き」がある=2021年8月22日、横浜市中区、恵原弘太郎撮影
横浜市長選に敗れ、支援者らに頭を下げる小此木八郎氏。後ろには「祈 必勝」と書かれた菅義偉首相からの「ため書き」がある=2021年8月22日、横浜市中区、恵原弘太郎撮影 出典: 朝日新聞

目次

8月22日に投開票された横浜市長選は、元横浜市立大教授の山中竹春氏が初当選し、菅義偉首相が支援した小此木八郎氏は山中氏に大差で敗れました。山中氏の勝因、小此木氏の敗因はどこにあるのか、出口調査の結果を詳しく分析してみました。(朝日新聞記者・四登敬)

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党総裁の意向も通じず

山中氏は立憲民主が推薦し、共産、社民も支援する野党候補でした。

一方、小此木氏は自民党の衆院議員で、国家公安委員長として菅内閣の閣僚を務めていました。ただ、自民が推進してきたカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致の中止を掲げたため、自民は小此木氏を推薦せず、自主投票に。一部の市議が現職の林文子氏の支援に回る分裂選挙になりました。

そんな中、横浜を地盤とする菅首相は、小此木氏を全面支援してきました。

自民支持層はどう動いたのでしょうか。

 

投票者のうち自民支持層は32%、立憲支持層は13%、無党派層は43%でした。

自民支持層のうち小此木氏に投票したのは38%にとどまりました。21%は林氏に、17%は山中氏に割れました。自民党総裁でもある菅首相の意向は、大半の支持層に通じていなかったことがうかがえます。

立憲支持層は75%が山中氏に投じていました。

そして無党派層の投票先は、山中氏が39%と最も多く、続いて元長野県知事の田中康夫氏に17%。小此木氏は、林氏や元神奈川県知事の松沢成文氏にも及ばない10%でした。小此木氏は無党派層からもそっぽを向かれます。

IR誘致反対層は山中氏に

選挙戦ではIR誘致の是非が争点の一つになりましたが、山中氏も小此木氏も「反対」を訴えていました。

出口調査で、IR誘致の賛否を尋ねたところ、反対が71%。反対する層で小此木氏に投票したのは20%でした。最も多かったのは山中氏の45%。小此木氏はここでも山中氏に水をあけられています。

一方、IR誘致に賛成の層では、41%が林氏に投票しました。

 

市民の関心は、IR以上に、感染拡大が収まらない新型コロナに移っていたようです。調査で「新しい市長に一番力を入れてほしい政策」を6つの選択肢をあげて尋ねると、「新型コロナ対策」が36%で最も多く、「IR誘致への対応」は11%でした。

そして「新型コロナ対策」を選んだ有権者のうち、46%が山中氏に投票していました。感染拡大の防止に取り組む菅内閣の閣僚だった小此木氏にはわずか19%でした。

菅内閣への逆風、地元でも

内閣支持率の低迷が続く中で、菅首相の支援は、小此木氏にプラスに働いたのでしょうか。

横浜市長選の投票者に、菅内閣を支持するか尋ねると、支持率は34%、不支持率は63%。菅首相の地盤、神奈川2区(横浜市西区、南区、港南区)でも不支持率が55%に達し、支持率は39%でした。

菅内閣への逆風は、菅首相の地元でもさほど弱まっていないことが分かります。

そして山中氏は内閣不支持層では48%の支持を集め、小此木氏の10%に大きく差をつけていました。

 

菅内閣への逆風は地元でも弱まらず、支持層もまとめきれず、新型コロナ対策への期待は野党系の候補者に集まった――。出口調査からは、政権への強い不満がみてとれます。

衆院議員の任期満了が近づくなか、菅首相や自民党はこの状況を断ち切って立て直せるのか、野党が今回の市長選の経験を総選挙に向けた態勢作りに生かせるのか、注目していきたいと思います。

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