連載
#101 ○○の世論
菅首相の続投、本当にしてほしい? 自民支持層の〝シビアな評価〟
世論調査で浮かび上がった厳しい視線
「しっかり続投していただきたいと思う声の方が、国民の間にも党内にも強いんではないか」。自民党の二階俊博幹事長が、自民党総裁としての任期満了を9月に迎える菅義偉首相について、そう持ち上げたのは8月3日のことでした。ネットでは、これに疑問をはさむ向きも。そこで朝日新聞社の全国世論調査(電話=8月7、8日実施)で聞いてみました。首相の続投支持って、どれほどなのか。(朝日新聞記者・磯田和昭)
「菅首相の自民党総裁としての任期は9月末まで」だと示したうえで、総裁に再選して首相を続けてほしいかどうか聞きました。
「続けてほしくない」が60%と多数で、「続けてほしい」(25%)を大きく上回りました。
二階幹事長の「国民の間にも」発言は、菅首相の無投票再選に道筋をつけようと、党内を威圧するのに主眼があるとみるべきでしょう。世論が本当に続投支持に傾いているのか、海千山千の二階幹事長に見えないはずがありません。
この質問への回答でむしろ興味深いのは、「自民党を支持すると答えた人たち」(自民支持層)に限ってみた数字です。なんと、自民支持層で「続けてほしい」が44%、「続けてほしくない」が42%と真っ二つに割れているのです。
自民党は今回、党所属国会議員だけではなく、党員・党友も含めた、いわゆる「フルスペック」の総裁選をする方向です。
世論調査による自民支持層の数字に、党員・党友の意向がどのくらい反映しているのかは、定かではありません。
でも万が一、再選に意欲を見せている菅首相に、有力な対抗馬が立った場合、すんなり再選とはいかないのではないか――。そんな波乱も予感させる調査結果となりました。
今回の調査では、「菅首相の新型コロナウイルスに取り組む姿勢」について、信頼できるかどうか質問しました。
「信頼できない」という回答が66%を占め、「信頼できる」という人は23%とわずかでした。ここでも自民支持層にしぼって見てみると、「信頼できない」が47%で、「信頼できる」(42%)よりやや多い結果となりました。
調査直前には、コロナで入院できる患者を「重症者と重症化リスクの高い人」に制限するともとられる方針を、菅首相自らが関係閣僚会議の場でいったん表明。その後、厚生労働省が「中等症も原則入院」と事実上、修正する一幕もありました。
金融機関や酒類販売業者を使って、飲食店に「禁酒令」を徹底しようとして反発を招いたのに続き、与党からも批判が噴き出しました。こうしたことが、首相への「信頼」を押し下げている可能性があります。
自民支持層の厳しいまなざしは、新型コロナウイルスのワクチン供給の問題でも見てとれます。
「ワクチンを国民に行き渡らせる政府の取り組み」が順調だと思うか、それとも遅いと思うか聞きました。「遅い」という答えは、自民支持層で63%と、全体でみた73%と大きな違いはありませんでした。
首相を続けてほしいかどうかは、継続して質問はしていないので、自民支持層の動きは、この質問だけからはわかりません。そこで、今年に入ってからの自民支持層の内閣支持、不支持の推移を見てみました。
すると、支持率は6~7割台だったのが、8月に初めて6割を切ったことがわかります。不支持率も今年、最も高い27%に上がっています。
五輪という「宴」のあと、菅首相は「ワクチン1本足打法」ともいわれるほど、接種進展に注力し、局面転換をはかることになるでしょう。自民支持層の離反をいかに抑えるかは、今後の政局の行方を左右する大きな要素になりそうです。
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