連載
#100 ○○の世論
五輪で印象に残った競技は? 開催前は〝無名〟だった種目が急上昇
トップの卓球、女性の人気が後押し
東京五輪で最も印象に残った競技は何ですか? 朝日新聞社が閉幕間際に世論調査で尋ねると、五輪前のチケット関心度とはひと味違う異なる思いが浮かび上がりました。メダルをとった選手のコメントだけでなく、テレビ中継の解説も話題になった東京五輪。調査結果を分析してみると――。(朝日新聞記者・植木映子)
今回の結果を分析する前に、2年前の調査を振り返ってみます。
2019年5月18、19日に行った世論調査(電話)で、「会場で一番見てみたいオリンピック競技」を聞いています。当時はコロナ禍の前で、チケットの抽選販売の受け付けが始まった頃でした。
トップは陸上(マラソンを含む)の24%で、水泳が9%と続きます。体操と「野球・ソフトボール」が8%と並び、サッカーは7%でした。この調査では、公式の競技分類にのっとっています。
6位以下は、柔道4%、テニス、バレーボール、バスケットボールがそれぞれ3%、卓球2%、バドミントン、ゴルフが1%ずつでした。
「会場で観戦」と尋ねているので、オリンピックスタジアムで行われる陸上に人気が集まった部分もあるかもしれません。日本のメダルが有力視されていた体操や野球・ソフトボール、柔道には一定の人気があり、サッカーやバスケ、バレーなど競技人口が多いスポーツも、楽しみにしていた人が多かったことがうかがえます。
それから2年がたち、無観客開催となったオリンピックは、もっぱらテレビでの観戦となりました。
8月7、8日に行った世論調査(電話)で、「最も印象に残った競技」を、自由回答で一つだけあげてもらうと、トップは「卓球」の17%でした。
卓球では、混合ダブルスで水谷隼選手と伊藤美誠選手のペアが中国を破り、五輪の卓球では史上初の金メダルに輝くなど、団体も合わせて計4個のメダルを手にしました。
女性の22%の方が男性12%より高いのも興味深い数字です。
続いて柔道の16%。日本の「お家芸」とも言われ、今回は過去最多の金メダル9個を獲得しています。連覇を遂げた男子73キロ級の大野将平選手や、兄妹同日金メダルに輝いた阿部一二三選手(男子66キロ級)と阿部詩選手(女子52キロ級)の活躍も話題になりました。
3位の野球(12%)と4位のソフトボール(6%)は3大会ぶりの競技復活で、ともに期待に応えた金メダル。いずれも男性が女性より「印象に残った」と答えた割合が上回りました。4位は6%で、陸上が並んでいます。
2年前の「会場で見たい競技」と、大会後の「印象に残った競技」は、質問の内容も時期も異なるので、単純に比較することはできません。
ただ、テレビ観戦だから、そして日本が活躍したから、注目度が大会前より一気に高まった競技がある。そういった傾向はうかがうことはできます。
この後も、今回オリンピックで日本が活躍した競技が相次ぎます。
サッカーは5%、次いでスケートボード、体操、バスケットボールがいずれも4%で並びます。水泳は3%でした。
体操は橋本大輝選手の男子個人総合・鉄棒のダブル金メダルなどに沸き、バスケットボールは最終日に女子が銀メダルの快挙を達成しました。
その中でも、2019年調査の「会場で見たいか」質問では、ほとんどの人がその名を挙げなかったスケートボードが、並み居る伝統・人気競技の中で上位に食い込んだのが目を引きます。
年代別にみると、30代では9%、40代は8%の人が「スケートボード」と答え、ほかの年代より高めでした。
今回の東京五輪から新しく競技に追加されたスケートボードでは日本勢が躍進し、男女4種目のうち3種目で金メダル。女子ストリートで優勝した13歳の西矢椛選手は、日本勢の最年少金メダリストとしても注目されました。
さらに、スケートボードでは「ゴン攻め」解説も話題になりました。
プロスケートボーダー瀬尻稜選手がテレビ中継で繰り広げたテレビ中継での解説は、「やべえ」「ビッタビタでしたね」と、独特かつ飾らない言葉遣いで、SNS上を中心に「わかりやすい」「愛着を感じる」と評判に。
現在、筆者のまわりでも「ゴン攻め」が絶賛流行中です。
オリンピックでは、こうした「場外」の話題も、注目度を押し上げる一つの要因になるのかもしれません。
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