連載
#99 ○○の世論
夏休み「自粛」するけど…世論調査に現れたGWからの変化
「今年こそは」諦めた人たちの胸の内
コロナ下で迎えることになった2度目の夏休み。東京では、お盆も、緊急事態宣言の期間が続きます。夏休みの過ごし方について、世論調査で尋ねてみると、全体としては自粛傾向が続きつつも、ある傾向がみられました。(朝日新聞記者・植木映子)
「帰省や旅行を計画していますか」
全国世論調査(電話)では昨年から3回、こんな質問をしています。
最初は2020年11月調査。年末年始に帰省や旅行を「計画している」11%、「計画していない」88%でした。調査時期は政府の観光支援策「Go To トラベル」の実施中でしたが、それでも大半の人が遠出をためらっていました。
ゴールデンウィーク(GW)について尋ねた2021年4月調査では、「計画している」6%、「計画していない」93%と、さらに自粛ムードが高まりました。調査時点で、緊急事態宣言が出されている地域はありませんでしたが、感染者数のリバウンド傾向が続き、不安が広がっていました。
夏休みはどうでしょうか。7月17、18日に実施した調査で聞くと、「計画している」12%、「計画していない」87%でした。依然として9割近くの人が、帰省や旅行はこの時点で考えていない、と答えました。
昨年の夏休みの時期も、政府や自治体は「帰省や旅行は控えて」と呼びかけていました。調査時点は、東京に4度目の緊急事態宣言が出た直後で、その期間はお盆も含みます。「今年こそは」との思いを諦めた人も多いのかもしれません。
GWの予定では、自粛の傾向が強く出たこともあり、年代差や男女差はほとんどありませんでした。
今度の夏休みについては、年代が上がると「計画している」が減っています。これは、年末年始について尋ねた昨年11月調査と同じ傾向でした。
夏休みの帰省や旅行を「計画している」は18~29歳の23%、40代の17%が比較的高く、60代は7%、70歳以上は、わずか6%でした。
高齢層は、ワクチン接種が比較的進んでいるとはいえ、重症化する不安がやはり大きいのかもしれません。さらに、帰省を受け入れる側が多く、コロナに関係なく帰省は「計画していない」人が多い可能性もあります。
男女別にみると、「計画している」は男性15%が女性の10%より高い結果となりました。これも、年末年始についての調査と同じで、女性の方が男性より慎重な傾向があるようです。
また、帰省では、都市部→地方への移動がメーンになります。そのためか、東京では、緊急事態宣言下にもかかわらず帰省や旅行を「計画している」が20%と、全体の12%より高い結果となりました。
年末年始の時も、「計画している」が全体11%に対し、東京17%と、やはり東京が高めでした。
全体として、長期休暇にお出かけをためらう傾向は変わりません。その一方で、GW時にはいったん影を潜めていた年代差や男女差が、今回7月の調査では復活しました。
政府の新型コロナウイルス対策分科会の尾身茂会長は、この夏が「新型コロナとの闘いの山場」として、帰省や旅行などの都道府県間の移動を控えるように求めました。
その一方で、「人々が緊急事態(宣言)に慣れ、飲食店も『もう限界だ』との声も聞こえる中で、人々の行動制限だけに頼るという時代はもう終わりつつある」との認識も示しました。
新型コロナの感染者数が収まる気配を見せない中、もうすぐ、お盆がやってきます。
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