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ネットの話題

「お寿司にしか見えない」深海生物、実は世界初の激レア展示だった

「名前すらわからない」手探りの飼育

死ぬまで、名前すら分からないという「ウオノシラミ属の一種」=アクアマリンふくしま提供
死ぬまで、名前すら分からないという「ウオノシラミ属の一種」=アクアマリンふくしま提供

目次

深海の生き物の展示を紹介した水族館の投稿が、「泳いでるお寿司にしか見えない」とツイッターで話題です。この生物の正体と、魅力について聞きました。

既視感が……

話題になっているのは、福島県いわき市小名浜にある水族館「アクアマリンふくしま」の公式ツイッター(@aquamarinestaff)が投稿した2枚の画像です。
未知の深海生物、白色のヒロメオキソコエビとウオノシラミ属の一種を展示を始めました。担当者はかわいくてしょうがないようで、「ほら、この角度いいでしょ!」とたくさん写真が送られてきますが、多くの職員の理解は得られず。。。

画像にはそれぞれ、白い生物と、だいだい色の生物が写っています。

この投稿には、「なんだろう、既視感が……」「おいしそう」「寿司にしか見えない」「お寿司が泳いでいる」とのコメントがつき、サーモンやエビの握り寿司の画像が添付されるなど、1万件以上のいいねがつきました。

名前も分からない

アクアマリンふくしまで、この深海生物を担当している日比野麻衣さんに話を聞きました。

話題になったのは、どちらも深海に住む甲殻類でした。

「エンガワ」などと揶揄された白い生物が「ヒロメオキソコエビ」で、ヨコエビの仲間だそうです。2017年に初めて3個体が発見されて、新種記載されたばかり。それ以降も、発見された例はなかったそうです。「ましてや、生きている状態で展示したのは、『世界初』だと思います」

ヒロメオキソコエビ=アクアマリンふくしま提供
ヒロメオキソコエビ=アクアマリンふくしま提供

そして「サーモン」や「エビの握り寿司」などと比較された、だいだい色の方については「『ウオノシラミ属の一種』とまでは分かったのですが、それ以上は死後、解剖しないと同定ができないのです」と、まだ、名前すら分からないと言います。新種なのかもしれないし……謎が多い。

ウオノシラミ属の一種=アクアマリンふくしま提供
ウオノシラミ属の一種=アクアマリンふくしま提供

どちらも、北海道の知床羅臼沖800-1200mで、キチジ(キンキ)など深海の魚を探していた漁業者の網に、偶然かかったものでした。「漁業者の方のご協力があって、生きたまま展示ができた希少な生き物です」

落ち着ける環境探して

珍しさゆえ、生態は謎に包まれており、飼育方法も「手探り」になります。

オキソコエビは、深海で撮影された映像などから「魚の肉を食べる」というのは何となく分かっています。ただ、「水族館ではまだ食べてくれていません」。

深海の生物なので、頻繁にエサを食べていた訳ではないと推測していますが、気が気ではありません。「まずは落ち着く環境を作って、エサを食べてほしいです」

住んでいた環境に近付けるため、水温は3度前後の0.5度単位で調整して「適温」を探しています。閉館後は真っ暗な深海に近付けるべく、ふたをかぶせて光を遮断します。

しかし6月、7月には、飼育していたヒロメオキソコエビ2個体が、死んでしまいました。気が抜けない日々が続きます。


でも、嬉しかったことがありました。「ガラス海綿を置いてみたら、中に入ってぼーっと、休んでいました」

「自然界ではどういう行動しているか、全く分からないので、なるべく本人が落ち着く場所を見つけてくれたらいいなと思います」

海綿で休むオキソコエビ=アクアマリンふくしま提供
海綿で休むオキソコエビ=アクアマリンふくしま提供

「お寿司に見える」への正直な思い

「もともと、足が多いタイプの生き物は苦手だった」という日比野さん。ですが、「情報がない分、日々観察して情報を収集するうちに、だんだん、ぼーっと泳いでるときにかわいく見えたり、ぱっと動いた時に目があったような気になったりしてきました」。

「この角度が、一番、美しく見える!」という写真を撮って、広報に提出したものが、ネットで「お寿司に見える」と話題になったそうです。

全神経を注いで飼育にあたっている日比野さんどう思っているのでしょうか。

「単純に『言われてみれば、見えるな』『他の人にはそう見えているのか!』と驚きました。どういう形であれ、本来、名前や存在すらも知らない人がものすごく多い中で、『こういう生き物がいる』と知ってもらえたのがうれしいです!」


寿司っぽい見た目から、「おいしそう」とのコメントもあったことをおそるおそる伝えると、「どちらも甲殻類なので、ゆでれば『エビ』のような味がするはずです。おいしいかはわかりませんが」と答えてくれました。

目立たない生き物だけど

どちらも3~4センチの目立たない深海生物。どんなに「世界初」「珍しい!」とうたっても、展示は素通りされたり、存在は見逃されがちです。

日比野さんは、こんな願いを持っていました。

「水族館には、多くの人が好む生き物や、目立つ生き物だけじゃなく、たくさんの生き物がいます。海はさらに広く、陸の人間にとっては、出会える機会が限られた生物がたくさん住んでいます」

「世の中には、まだまだ知らない生き物がたくさんいるということを知ってもらって、そこから、お気に入りの生き物を見つけて頂ければ、これほど嬉しいことはありません」

オホーツク海などの冷たい親潮海域の生き物を展示している「親潮アイスボックス」のコーナーに、ヒロメオキソコエビとウオノシラミ属の一種が展示されている=アクアマリンふくしま提供
オホーツク海などの冷たい親潮海域の生き物を展示している「親潮アイスボックス」のコーナーに、ヒロメオキソコエビとウオノシラミ属の一種が展示されている=アクアマリンふくしま提供
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