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子どもとコロナ〝2度目の夏休み〟の注意点 一番多いのは家庭内感染
新型コロナが流行してから1年以上経ち、子どもたちは再び夏休みを迎えています。ワクチン接種が進む一方、変異株の流行が深刻になっています。子どもを持つ親はどんなことに気をつけたらいいのでしょうか? 読者の皆さんから身近な疑問や困りごとなどを募集する朝日新聞の企画「#ニュース4U(For you)」に寄せられた質問から、子どもへの感染対策について、専門家の話を聞きました。(withnews編集部=橋本佳奈、朝日新聞記者=山根久美子 )
今年3月、浜松市の放課後児童会(学童保育)で、変異株 (アルファ株)のクラスター(感染者集団)が発生しました。最初に職員3人の感染が相次いで判明し、児童会は休業。その時点で利用していた1~3年の児童41人は無症状で、保健所の検査でも濃厚接触者とされませんでした。しかし、「保護者が安心できるように」と、41人全員をPCR検査。結果、児童7人の感染がわかりました。
浜松市教委の担当者は「まさかと思った」と振り返ります。日頃から感染対策は万全にしていたつもりでした。出入り口には消毒液を置き、マスクの着用も徹底。健康状態に不安のある児童は来ていませんでした。友だちとは距離を取ることや、タッチは控えることなども常に呼びかけていました。ほかに学校の教職員ら10人の感染も判明しました。
その後、更に対策に力を入れました。専門家の助言で、マスクを隙間なく密着して着けること などを4月、市内の全小中学校と放課後児童会に通知しました。以降、市内では子どもが集まる施設でのクラスターは報告されていません。
市教委によると、7人の児童のうち4人は無症状、3人は後に微熱や倦怠感などを訴え軽症と診断されましたが、全員回復し、今も元気に学校に通っているといいます。
厚生労働省の資料によると、今年7月14日時点の国内の陽性者数のうち10歳未満は3%、10代は8%。国内で変異株の感染者が初確認されたのは昨年12月25日ですが、1カ月前の11月25日時点では10歳未満は2%、10代は5%でした。
20歳未満の感染者数は増える傾向があります。厚労省は取材に対し「変異株は全世代で感染しやすい。感染しにくいとされていた子どもにも、他の世代と同じように広がっている」と分析しています。
変異株の感染拡大が懸念される中、子どもがいる家庭や、集団行動をする学校で気をつけるべきことは何でしょうか。医療法人社団医聖会学研都市病院(京都府精華町)の小児科医で、普段から新型コロナ患者をみている渡部基信さん(56)に聞きました。
記者
渡部さん
その分、手洗いやうがいの徹底をしてください。小学生以上の子ども達については、感染予防にマスクを活用して下さい。コロナワクチンは優れていますが、予防効果100%という訳ではありませんので、ワクチン接種を受けた場合でも、引き続きマスクや手洗いなど基本的な感染対策を行うことが大切です。
記者
渡部さん
小児の感染対策は、まず大人がコロナを家庭内に持ち込まないことが一番です。経験した成人のケースでは、多くは会食を通じて感染していました。いろいろな人と会食すると、それぞれの人の状態が分からないので、感染のリスクは高くなります。職場の感染対策が万全であったとしても、オフのときは誰しも気が緩みがちで特に注意が必要です。
さらに子どもを新型コロナウイルス感染から守るためには、周囲の大人たちの新型コロナワクチン接種も重要と言えるでしょう。
記者
渡部さん
最近は飲食店や宿泊地も感染対策にかなり気をつけていますが、人混みに行けば感染リスクはあるということを、十分考えて行動してください。
旅行や帰省をする際は、行く前に体調管理をしっかりできるよう、日程を組むときから無理のないように計画してください。
記者
渡部さん
学校生活では、校外に出る行事に気をつけてください。特に、修学旅行や遠足などは、色々な所に移動することで、不特定多数の人と接することが増えるため、感染のリスクはあります。できるだけ人と密にならない場所、自然と親しむ等の方がいいと思います。
行事すべてを中止するのは難しいので、感染が多い地域を目的地にするのは避けたほうが良いと思います。さらに、活動グループの人数を減らし、近距離で対面式の会話や会食は避ける、また参加する人の健康状態を前もって把握するなどの対策が必要です。
また、症状が出たらすぐに申し出るのが大切です。行事に向けて、無理をしてしまう人が多いと思いますが、自分から休む、というのを申告しやすい環境を作るのが大切です。たとえばリモートを導入するなど、休む人への企画も考えておくことが必要だと思います。
ワクチン接種が全国で進んでいます。子どもへの接種をめぐり、様々な意見が出ています。厚労省は、6月1日、接種対象を「接種の日に満12歳以上」と改めました。
現在国内で接種できるワクチンは、米ファイザー社製、米モデルナ社製の2種類。ファイザー製の接種対象は元々16歳以上でしたが、海外での臨床試験結果を踏まえ6月から拡大し、既に12~15歳への接種を始めている自治体もあります。モデルナ製の対象は、元々18歳以上でしたが、厚生労働省の専門部会は19日、12歳以上に引き下げることを決めました。厚労省は近く、公的接種で使えるようにするといいます。
ワクチンに詳しい川崎医大の中野貴司教授は「集団生活の場や基礎疾患のある子どもを守るためには、子どもへのワクチン接種は必要」とした上で、「有効性と安全性は使ってみないとわからない事項もある」とも話しています。
「体格だけでなく、臓器や免疫も大人に比べて未成熟の子どもには、大人では起こらない副反応が出ることがあります。年齢で線引きするのは難しい」としています。
接種するか迷っている人がいる現在のような状況で、中野さんが強調するのが情報の大切さです。
「結果的に接種するにせよ、しないにせよ、その人にとって判断の基準となるような情報を、丁寧に伝えていくことが重要です」
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