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#13 #今さら聞けない子どもの安全

赤ちゃん用パンがのどに詰まり…死亡事故も 「一口サイズ」のリスク

事故が起きた商品。10カ月の男児が亡くなった当時、左の商品には「10ケ月頃から」と表示があった。事故を受け、表示を取りやめた=国民生活センター提供
事故が起きた商品。10カ月の男児が亡くなった当時、左の商品には「10ケ月頃から」と表示があった。事故を受け、表示を取りやめた=国民生活センター提供

目次

市販の小さなパンを食べた赤ちゃんが窒息する事故が立て続けに起き、昨年3月の事故では生後10カ月の男児が死亡しました。調査した国民生活センターは、一口でほおばれることや水分量が少ないことが問題だと指摘しています。子どもがパンを食べるとき、どんなことに注意したらいいのでしょうか。「子どもの安全」の専門家に聞きました。

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身近な一口サイズのパンで事故 死亡例も

乳幼児向けの一口サイズのパン「かぼちゃとにんじんのやさいパン」(カネ増製菓)を1歳未満の赤ちゃんが喉に詰まらせる事故が昨年と今年2件立て続けに起こりました。1件目の事故では、昨年3月に沖縄県で生後10カ月の男児が丸ごと口に入れ窒息し、死亡しました。いつもは男児が自分でかじって食べることができていたといいます。今年6月には静岡県で11カ月の男児が詰まらせましたが、命に別条はなかったといいます。事故は、朝日新聞でも取り上げられました。

この一口サイズのパンは、記者も子どもが小さい頃によく食べさせていました。赤ちゃん用品店のネット通販でも人気の商品で、身近だっただけに怖さをおぼえました。
賞味期限も長く、袋に複数入っているので持ち歩きができ、1~3歳ごろまで与えていました。確かに、味見をしたときに「ぱさぱさしている」という印象でした。記者の子どもも唾液だけではやわらかくするのが難しいようで、飲み物も一緒に飲んでいました。

パンの大きさとパッケージ
パンの大きさとパッケージ 出典:国民生活センター

専門家「危険な水分量、大きさの数値公開を」

国民生活センターは、今回事故の起きたパンの調査で、人工唾液(だえき)の中で5分間、かき混ぜる実験をしました。
その結果、形状は保たれたままで、水分量は食パンの半分ほど。類似品に比べて人工唾液の吸収スピードが15~20倍速いという結果を発表しました。

朝日新聞の記事によると、メーカーは対応策として、今年2月から「1歳頃からご利用いただけますが、月齢はあくまで目安」などとパッケージに記載し、さらに来年1月以降、パンを軟らかくし、口の中に丸ごと入らないよう大きくするとしています。一方、小児科医で子どもの傷害予防に取り組むNPO「Safe Kids Japan(セーフキッズジャパン)」の理事長も務める山中龍宏さんは「同じ商品で何度も事故が起きている場合は、粘着度や水分量など科学的な分析結果や、材料を含めたレシピを公開するべきです」と指摘します。
 「『何歳未満に与えるパンには何%以上の水分量が必要』と、乳幼児が食べるパンの適切な数値の基準を明示することで、この商品以外にも生かすことができ、結果的に事故を減らすことにつながります」と提案します。

今回の商品に限らず、ふだんパンを与えるとき、どんなことに注意したらいいのでしょうか。
国民生活センターは「小さくちぎり、飲み込むまで目を離さないで」と呼びかけています。京都府の保育園で保育園長を務め、神戸常盤大学非常勤講師の松野敬子さんは、「たくさん口に入れてしまうのは危険です。きちんとかんで飲み込んだのを見てから次の一口を与えてください」。また、パンの水分が足りないからとお茶を飲むときにも注意が必要だといいます。「お茶で食べ物を流し込むことが習慣化してしまうと、噛まずに飲みこむ癖がついてしまいます。まずは、しっかり噛むことが大切です」と指摘します。

窒息事故防止・食材や切り方の注意点
窒息事故防止・食材や切り方の注意点 出典:朝日新聞デジタル

大きくなっても注意 小学生も事故

パンによる窒息事故は小学生でも起きています。
今年7月には、新潟県の小学5年生の男児が、給食の米粉パンをのどに詰まらせ、数日後に亡くなりました。Safe Kids Japanの山中さんは、「パンは唾液を含むと粘着性が高くなります。成長しても窒息する恐れはあります。親や先生が、子どもの食べているところをずっと見ることも難しいです」と話します。Safe Kids Japan は7月、子ども向けに安全な食べ方を呼びかける動画を作成。「はひふへほ」の文字を使った標語で注意喚起しています。

出典:窒息予防の「は・ひ・ふ・へ・ほ」(Safe Kids Japan)から

窒息予防の「は・ひ・ふ・へ・ほ」

:早食いはしない

:ひと口でほおばらない

:ふざけない

:ぺちゃくちゃしゃべらない

:ほうり上げて食べない

今回の取材をきっかけに、記者も子どもの食べ方を注意してみていこうと気持ちを新たにしました。

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