お金と仕事
澤穂希さんの〝後継者〟岩渕真奈選手が語った「自分らしい10番」
五輪で海外勢と対戦「そこまでの差はない」
日焼けした肌に、短めの髪。身長156センチの細身の体格で、世界を舞台に戦うのは、女子サッカー選手の岩渕真奈さん(28)です。15歳で日本代表に選ばれ、2021年5月にはイングランドの女子サッカーリーグの強豪「アーセナル・ウィメンFC」への移籍を発表しました。東京五輪開催を控えた6月末、初の著書『明るく 自分らしく』(KADOKAWA)を上梓。タイトルにもある「自分らしく」という言葉を何回も口にする岩渕さんですが、今はチームの結果を1番に考えているそうです。7月21日に第一節を迎える中、東京五輪で澤穂希さんと同じ10番をつける意気込みを聞きました。(ライター・小野ヒデコ)
岩渕真奈(いわぶち・まな)
結構早い段階から、アーセナルへの移籍の話を耳にしていました。当時所属していた、アストン・ヴィラLFC(アーセナルと同じ1部リーグ所属)では物足りなさを感じていたいので、素直にうれしかったです。今回アーセナルからオファーがあったのも、アストン・ヴィラでプレーをしていた姿を見てくれた結果だと思うので、イギリスに来てよかったと思いました。アストン・ヴィラのチームメイトも「強いチームに行った方がいいよ」と言ってくれる人が多かったです。
チームメイトの中には、過去にいっしょにプレーをしたことがある選手が何人かいました。
監督は最近変わったので、どんな人かまだわかっていません。でも、アーセナルという歴史あるクラブが、長年継続しているサッカーのスタイルはそんな簡単に変わらないと思っています。
サッカー人生において、背のびはしたくないと思っています。いくら強かったり有名だったりするチームでも、試合に出られなかったら行きたいとは思いません。もちろんチャレンジは必要ですが、チャレンジの「幅」というのは自分の中で持っているつもりです。
あと、移籍先のチームメイトのバランスも意識しますし、何よりタイミングは重要だと思っていて。
サッカーはひとりではできません。本当に自分のことを必要としてくれるチームに行きたいと思っています。アーセナルに関しては、行きたかったチームですし、自分がチャレンジできるレベルに合っているとも思うので、良いタイミング、良い時期に、良いチームに声をかけてもらったと思いました。
日本代表の監督が、佐々木則夫監督から、高倉麻子監督へ変わったときくらいから、少しずつ変わっていきました。若い時は、試合の結果よりも自分が良いプレーをすることの方が重要でしたが、今はチームの結果が1番だと思っています。
本を書いて良かったのは、自分自身の整理になったこと。「こうだったから、こうなった」という、これまでの出来事を振り返る一つのきっかけになりました。こうして取材の中でも、話の引き出しが増えたと感じています。
そういうことも含めて話して良かったと思う自分がいます。良いことも、そうでないことも話をしていますけど、書いて悪かったことはないなと思っています。
サッカーをやりたかったので「男の子ばかりだからやめよう」とは思いませんでした。それ以上にサッカーが楽しかったんです。
ドリブルで人を抜くのも、点を取れるようになるのも、リフティングが何回できたとか、1回増えただけでもうれしかった。仲間といっしょに蹴るのも楽しかったですし、好きなサッカーをするのは、誰とでもいいという感じでした。
小学校の時に入っていた関前SCは良いチームでしたし、振り返ると、小学校時代から今まで、本当に人に恵まれているなと思っています。
人を嫌いになったら、自分も嫌われると思っています。人間なので、「合う、合わない」はありますが、自分は人を嫌うことはしたくないなと思っています。
サッカーにおいても、プレースタイルや戦術との相性はあります。でも、人もサッカーも、相手に対して近づく努力はしているかなと思います。その中でも、「自分は自分」の感覚は大切にしています。
昔から我は強い方だと思いますが、海外の人に触れ合った経験は大きいです。海外の生活や、海外のチームに所属することで、主張することの大切さを感じました。今までの経験があって、今の自分がいると思います。
率直にうれしいです。自分の中で、「目指すところは澤さんみたいな人」との理想像があるので。けど、私は澤さんを継ぐためにサッカーをしている訳ではありません。
この前、日本代表のユニフォームにおいて、10番をつけることが決まりました。10番は日本代表だった澤さんが長らくつけていた番号ですが、同じ番号を受け継ぐことに対して、そこまでプレッシャーに感じてはいません。ただ、継続して自分らしくいられたらいいなって思っています。
今はないですね。今後チャレンジしなくなったり、人生でもサッカーでもゴールに向かわなくなったり、仕掛けなくなったりしたら、自分じゃないかなと思います。
ありますよ。でも、「がんばろう、サッカーしかできないし」って。結局、日々練習している中で、「今日もがんばるか」っていう気持ちにさせてくれるのもサッカーなんです。
時には練習が面倒くさくなったり、怪我をした時とかは「もうイヤだな」と思ったりすることもありますけど。サッカーを取ったら何もなくなる人間かなと思うので、「とりあえずがんばろう」って思います。
何やっているかとか想像つかないですけど、たぶん、そうなのだと思います。小さいころ、ピアノやバスケットボールなどをしてきましたが、サッカーが1番好きでした。たまたまサッカーと出会っただけで、もしサッカーに出会わなかったとしても、好きなことを、自由にやって、楽しくやっていると思います。
1番の目標は、自分が活躍し、チームが勝つことです。それを目指さないといけないですし、今はそれを目指せる場に自分がいると思っています。
長年いっしょにやってきた選手が多いので、チームメイトのことは理解はできているつもりです。日本人選手は欧米選手に比べて体格の差は確かにありますが、そこまで選手個人の差があるとは思っていません。
昔、「自分が活躍すればいいや」って思っていた時とは立場の違いはあると思っていて。理想は自分がチームを勝たせられるようになることなので、そこはしっかり目指したいなと思っています。
『明るく 自分らしく』
著者:岩渕真奈
発行:KADOKAWA
価格:1,650円(定価)
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