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グルメ

コロナ禍のパン屋〝ご近所のお総菜〟使った助け合いのコラボサンド

午後には売り切れの人気商品に

「onkä」が販売する〝ご近所のお総菜〟を使った助け合いの「コラボサンド」
「onkä」が販売する〝ご近所のお総菜〟を使った助け合いの「コラボサンド」

目次

緊急事態宣言に外出自粛要請……。大きなダメージを受けている飲食店ですが、テイクアウトがメインのパン屋は、影響があまりなかったことを知っていますか? 経堂にある「onkä(オンカ)」も、例年と同じような日々を過ごしていました。それに反して、街からは人気が少なくなり、厳しい状況を伝えるテレビニュースなどを見て、少しでも力になりたいという気持ちから、コラボサンドを発案しました。(ライター・安倍季実子)

ニュースや街の様子から感じたギャップ

「onkä」は、経堂農大通り商店街を行った少し先にあります。

「この場所にonkäがオープンしたのは2018年です。元は、ここから100mくらい離れた場所にありましたが、建物の老朽化に伴う店舗の契約終了時にこの場所に移りました」

そう話すのは、onka店長の下山亜紀子さんです。

2014年から「onkä」の店長を務める下山亜紀子さん
2014年から「onkä」の店長を務める下山亜紀子さん

「住宅地にあるため朝の需要が少ないので、この辺りに住む地元の人向けに工夫しています。例えば、オープン時間を10時半と遅めにし、小さいお子さんからお年寄りまで、お気に入りのパンが見つかるように種類も豊富にそろえています」

経堂の魅力を「生活に必要なものは一通りそろっているので、わざわざ都心にでなくてすむのが魅力。面白い個人店もたくさんある楽しい街です」と語る下山さん。

コロナの影響については「マイナスな変化はほぼありませんでした」と言います。

「パン屋は春と秋が繁忙期で、来客数が増えます。テイクアウトが中心なので、外出自粛中でも、お客さんの数は例年とあまり変わらなかったと思います」

一方、まわりの飲食店は、外出自粛の影響を受けていました。

「お酒も提供できないし、20時閉店というのは飲食店にとっては致命的だと思います。実際の深刻さはわかりませんが、商店街も人気が少なくなっていました。それに、表参道にある暖簾元の『パンとエスプレッソと』は、ショッピング街という立地もあって、お客さんが少なくなったと聞いていたので、経堂も同じなのだろうと思いました」

そんな状況の中で思いついたのが「コラボサンド」でした。

「うちはコロナの影響がほぼありませんでしたが、以前と比べて、街からはお客さんの姿が少なくなっていました。ニュースでもよく取り上げられていたので、近くの飲食店や仲良くしている飲食店も少ならずダメージを受けているかもしれない。その場合、何か自分たちにできることはないかなと思ったのが、『コラボサンド』のきっかけです」

ショーケースいっぱいに並んだおいしそうなパンたち
ショーケースいっぱいに並んだおいしそうなパンたち

まわりの飲食店で購入したお惣菜をサンドイッチに

周辺の飲食店の食材を使ってサンドイッチを作る「コラボサンド」がスタートしたのは昨年3月でした。

「うちのお店では、毎月サンドイッチの中身を変えているんですが、実は、それを考えるのがけっこう大変で(苦笑)。なので、まわりの飲食店や仲のいい飲食店から調理済みのお惣菜を買って挟めばいいんだと思いつきました」

取材日のコラボサンドは、IngoBingoさんのあらびきソーセージを使ったホットドッグ
取材日のコラボサンドは、IngoBingoさんのあらびきソーセージを使ったホットドッグ

最初は「どのくらいの反響があるのかわからなかった」という「コラボサンド」。普段から付き合いのあったお店から声をかけていったと振り返ります。

「コラボ先の負担にはなりたくなかったので、販売ペースはあちらにあわせて不定期で発売していました。スケジュールを組まずに、できるときにお願いする感じです」

「サンドイッチは毎日作るので、少しずつコラボ先を増やしていきました。今は10店舗くらいあるので、コラボ先のシフトを組んで、毎日販売しています。ただ、お店によって定休日や用意までにかかる日数などが違うので、ピックアップをするのは思っていたより大変でした(苦笑)。お互い苦にならない範囲でやっていくのが、長く続ける秘訣なのかもしれません」

柔軟に考えながら新しい商品を作り上げていった下山さん。中には、「コラボサンド」のために、総菜を作ってくれる店もあるという。

「うちのお店にはフライヤーがないため、揚げ物を使ったお惣菜パンが出せません。なので、最初の頃に販売した揚げ物のサンドイッチは好評でした」

今では、コラボサンドを電話で予約してくれるお客様もいるのだそう。

開店前、次々とパンを焼き上げる下山さん
開店前、次々とパンを焼き上げる下山さん

サンド以外にもコラボを充実させたい

現在、コラボはサンドイッチ以外にも広がり、夏の間は期間限定でおかずも販売しています。

「夏はショーケースが空くのがもったいなくて、知り合いのお店のお惣菜を買って、そのまま売っています。火曜日に3~4種類を入荷販売して、なくなり次第終了です。お惣菜はonkä限定品なので、ここだけでしか食べられません」

そんなコラボ商品の原点は、昨年の春に生まれた「大人のカレーパン」です。松陰神社にあるお店のカレーを使っています。

「この経験がコラボサンドにつながりました。ドリンクメニューにあるコーヒーも、経堂のFinetime Coffee Roastersさんの豆を使っています」

松陰神社のアリクさんとコラボした『大人のカレーパン』
松陰神社のアリクさんとコラボした『大人のカレーパン』

昨年の1月からはオンラインショップも開始。「想像以上の反響」だったそうです。

「最初は、インスタグラムで注文受け付けしていて、一人で対応するのが大変な状態でした。その後、知り合いにホームページから注文できるようにしてもらいました。今は、何が届くかわからない『おまかせパンセット』をホームページ、それ以外の注文はインスタグラムで受け付けています」

インスタグラムの「onkäのパン図鑑(@onka_panpan)」
インスタグラムの「onkäのパン図鑑(@onka_panpan)」
出典:@onka_panpan

人もお店も支え合って生きていく時代に――取材を終えて

経堂には4つの商店街があり、たくさんの飲食店が軒を連ねています。突如としてやってきたコロナによる外出自粛で、売り上げが伸び悩むお店と、お客さんが増えるお店に二分されてしまいました。

そんな中、下山さんが自分たちにできることを探して行き着いたのが「コラボサンド」でした。

中小企業庁が発表した「平成30年度商店街実態調査」によると、商店街の平均店舗数は50.7店。前回の平成27年度の調査時よりも3.6店減少しました。

背景として、「経営者の高齢化による後継者問題(64.5%)」や「店舗などの老朽化(38.6%)」、「集客力が高い・話題性のある店舗・業種が少ないまたは無い(36.9%)」などの理由が挙げられています。

飲食店についていえば、昨年から今年にかけて「新型コロナウイルス感染拡大による廃業」も目立っています。

以前、「コラボサンド」を買いに「onkä」へ行ったら、夕方の時点で完売していて、その人気に驚きました。

「サンドイッチは、お昼ご飯用に買うお客様が多いので、13~14時くらいには売り切れてしまうんです(苦笑)」

思わぬハプニングは、時に人とお店との距離を縮めるきっかけになるから不思議です。顔の見える関係を大事にしてきたからこそ、困難が起きたときに、支え合っていく動きが自然と生まれたのでしょう。
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