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連載

#106 #父親のモヤモヤ

残業すると「家は大丈夫?」 〝大黒柱〟妻が感じる「子育ては母親」

「大黒柱」の妻と「専業主夫」の家庭から見えてくるものとは(写真はイメージです)
「大黒柱」の妻と「専業主夫」の家庭から見えてくるものとは(写真はイメージです) 出典: PIXTA

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#父親のモヤモヤ
※クリックすると特集ページ(朝日新聞デジタル)に移ります。

「たまたま私の方が収入が多かったので、夫婦で相談し、出産後1カ月で仕事に復帰しました。夫は退職して『専業主夫』になりました」

首都圏に住む会社員の女性(47)から、そんなメールが「#父親のモヤモヤ」取材班に届きました。「大黒柱」になった妻と「専業主夫」の家庭で見えてきたことは?

「マンションを買っておきなさい」

女性は「自分で収入を得る」「自分の力で生き抜く」ことを考えてきたと話します。

母親の影響だそうです。

女性が小学生になると、母親は会社員として働き始めました。「私が熱を出すと診療所まで連れて行き、診察の間、近くの職場で仕事をする。そしてまた迎えにくる。働くことに重きを置いていた母親でした」

当時は専業主婦の家庭が主流。それでも母親は「自分で収入を得ることが大切だ」と女性に説いたそうです。

女性が働き始め、1人暮らしを始めることになると「マンションを買っておきなさい」とアドバイスしたそうです。資産として将来の備えになるという意味です。

「これ以上は無理だよ」

女性は40歳を前に結婚しました。その後、長男(7)が生まれました。

同じ頃、夫(50)は事故で痛めた首回りの後遺症に悩まされていました。

「右半身だけだった手足のしびれが左半身にも広がってきました」

そうした状況で、勤めていた物流会社の勤務がこたえました。午前4時半に自宅を出発。午後9時ごろに帰宅する日々でした。

帰宅すると、体の痛みでソファに倒れ込んだそうです。

「なんとか、仕事を続けられないか」。そう考えていました。ただ妻である女性には痛々しく「限界」に見えました。

夫にこう言います。「これ以上は無理だよ」

大黒柱としての「責任」を感じる

夫自身、小学生の頃から料理をしており、掃除や洗濯も得意。家事が苦にはなりませんでした。「この働き方では、子どもに関われない。そんな不安もありました」

女性の収入で家計のやりくりができそう。そう見積もり、妻が大黒柱に、夫が専業主夫になる生活をスタートさせました。

働くことが好きな女性ですが、「大黒柱」としての重圧も感じたそうです。

これまで2度、転職をしました。人事や総務畑で経験を積んでおり、キャリアアップしたいという思いからです。昨年からは、外資系の企業で管理職を務めています。

ただ、仕事では強烈なストレスにさらされています。女性が早めに帰ると上司からは「俺はまだ働いている」とチャットが。同僚の男性に仕事で不明な点を尋ねると「能力あるの?」。はては、自宅を購入したことに触れ「それで、よく家を買えたね」とも言われたそう。

「これまでの会社と比べ、揚げ足取りが横行していると感じます」

女性は理不尽だと感じました。すぐに転職することも頭をよぎりましたが、しばらくは耐えていました。

「転職しても、給与などの待遇面が落ちることもあります。家族の暮らしを支える身として『責任』を感じました」

それでも、限界を感じた女性は先月、転職を決めました。条件の折り合う転職先が見つかったからです。

「子育ては母親の役割」をぶつけられる

女性が残業していると、同僚からは、こんな言葉をかけられます。

「家のことは大丈夫なの?」

一方の夫は、長男を健診に連れていくと、受付でこう言われました。「奥さんは?」。実際の健診でも「奥さんに伝えてください」

幼稚園の配布物では「お母さんの皆さん」と呼びかけられるのが常でした。

主夫の男性はこう話します。

「いちいち気にしないようにしています。ただ、『子育ては母親の役割』という考えが、まだまだあるのだと強く感じています」

女性は「家族が支え」と話します。

午後9時ごろに帰宅。夫の作ったごはんを食べ、長男の寝かしつけをしながら、心を休めています。

男性優位社会は「山」?

「大黒柱」の妻と「専業主夫」。旧来の家庭像を逆転させた夫婦が直面したのは、稼ぐ「責任」にまつわる重圧や「子育ては母親の役割」のような固定的な価値観でした。ジェンダーをめぐる課題がよりクリアになったとも言えます。

漫画家の田房永子さんは、そうした社会をもたらしているのは、「山」だと話します。

「女性が家事や育児をする前提で、社会はまわっています。だからこそ、『働く必要があるの?』と聞かれ、子どもを預ける保育園の整備は十分に進んでいません。働き出せば、賃金格差が待っています。男女の偏りが大きいのが現実です」

こうした男性優位の社会を、田房さんは「山」に例えるのです。

ワンオペから一転、稼ぎ頭になった女性を描いた「大黒柱妻の日常」(エムディエヌコーポレーション)に「山」は登場します。

「男たるものこれに登るべし」と書かれた「山」は仕事をイメージさせるもので、「出世」や「家事も育児も女の仕事」といった文言がはためいています。「男は仕事」や「女は家庭」といった固定的な考えと通じるものです。

男性優位の社会を自身の漫画で「山」に例えた田房永子さん
男性優位の社会を自身の漫画で「山」に例えた田房永子さん 出典:『大黒柱妻の日常 共働きワンオペ妻が、夫と役割交替してみたら?』©田房永子

固定観念は根強く、多くの男性にとって「『山』を登ることが当然になっているのではないでしょうか」と投げかけます。「むしろ、登る以外の選択肢がないと思わせるのが、『山』です。降りれば死ぬ。それくらいの気持ちでは?」

ただ、長時間労働が原因で家庭に関わるのが難しくなるなど、男社会がもたらす弊害を感じる男性も少なくないはずです。なお「山」が残るのはなぜでしょうか。

田房さんの描く「山」には、階段も描かれています。「『山』に登る、つまり出世したり、成功したりしていくことは確かに大変です。でも、最後まで登らなくてもいいんです。疲れたら座って休める。だから坂道ではなくて階段を描きました。むしろ、『山』から降りると家事や育児が待っています。人によっては、ほどよく居心地のよいところで、『山』から降りずにいられる。そうして『山』は維持されているのだと思います」

ただ、田房さん自身、社会は変わるものだと実感しています。「保育園落ちた日本死ね!!!」と題されたブログから声が上がり、不十分でありながらも、待機児童対策は進んできました。

「会社で言えなければ、SNSでも。声をあげ続ければ、社会は変わります。男社会については、女性側の発信が多かったと思いますが、男性も声をあげてほしい。男社会のような固い基盤のあるものは、声があがらなければ変わりません」

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共働き世帯が増え、家事や育児を分かち合うようになり、「父親」もまた、モヤモヤすることがあります。それらを語り、変えようとすることは、誰にとっても生きやすい社会づくりにつながると思い、この企画は始まりました。あなたのモヤモヤ、聞かせてください。
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