IT・科学
消えたたばこCM、ネットで流れる理由 「二つの基準」へのモヤモヤ
ではなぜ「ネットならOK」となっているのか。その理由は同様に「たばこ業界団体の自主基準で許可されているから」です。
自主基準を設定する日本たばこ協会を取材しました。同協会担当者は「ネットは双方向であり、年齢確認が技術的に可能であるから」と説明します。
つまり、たばこ業界としては「未成年者の喫煙防止」に重点を置いている、ということです。従来のテレビは情報伝達が一方向のみで、視聴者層を特定できません。TVerは初めて使うとき、アンケートとして年齢を自分で記入します。
さらにJTを取材すると、意外な回答が。「『Ploom』は加熱式たばこデバイスのブランドであって、たばこ製品のブランドではない」と説明されたのです。
「たばこ製品」の広告をネットで流そうとすれば、免許証など公的な証明書による年齢確認が必要ですが、キセルやパイプなどの喫煙具は、自己申告の年齢確認があれば広告を流していいことになっています。
つまり、事実上、喫煙にしか使えない加熱式たばこデバイスにもかかわらず、業界団体の自主基準では「たばこ製品」にはあたらないのです。
業界団体の自主基準を詳しく見てみます。まず、「加熱式たばこ」は、「たばこ製品」部分と「加熱式たばこデバイス」部分に分かれます。
ここで「たばこ製品」部分とは、たばこ葉の入ったスティックやカプセルのこと。この部分はたばこ事業法上の「たばこ」に該当し、紙巻たばこと同じ扱いになります。つまり、この部分の広告を視聴する場合は、公的な証明書等による年齢確認が必要になります。
一方、そのスティックやカプセルを加熱するデバイスはたばこ事業法上のたばこ製品には該当せず、パイプやキセルのような喫煙具に該当する、というのが、自主基準上の定義なのです。あくまでも喫煙具なので、広告の自主基準が別になる、ということ。
自主基準も「加熱式たばこ製品の製造たばこ部分に係る広告、販売促進活動及び包装に関する自主規準」と「加熱式たばこ製品の製造たばこ以外の部分に係る広告及び販売促進活動に関する自主規準」に分かれています。※太字は記者による
これら二つの自主基準は、特にネットの広告について扱いが異なります。デバイス部分の自主基準では、年齢確認はサービス利用時の自己申告でよしとされているのです。
テレビでは流れない加熱式たばこの広告が、TVerで盛んに放送されることには、こんな背景があったのです。
さて、ここまでの取材でネットテレビで放送される加熱式たばこのCMは法律・自主基準上は問題ないということがわかりました。でも、ちょっとモヤモヤしませんか。
たとえば「たばこにしか火をつけられないライター」があったとして、その使用環境をプロモーションするのは、たばこのプロモーションと何が違うのでしょうか。
たばこ部分とデバイス部分を区別する自主基準により、ネットで大々的に広告される加熱式たばこ。このことについて、この連載でさらにフカボリしてみることにします。
【第二回はこちら】加熱式たばこ、普及の背景にネット広告 「技巧的で不自然」な基準による宣伝 表現の自由と医療からの批判
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