連載
#14 SDGs最初の一歩
震災を明るく歌う、のんさんが挑む「自分ごと化」の魔法
SDGsも防災も…「意識しない、生活の一部になれたらいい」
日常の中で、ついつい忘れがちな災害や環境問題を「自分ごと」にするにはどうすればいいのか。震災後、東北各地で活動を続けてきた、女優・創作あーちすと・のんさんはライブなどを通じて「生活の一部になる」ことを意識してきたと言います。最近ではSDGsについても取り組むのんさん。震災10年への思いと、自作のキャラクターに込めた考えを聞きました。
2011年3月11日の震災時、のんさんは、自宅に帰る途中だったそうです。
「叫びながら道路に出てくる人がいて、駐車場の車がエンジンもかかってないのに揺れ出して……。『何が起きているんだ?』と思っているうちに大きな揺れがきました」
「立ってられない」という、それまでの地震とは違う体験だったそうです。10年経った今、「震災発生時には気遣えなかったことが、できるようになった」と振り返ります。
そこに至るまでには常に東北と関わり続けてきた日々があります。
「食べものでも、場所でもいい。東北に思い出ができると、自然な気持ちで元気づけたい、盛り上がって欲しい、そういう気持ちになれます。そうすると、震災のことも『自分ごと』になると思うんです」
だから、周囲にはいつもこう呼びかけていると言います。
「東北に一度、訪れていただけたら」
震災から10年経ち、どのような発信ができるのか。のんさんがいつも思い出すのが、岩手県釜石市にある旅館「宝来館」のおかみさんです。
「津波に追われる動画を見せてくださいました。一度は、津波に足をとられたけど、がんばって生きのびた。そのおかみさんがおっしゃっていたのが『人の話や記憶は変わっていく』ということ。だから、歌にして残す。そうすると、ずっと同じものを残していける。おかみさんは今も歌と手話で当時の記憶を語り継いでいるんです」
のんさん自身、『この街は』という曲で東北の自然や人びとを歌っています。
「震災後の空気感を残したかった。おかみさんの話を聞いて、自分がやっていることが無駄ではなかったと思えました」
歌う時はいつも「明るい気持ちになるよう」心がけているそうです。それは2月27日、オンラインで開催された「東日本大震災復興10年復興応援コンサート」も同じでした。
「震災のことを思い出すと、明るくなりにくかったり、笑顔で話したらいけないと思ったりしがちで、気持ちがかたくなってしまいます。でも、ライブは底抜けに明るく、笑顔で、明日があるさと思って気持ちを盛り上げようと思ってやらせてもらいました」
そんな、のんさんが今、力を入れるのがSDGsの活動です。
「コンビニにいつのまにかサステイナブルな商品があるように、生活の一部になっていったらいいですよね。みんなが意識しない、それくらいのレベルで溶け込んでいったら、と思っています」
日常生活に無理なく取り組むことを大切にする姿勢は、東北での活動と重なります。
「自分が好きなものが増えていく中に東北が入っていて、東北がみんなものものになっていくような。食べものや工芸品、場所でもいい。みんなの『好き』に東北が入ってくれたらいいなと思っています。そのために私も、東北のいいところを発信していきたいです」
外務省や神奈川県などによる「ジャパンSDGsアクション」において、「SDGs」の裾野を広げていく「SDGs People」に選ばれた、のんさん。
SDGsを「自分ごと」にしてもらうため、4人のキャラクターを考えました。
普段、一緒に活動するチームのメンバーと一緒に考えたという4人のキャラクター。大事にしたのは、ここでも「自分ごと化」でした。
「『SDGsって何?』みたいなところから、キャラクターたちがどんどん勉強していって。読んでいる人が、ふに落ちたり、何かひらめいたり、そういうきっかけになったらいいなと思っています」
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