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「何でもいい」が一番困る 1万5千円渡され知ったお母さんの努力
「おいしいと思うなら素直に言おう」
ちょうど1年前、新型コロナウイルスの感染防止のため、子どもたちは何カ月にもわたる休校に直面しました。与えられた食費の範囲内で家族のために作る食事。当たり前のように感じていたお母さんの工夫や思いに気付いたという中学生に話を聞きました。
赤羽さんは、料理に取り組む部活動に入るなど、料理に苦手意識はないものの「野菜の皮を剝くのも、ピーラーを使わないとできないくらい不器用」。
そんな赤羽さんへのお母さんの提案は、「『もう少し料理をやったら?』というお母さんの思いもあったんだと思う」。渡されたお金で何回分の食事を作るかなどの細かいルールはありませんでしたが、「余ったお金は好きなものに使っていい」という言葉にもひかれ、双子の姉と一緒に提案に乗ることにしました。
実は赤羽さん、料理の部活にこそ入っていますが、その目的は「料理をしたいというよりは、食べるのが好きなので、食べたくて入ったんです」と笑います。
部活ではミートソースパスタやレモンケーキ、おもちピザなどを作りましたが、自宅でそれらを作ることはこれまでほとんどありませんでした。
そのため、お母さんから出された課題に取り組むことが、ほぼ初めての家族のための食事作りに。
「お母さんに教えてもらいながらロールキャベツをつくったり、キッシュやパスタ、デザートも作りました」
バラエティーに富んだメニューに挑戦する一方で、大変だった点を二つ挙げます。
「まず、品数です。私は食べられればなんでもいいタイプなんですが、お父さんのこだわりが強い。サラダと副菜2品は絶対で、献立の中には肉料理とお魚料理の両方が入っていないといやなんです」
それに伴い、大変だった点の2つ目が発生します。
「品数を多く用意する上で、『節約』が大変でした」
そこで赤羽さんが気付いたのは、「お母さんの日々の努力」でした。
「以前買い物についていったとき、2カ所のスーパーに分けてお母さんが買い物をしていたんです。当時は『1カ所で一気に買っちゃえばいいのに』と思っていたんですが、今回の経験を通して、同じ個数が入った野菜でもスーパーによって値段が違うことがわかりました」
休校期間中、食事作りに取り組んだのは数回でしたが、赤羽さんは「私は料理をするのが好きなんだ」ということに気付いたそう。
「作る過程で、『これがこんな風になるんだ』とか『良いにおいがしてきた』とワクワクしたりするのが結構楽しかった」と赤羽さん。
そして、「美味しい」の一言の大切さにも気付きました。
「私が作った料理を、両親は『おいしい』と言って食べてくれました。逆に『おいしい』って言われないと複雑な感じあります」
これまで、「言った方がいいんだろうな」という思いから、「本当においしんだけど、言葉にするときは義務的な感じで言っていた」という赤羽さん。
自分が料理をする立ち場になって「おいしいと言われることがうれしいとわかったので、おいしいと思うんだったら素直に言おうと思いました」
今年の春休みは、両親が仕事で不在のときは「ちょっとお昼ごはん作ってみようかな」という気分になったといいます。「実は今日の夕食も姉と一緒に作る予定です。二人で料理にはまっています」
また、今後挑戦したい料理の一つに「肩ロースのトマト煮込み」を挙げてくれました。「休校期間中に『作ってみたい』と言ったら、お母さんには『まだ難しいよ』と言われてしまったので、いつか作ってみたいです」
ちなみに、食事作りのために渡された資金は少しだけ余り、双子の姉と分け合って貯金に回したということです。
withnews賞を受賞した赤羽さんの記事全文はこちら
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この記事は、2020年度末にかけて多摩生徒会協議会が主催した「全国オンライン学生祭」での企画の一つ、「全オン祭NEWS『コロナと学生の今』」のwithnews賞「芽生える感謝の思い」を元に、筆者に取材をしたものです。
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