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ネットの話題

突然増えた「要望」に応え…マンボウの絵を再展示した博物館のセンス

「対策も願掛けもうまくいきますように」

江戸時代の「疫病除けマンボウの図」。「疫病除け」の文字も
江戸時代の「疫病除けマンボウの図」。「疫病除け」の文字も 出典: 和歌山市立博物館公式(@w_city_hakubuts)

目次

ある博物館が所蔵する江戸時代の「マンボウ」の絵が、突然増えた「要望」に応えて再展示されることになりました。マンボウの絵の意味と、博物館の粋な試みにネットで注目が集まっています。

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「こっちは拡散すべきマンボウ!」

話題になっているのは、和歌山市立博物館公式(@w_city_hakubuts)が4月2日にツイートした内容です。
理由はわかりませんが、昨日から急に数多くの要望が寄せられたため、4日から再び「疫病除けマンボウ」を展示します
和歌山市立博物館公式(@w_city_hakubuts)のツイート

ツイートには、マンボウのような生き物が描かれた、古びた絵の画像が添えられています。

文章は続きます。

なお、繰り返しになりますが、当館の「マンボウ」は、まん延防止等重点措置のことではありません。ふざけた雰囲気もありません。
和歌山市立博物館公式(@w_city_hakubuts)のツイート

折しも、ツイート前日の4月1日は、政府が「まん延防止等重点措置」(通称・まん防)が、大阪市など6市で初めて適用することを決定した日。


コメントでは「こっちのマンボウは癒やされて良いですね」「これは拡散すべき蔓防!」と共感が集まり、6000件以上のいいねがつきました。


「#疫病退散」「#マンボウ」のハッシュタグが添えられた投稿に、「厄よけマンボウはユルくて好き!」「マンボウにもすがりたい」と反応が寄せられました。

「疫病除ケ」

投稿した和歌山市立博物館によると、この絵の名称は「疫病除けマンボウの図」。

和歌山市内の収集家から寄贈された資料の中に埋もれていたのですが、2~3年前に「発見」されました。

江戸後期ぐらいの作品と見られるそうです。和歌山市立博物館の江戸時代担当の学芸員、佐藤顕さんに話を伺いました。

作品には「満方(マンボウ)」と書かれています。マンボウは日本各地で呼び名が違いますが、和歌山では「マンボウ」と呼ばれていました。

「満方」と書かれている
「満方」と書かれている 出典: 和歌山市立博物館公式(@w_city_hakubuts)のツイート
(マンボウの呼び方は)例えば、「ウキ」「ウキキサメ」といった、「ウキキ」に近い響きのものもあれば、「オキマンザイ」「キナッポー」「シキレ」「ユキイカダ」など個性的なものも。澤井さんの調査では、「バン」「バンバラバン」というユニークな地方名もあったそうです。バンやバンバラバンは「マンボウの身がちぎりやすい(バラバラになりやすい)ことが由来とされています
「ヤリマンボウ、江戸時代からネタにされていた!古文献が発掘した事実」(withnews)より

そして、はっきりと「疫病除け」の文字が描かれています。

これまでは、マンボウを祈願の対象にした資料は見つかっていなかったと言います。「木版画で作っているものなので、いくつか刷って配っていたのだと思います」

A4ぐらいの大きさの作品。状態を観察していて、佐藤さんはあることに気づきました。

「今の状態を見ると、端の方が切れている。つまり、掛け軸に作っていたような形式があるんです」

掛け軸として、家に「有り難く」飾っていた、お守りのようなものだったのではないか――。


この作品が作られたと見られる江戸後期には、「コレラ」が流行っていました。

疫病退散の絵では、妖怪「アマビエ」が話題になりましたが、珍しい動物も、見るだけでご利益があり、疫病除けになると考えられていたそうです。


あまり多くとれる魚ではなかったマンボウ。そして、この図に書かれたマンボウは、「壹丈五尺四方」=現在の約4・5メートルに相当する大きさだとされており、かなり大きな個体だったことも分かります。


もしかしたら、未知の疫病の収束の願いを、この珍しいマンボウにかけていたのではないか――。

「役目」を終えたマンボウの図は、収蔵庫に帰っていきました

しかし、この「疫病除けマンボウの図」、再び収蔵庫にしまい込まれてしまい、展示される機会はありませんでした。


脚光を浴びたのは昨年8月。新型コロナウイルスの影響で、全国的に緊急事態宣言が出された終、落ち着きだした館内で、「あの絵」の存在が思い出されました。


初の展示は2カ月ほどで終わりましたが、昨年12月、再び和歌山で新型コロナウイルスの感染者が増えてきたタイミングで展示が再度、始まりました。そして、東京などの2度目の緊急事態宣言が解除された3月21日、「役目」を終えたマンボウの図は、また収蔵庫に帰っていきました。

「飾りたいのですが……」

ところが、「あの絵を見たい」というリクエストは、その後も続きました。

ある時は、博物館を訪れた医療従事者から「病院に飾りたいのですが……」と申し出があり、特別に収蔵庫から出して、マンボウの図を撮影してもらいました。


そして「まん延防止等重点措置」の初適用が話題になると、その通称が「まん防」だったこともあり、にわかに脚光を浴びることになります。「今こそ出すべきじゃないか」といった電話もありました。


そして三度目の展示につながりました。


一部では「便乗している」との批判も頂いたそうです。

でも佐藤さんは、「きっかけはともあれ、昔の人が今と同じように何かにすがりたいと思っていた歴史に、今の思いを馳せてもらえたらと思います」と話します。

5月5日まで展示する予定です。

「マンボウ」今後は使わない

一方で、「まん延防止等重点措置」の略称が「まん防」とされていることから、思わぬ発展を見せています。

政府分科会の尾身茂会長は2日、衆院厚生労働委員会で「まん防」は今後は使わないという考えを示しています。

「まん延防止措置を『まん防』と略するのは良くないという指摘がある」。魚のマンボウを連想させ、「ちょっとゆるいイメージがある」という質問に対する回答でした。

尾身会長は、これまでも「まん防」を使っていましたが、「言われてみれば『重点措置』と使った方がいいと思う」と答えたそうです。

「まん防」使いません 尾身氏見解、「重点措置」に(朝日新聞デジタル)

そんな世間の騒動は、知らぬように、今日も、和歌山市立博物館の「常設展示室民俗コーナー」の一角で、「疫病除けマンボウの図」はひっそりと「役目」を果たしています。

ツイッターなどで話題になり、ちらほらと人が訪れて、その姿をカメラに収めて行きます。

「疫病除け」を願う人々。


対策の略称はどうであれ、疫病がこれ以上まん延しないように、対策も願掛けも、うまくいくことを願います。


※4月6日更新しました

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