連載
#79 ○○の世論
同性愛の意識、24年前の世論調査では? 「理解できない」65%だった
年々、広まる、同性婚への理解
同性どうしの結婚を認めないのは違憲。今月、札幌地裁が初めての判断を下しました。同性婚に対する世間のまなざしはどう変化しているのでしょうか。世論調査で探ってみました。(朝日新聞記者・植木映子)
民法や戸籍法の規定では、婚姻は異性としかできないことになっています。
同性カップルは、法律上の結婚をしている異性の夫婦にある配偶者控除や、医療費控除の合算、相続税の優遇、養子の共同親権などが認められていません。これらは、自治体などが導入している同性パートナーシップ制度を利用しても、認められません。
「同性間の結婚を認めず、国が法的保護を一切与えないのは不合理な差別で、法の下の平等を定めた憲法に違反する」
札幌地裁の判決は、同性パートナーとの法律婚を望む人たちが全国各地で起こした訴えに対しての、初の判断でした。
判決では、政府が民法などの規定を変えてこなかったことは違法ではない、としました。その理由を「国民が同性婚などに肯定的になったのは最近」と説明しています。
では、同性婚に対する国民の意識は、変わってきたのでしょうか。
1997年、面接による世論調査で「同性愛は、ひとつの愛のあり方として理解できますか」という質問をしています。このときは「理解できない」が65%で、「理解できる」28%を大きく上回りました。
当時の新聞記事では、
と紹介しています。
同性婚についてはどうでしょうか。
「男性同士、女性同士の結婚を、法律で認めるべきだと思いますか」という質問を計4回しています。
最初は、東京都渋谷区にパートナーシップ制度が導入されることが話題になった2015年2月の電話調査。調査方法などが異なるため、単純には比較できませんが、「認めるべきだ」は41%。その後は郵送調査で質問しており、16年は46%、17年49%という結果でした。
そして、札幌地裁判決後の今年3月20、21日の電話調査では「認めるべきだ」が65%と、「認めるべきではない」の22%を大きく上回りました。
直近の今年3月調査の結果を細かくみてみます。
男女別では、男性が「認めるべきだ」62%、「認めるべきではない」25%だったのに対し、女性は「認めるべきだ」67%、「認めるべきではない」は19%にとどまり、男性より、やや肯定的な姿勢がうかがえます。
年代別にみると、若い層ほど「認めるべきだ」が多く、30代以下では8割以上にのぼります。年代が上がるほど否定派が増えますが、60代でも「認めるべきだ」66%が、「認めるべきではない」17%を上回りました。否定派の方が多かったのは70歳以上だけで、「認めるべきだ」37%、「認めるべきではない」41%でした。
同性愛や同性婚に対する肯定的な考え方は、時代とともに、幅広い世代に広がりつつあるようです。
もうひとつ、いつもの世論調査の記事では触れることが少ない数字に注目してみます。
「答えられない」「わからない」といった回答や、選択肢にあてはまらない回答は「その他・答えない」に分類されます。こういった回答は「(I) don't know」を略して「DK」と呼ばれることもあります。
同性婚の質問でのDKの割合は、2015年は22%だったのに対し、21年は13%でした。
年代別にみると、15年は全ての世代でDKが2割以上でしたが、21年は40代以下では1ケタにとどまり、50代、60代も2割を切りました。
DKが減った理由は、調査結果から確かなことは分かりません。ただ、同性カップルや同性婚が「なんだかよくわからない」「自分が考える必要のないこと」と思う人が減って、「身近にいる(かもしれない)人」「自分も向き合うべきテーマ」と思う人が増えたのではないか。そんなふうに推察することもできます。
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