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芸名も言動も「わきまえない」 ぱいぱいでか美流、分断越える柔軟さ
少し前までは「超失礼!!」と思いながらも、適当にやり過ごしていたんですけど、最近は「わあ~~炎上しそう~~」みたいな感じで注意します
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少し前までは「超失礼!!」と思いながらも、適当にやり過ごしていたんですけど、最近は「わあ~~炎上しそう~~」みたいな感じで注意します
ちょっと奇抜な芸名を引っさげ、バラエティーや音楽シーンなどで幅広い活躍を見せる、ぱいぱいでか美さん。最近は、芸名だけでなく、言動も「わきまえない女」を心がけているそうです。昔なら聞き流していたセクハラ発言でも、自分が納得いくかたちで注意するようにしています。その言動の根っこには、日常的な対話を重視する彼女のポリシーがありました。性差別の発言が相次いだこの1年を振り返りつつ、差別・偏見と向き合う「でか美流」を聞きました。(withnews編集部・小川尭洋)
ぱいぱいでか美(本名・仲井優希)
1991年、三重県生まれ。進学校の津高校を経て、東京の音楽専門学校に進み、バンド活動を始める。2012年末、ソロ活動に切り替え、2015年のNHK紅白歌合戦では、「ゲスの極み乙女。」のバックコーラスを務めた。バラエティー番組「有吉反省会」出演のほか、DJ業や司会業もこなしている。著書に「桃色の半生!~仲井優希がぱいぱいでか美になるまで~」。3月24日に新曲「イェーーーーーーーー!!!!!!!!」がデジタル限定で配信された。
――ツイッターでは、エゴサーチをして、自ら「いいね」を押していますね。
芸名を名乗り始めたころは「親の顔が見たい」「ブスが調子乗ってる」などと、たたかれましたが、ここ数年で誹謗中傷やセクハラのコメントはだいぶ減りました。芸名を初めて知った時は驚くと思うんですけど、その後は慣れてしまうのではないかなあ、と。
テレビやYouTubeを見て投稿してくれた人に、「いいね」を押すと、とても喜んでくれるんです。一種のコミュニケーションの方法になっています。
あとは、「悪徳事務所に言われ、嫌々活動している」みたいに思い込んでいる人の誤解を解くチャンスでもあります。「この芸名が好きで活動しているんですよ」と伝えています。
――芸能人に限らず、性別や年齢で「こうあるべき」といった押しつけは、なかなかなくなりません。
テレビでも、男性MCと女性アシスタントの組み合わせが定番だったり、料理が下手だとキャラになるのが女性だったり。
私自身も、「部屋が汚い」というキャラでテレビに出たことがありますが、男性芸能人だったら、出演できていたのか微妙ですよね。女性は「料理がうまくあるべき」「部屋がきれいであるべき」といった思い込みの反動が、こういったキャラを生産していると思うんです。そこに救われていることも多いので難しいんですけどね。
――テレビやネットで、多くの番組に出演されていますね。気をつけていることはありますか?
過剰にいじった方が笑いが取れることを期待されている場面でも、本人や視聴者が傷ついてしまうような表現は避けるように気をつけています。本意ではなくても、自分の発言が差別につながっていることもあるので。
例えば、「40歳で、この趣味に没頭している」と話す出演者に、「何歳まで、こんな趣味やっているんですか!」じゃなくて、「趣味があるのは素敵だけど、仕事をないがしろにするのはダメですよね」「それだけ没頭できるなら、こっちもやってみたらいいんじゃない?」という方向で話すようにしています。
ほかにも、出演者に関して「こんな男性どう?」と聞かれた時は、「私は嫌だけど、好きな人もいると思う」というニュアンスで答えます。ツイッターでエゴサしているからよく分かるんですけど、ちょっとした言い方の違いで、印象が全く変わってしまうんですよね。
――最近、でか美さんは、ツイッター上などでジェンダー問題への発言にも積極的です。東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長の発言など、公人の差別発言が相次いでいます。
MeToo運動などの広がりをきっかけに、ここ数年で、ジェンダーというテーマに、よりいっそう興味を持つようになりました。
森さんについては、悪気なさそうに言っている様子を見て、ああいうふうにしか生き残れない社会・組織の中でやってきた人なんだなと感じました。
許される理由にはならないけれど、根本的な問題は、古い組織の中で学ぶチャンスがなかったことなんだと思います。森さんの場合は、偶然表に立つ人間だったから、批判してもらえる機会があっただけで、古い価値観に気づかずに過ごしていく人の方が圧倒的に多いのではないでしょうか。
発言を批判され、とりあえず謝罪し、辞職する。そういう形だけの対応では、何も解決しないのではないかと考えています。
そう言う私も、自分の考えが「古いな」と思うことがあります。「私、もう30歳なのにツインテールにしちゃった」と言ってしまったり、「ハーフで可愛いね」と褒めてしまったり。年齢や人種などで何かを決めつけることがないよう、常に自ら学んで考えないと、今度は自分が「古い考えの側」になってしまうと、気を引き締めています。
――昨年は、ツイッター上で政治的発言もしていました。
ただ自分の意見言っただけなのに、「敵だ」「味方だ」と言われて戸惑いましたね。与党派でも野党派でもないのに。
性別や年齢を理由に、攻撃してくるコメントも多かったです。「若い女が何も分かってないくせに……」「金をもらって言わされている」。それ、私が男だったら言ったのかな?っていう。当たり前ですが性別は関係ないはずなので。
――森元会長の発言を受け、ツイッター上では「#わきまえない女」をつけた投稿が広がりました。でか美さんは、自分を「わきまえない女」だと思うことはありますか?
「ぱいぱいでか美」っていう芸名で活動している時点で、相当わきまえていないんですけどね(笑)。
セクハラ発言は、年上の男性が多いけど、女性からも言われます。多くの場合は、悪気なさそうに、さらっと言ってくるんですよね。
例えば、ある男性から番組の現場で「こんなに足出しちゃって~男が寄ってくるよ~」と言われました。少し前までは、「超失礼!!」と思いながらも、適当にやり過ごしていたんですけど、最近は「めっちゃキモいこと言ってますね~」「わあ~~炎上しそう~~」みたいな、軽い感じで注意しますね。
できるだけ現場の雰囲気は悪くしないようにしつつ。それでも、あまり響いてなさそうなら、「よく今の時代にそれ言えますね?」「裁判だったら普通に負けますよ?」とか、少し強めに言います。
芸能界では、女性からは「でか美ちゃんもそろそろ結婚したいよね」「30歳だからアンチエイジングしなきゃ」と言われることがあります。ルッキズムや年齢にとらわれている人が多いんですよね。そういう時も、「年齢は関係ないよ~」と軽く返します。
個人的な意見ですけれど、これまでの経験からジェンダーの話をする時に、超真面目なトーンになっちゃうと、溝が広がってしまう印象があって。
「#わきまえない女」など、SNS上で連帯するのは良いことだと思うんですけど、反射神経的に遠ざかってしまう人もいるのではないでしょうか。それは、その人たちの勉強不足もあるけれど、ここまで過激にバトルしてきた積み重ねもあります。
話題になった時に強く訴えるのも大事なんですけど、もっと日常的にカジュアルに話し合えたら、分断が少しは解消されるのかもしれません。私自身、発言の影響力が少なからずあるので、「日常的にわきまえない女」として、考えるきっかけを作れるよう、発信し続けたいと思います。
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