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「何時間も子どもの前で説教」コロナで増えるDV、暴力の自覚なく…

「自分が悪い」と思っていませんか?

コロナで増えるDV被害。安心して暮らせると同時に、悩みを共有して支えあう仲間の存在が欠かせないという=画像はイメージです
コロナで増えるDV被害。安心して暮らせると同時に、悩みを共有して支えあう仲間の存在が欠かせないという=画像はイメージです

目次

新型コロナウイルスの新規感染者数、ワクチンの確保状況、東京オリンピック・パラリンピックの開催可否…。各社が競い合うように連日報道合戦が行われるが、こちらの話題は思いの外少ない。2020年度の家庭内暴力(DV)の相談件数が過去最多に達した。明らかに暴力なのに「自分が悪い」と思って言い出せない現状に、どう向き合えばいいのか。シングルマザー向けの「シェアハウス」作りに取り組む団体をゲストに迎えオンラインサロン「大人の社会科見学」で勉強会を開催した。(時事YouTuber・たかまつなな)

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「シングルマザーが集うシェアハウスを」

内閣府が1月に発表した資料によると、配偶者や交際相手などから暴力を受けたDV被害者の相談件数(暫定値)が2020年4~11月、前年同月と比べ、4〜6割の増加となりました。

全国287の配偶者暴力相談支援センターでの相談に加え、メールやチャットでの相談などを集計したもので。前年の4~11月の相談件数は、月1万449件~1万2174件だったが、2020年4~11月は、最も少なかった4月で1万5170件、多かった6月は1万8007件と大幅に増えた。内閣府では原因について、相談窓口を増やしたことに加え、コロナ禍による外出自粛要請などの影響が背景にあるとみている。

そんな中、「一般社団法人高知あいあいネット」は、シングルマザーと子どもたちが安心して暮らせる「シェアハウス」を作りたいとインターネットで寄付を募っている。住人同士が一つ屋根の下で共同生活をするシェアハウスは、既に一時的に身を寄せる「シェルター」と比べて長期滞在できる点などが特徴にある。

高知あいあいネットは1998年に設立した「高知CAP(子どもへの暴力防止プログラム)」が前身で、児童虐待やDV被害に遭った女性の居場所作りをサポートしてきた団体。民間シェルターの運営やフードバンク活動を展開し、例年35.6組の母子をシェルターに受け入れた。

今回は既に購入した一軒家をリフォームして、シングルマザーが共に暮らすシェアハウスを作ることを計画中。小さい子どもを連れた母親たちからの要望に応えたいとの思いが、大きな原動力になっている。

これまでに以下の声が寄せられたという。

「DVをしてきた元夫が子どもを連れ去りに来るのではという恐怖がある」
「子どもが病気になった時など、いざという時に助けてくれる身内がいないので働けない」
「働く背中を子どもには見せたいけど、ギリギリの生活に疲れてしまった」

事務局の村田由紀さんは、安心して暮らせると同時に、悩みを共有して支えあう仲間の存在が欠かせないと実感したという。入居者同士が助け合いながら再出発を図るための場にしたいと考えており、リフォーム費用の一部や建物の維持費を得るためにクラウドファンディングを活用している。

オンラインサロン「大人の社会科見学」の様子
オンラインサロン「大人の社会科見学」の様子

「リモートワークで急増」自立希望者も増

事務局を担う村田さんは、新型コロナウイルスの影響で事態はより深刻になっていると危機感を募らせる。

「部屋を借りて自立を希望する人は約5倍に増え、相談件数はもっと増えています。パートナーの収入に頼れなくなるほど困窮していることが要因です。お互い家にいる時間が増えたことでさらに暴力を振るわれることを恐れる人が目立ちます」。

例えばリモートワークで在宅時間が増えたことによって、子どもに手を上げる事が増えたり、コロナ禍で収入が減り我慢してまでパートナーと一緒に居る意味がなくなり逃げ出したなども理由としてあるそうだ。

自身も結婚相手からDV被害を受けた。その経験があるからこそ、当事者たちの気持ちに寄り添うことが欠かせないと訴える。

実際に相談を寄せている女性Aさんも、シングルマザー同士でつながれる場が新たにできる動きを歓迎している。大病を患いうつ状態になった際にもパートナーから長時間の説教を受けることが多々あり、その後に別居を決意した。現在は離婚調停中だが、当時受けた数々の誹謗中傷を思い出すことも少なくない。

「一番辛かったのは私が退院しても間もないにもかかわらず、子どもの前とか関係なく大声で説教や悪口を言われました。長年の結婚生活の間で自分が悪いんだと思っていましたが、このままだと病気も回復しない、子どもたちを安心して育てたいという気持ちが勝りました」(Aさん)

入院中にいくら弱音を吐いても、親身になって対応に当たる医師や看護師の姿が忘れられなかった。「自分が弱っているときに、一番頼りになるのがパートナーのはずです。それなのに、当時一番気を使わないといけない存在でした。おかしいと思った時に、私が受けてきたのはDVだったんだと感じました」と振り返る。

以前から知り合いだった村田さんに打ち明けた。被害者支援の活動をしていた友人に悩みを訴えると、その友人も同じような境遇だったことを受けたことを知った。側にいてくれる存在が心強く、長い間重くのしかかっていた肩の荷が下りた。「『俺を怒らせたのはお前のせいだ』と結婚中に言われ続けてきましたが、聞いてもらうことで救われました」と前向きになれた。

シェアハウスの外観
シェアハウスの外観

「相手を尊重しない恋愛は全てDVです」

被害者たちに大きな負担を負わせるDV問題。当事者がいち早く気がつく上でのポイントについて、村田さんは「相手を尊重しない恋愛は全てDVと思ってもらっていいと思います。第三者の視点で冷静にみていくことが大事です」と指摘する。

各都道府県にある女性相談所や法的トラブルを解決するための窓口「日本司法支援センター」(法テラス)に訪れるのも有効。信頼できる友人に打ち明けるのも選択の一つだ。

村田さんは「立ち上がる気がない人を立ち上げるのは難しいけど、『この先に何か明るいことがある』という火を灯すのが、周りが出来ることではないでしょうか」。一方でAさんは「当時はどんどん視野が狭くなっていました。自信がなくなったりふさぎこんだりしているように見かけた時には、辛いことがあったんじゃないかと聞いてあげてほしいです」と求めた。

被害を防ぐ上で、教育が欠かせない。

村田さんは「DVに関して言えば、加害者の人に自覚が足りない例がほとんどです。家の内と外で違う顔を持っている人は怖いです。暴力はだめなことだというのは当たり前なことですが、では暴力って何?心と体どちらを傷つけても暴力なんです。相手がどう感じるかという想像力や配慮を具体的に教えることが大事です。男だから弱音を吐いちゃダメだというレッテルを貼るのではなく、これからはみんな人間なんだからというふうに考えないといけません」。

フードドライブで集まった食品を仕分けしている様子
フードドライブで集まった食品を仕分けしている様子

政争の具にせず現場の支援の推進を

オンライン対談後には、オンラインサロンのメンバーから「相談先として他におすすめなところはありますか」「共同親権などセンシティブな面についてはどうお考えですか」などの質問があった。

「教育の重要性は感じるが学校現場の負担がこれ以上増しかねない」との問い掛けには、村田さんが「学びの場」は今や学校だけではないと指摘。「インターネットでワンクリックすれば、いろんな情報が取れる。大事なのは良いか悪いかの分別を身に付けることです。明るく楽しい未来を子どもたちに見せるために、学校や地域で連携していくことが教育だと思います」と答えた。

菅義偉首相は1月末に生活に困っているシングルマザーらと面会して意見交換した。その時、菅首相は「この私が話を聞いたんだから」と支援に前向きな姿勢を示した。

自民党の議員の女性活躍推進特別委員会では今月中旬、生活苦にある女性への支援を求める提言書を橋本聖子女性活躍担当相(当時)に提出した。はたしてきちんと問題解決のためのアクションがとれるのか。政争の具にせず現場の取り組みを推進する対応を期待したい。

寄付された冷蔵庫を運んでいる村田さん
寄付された冷蔵庫を運んでいる村田さん

見逃されがちなDV知ってもらうには

現場の課題に真摯に向き合ってきたことがにじむ回答の数々。どれも現実感があり、なんとか改善を図ろうと腐心する姿に共感を覚えました。

DVの問題がなぜこんなにも世の中で共有されていないのか。

その理由は、被害者が「自分がいけない」と責めてしまうことが多く、更にコロナ禍でリモートワークが増え、外に相談できる人がいないからだと思います。

DVの問題を世の中全体で受け止めるためには、DVには精神的な苦痛を伴う言葉の暴力などもあるということを知ることや、被害者と支援先をつなぐ必要があるとあらためて思います。

また、被害を防ぐための教育についても考えさせられました。

悪いと思っていないまま暴力を振るってしまうのは、自分がしていることがDVだと気づかないことが理由だからだという。男の人が外で稼いで家族を養うべきという古い家族観などにより男性にも、弱さをみせられないというプレッシャーがあるのかもしれない。

それが、さらなる被害を生んでしまう。その悪循環を断ち切るためには、古い家族観と共に、男だから女だから、という刷り込みがまだまだ自分にあるのではないか?という認識を持って言動を意識する事も大切だと思います。

コロナによって、ストレスが溜まり在宅時間が増え、家族と過ごす時間が増えた状況だからこそ、DVの問題を向き合うことが必要です。

私たちができることとしては、身近に困ってそうな人がいたら、話を聞いてあげる、そして一緒に女性相談支援センターや警察、法テラスや、男女共同参画局DV相談ナビサービスなどの支援先についていくなどだと思います。

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