連載
#77 ○○の世論
「健康より世間の目」コロナの不安、世論調査から見える「本音」
都市部よりも濃い人間関係…地方に現れた傾向
「ご近所の目が気になるから……」と、実家への帰省をやんわりと断られたことがある人はいませんか。新型コロナウイルスに対して、感染者の多い都市部より、地方の方が敏感になっていると感じることが多々あります。都市部と地方で意識に違いはあるのでしょうか。朝日新聞社の世論調査結果を分析しました。(朝日新聞記者・植木映子)
新型コロナウイルス感染が世界に広がって1年。コロナ問題に覆い尽くされる政治や日常について、みんなはどう思っているのでしょうか。朝日新聞世論調査部が全国の有権者に尋ね、2人の識者に読み解いてもらいました。2020年11月11日に調査票を発送し、12月21日までに届いた回答を集計しました。【特集ページはこちら】
昨年11~12月に行った郵送世論調査で、「新型コロナウイルスに感染したら、健康の不安より、近所や職場など世間の目の方が心配だ」という気持ちが「あてはまる」かどうかを尋ねました。
「あてはまる」人は、「とても」26%と「やや」41%をあわせて67%にのぼりました。「あまり」23%と「全く」9%をあわせた「あてはまらない」は32%でした。
回答者が住む自治体の規模別にみてみます。
①東京23区と政令指定市、②有権者10万人以上の市(①を除く)、③その他の市、④町村の四つに分けて集計しました。
「健康の不安より世間の目の方が心配」に「あてはまる」と答えたのは、規模順に①で61%、②68%、③73%、④71%という結果でした。人口の多い都市部より、地方など人口の少ない地域の方が世間の目を気にする傾向が強く出ています。
都道府県単位でみても、同じような傾向がありました。有権者の多い上位5府県とその他の道府県で比べてみます。
「世間の目の方が心配」な人は、東京が59%、神奈川は58%と、いずれも全体の67%よりだいぶ少ない結果になりました。有権者が3番目に多い大阪府は63%。4番目の埼玉県は67%でした。
この調査では「自粛するよう要請されている外出をして感染したら、責められるのは当然だ」という気持ちが「あてはまる」かも尋ねています。
全体では「あてはまる」は77%(「とても」と「やや」の合計)でしたが、東京都では66%と、やはり全体より低い結果となりました。
「健康の不安より世間の目の方が心配」な人の割合は、男女の違いはほぼ見られませんでした。
年代別では、50代以下の現役層では74%が「あてはまる」と答えたのに対し、60代以上では60%と低めでした。現役層では、「職場の目」も気になるからかもしれません。
一方、高齢者は、感染すると重症化リスクが高いと言われていますので、現役層よりも健康を心配する人が多い傾向はうなずけます。そんな高齢層でも「健康より世間の目」が心配な人が6割もいた、とも言えます。
実際、新型コロナに感染して重症化する不安を「大いに感じている」人(全体の42%)に限っても、66%が「健康より世間の目の方が心配」と答えました。
「世間の目の方が心配」という意識には、重症化する不安よりも、住んでいるまちの規模の方が影響しているようです。
「コロナに感染したら村八分になっちゃうよ。だから東京出張は命がけ」。昨年の夏、こう話していた中国地方の知人の真顔が忘れられません。地方など人口の少ない地域では、比較的感染者は多くはありません。一方で、近所や職場の人間関係は、都市部に比べれば濃い傾向があります。
感染者の多い都市部に住んでいると、勤め先に感染者がいたり、知人がPCR検査を受けたり、感染者が身近にいる状況に、ある程度は慣れてしまっている部分もあります。
また、マンション住まいなどでは「隣の人の名前も顔も知らない」ことも多々あるので、人口の少ない地域に比べると、「近所の目」も気にならないのかもしれません。
新型コロナウイルス感染が世界に広がって1年。コロナ問題に覆い尽くされる政治や日常について、みんなはどう思っているのでしょうか。朝日新聞世論調査部が全国の有権者に尋ね、2人の識者に読み解いてもらいました。2020年11月11日に調査票を発送し、12月21日までに届いた回答を集計しました。【特集ページはこちら】
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