連載
#2 眠れぬ夜のレシピ
真夜中にチンする湯豆腐、腹と心の満たし方……眠れぬ夜のレシピ
「ああ良かった、まだ起きている人がいる」
なんだか、眠れない夜。頭から離れなくなる食べ物、ありませんか。一人の夜を少しでもあたたかい気持ちで過ごせるように。あなたに贈る、真夜中のレシピです。手紙を添えて、お届けします。(漫画・コラム、午後)
こんばんは、午後です。
今回の豆腐のレシピの話は、レシピと呼ぶにはお粗末なものかもしれません。でも、そんなざっくりとした料理の数々も、私はTwitterに流してきました。
今日は、少し昔にさかのぼって、私が「なぜ漫画の発表の場にTwitterを選んだのか」、その理由についてお話ししたいと思います。
数年前、のたうち回るような苦しい夜を乗り越える時、私のお供はいつもTwitterでした。Twitterがあったからこそ、なんとか乗り越えられたと言っても過言ではありません。
自分は独りぼっちだと思っている人が、ただひとりでスマートフォンと向き合っている時間が、タイムラインには流れていると思っています。
私はずっと、建前を取り外したその人自身と触れ合いたいと思ってきました。しかし現実世界でそのような交流は、相当信頼関係を築いてからでないと不可能です。でも、インターネットでなら、それが可能でした。
私は数えきれない夜を、様々な人たちの不可侵な孤独に触れて、励まされて、乗り越えました。地獄を内包しているのは自分だけではない事実に、幾度も強く励まされました。
多様なインターネットの場の中で、そういった色が最も強いのはTwitterだと私は思っています。
優しい人たちの掻き消えそうな弱音に触れられる場所であるTwitterが、私は好きです。
そういった場所だからこそ、自分の作品をタイムラインに流そうと思えました。
これまで一緒に夜を乗り越えてきた同士であるフォロワーさんに、こっそり内緒話をする気持ちで漫画を描き始めました。いまも、その気持ちは、数年前の真夜中に、タイムラインに弱音を流していたあの頃と何も変わりありません。
ざっくりとした料理の数々も、そんな内緒話のひとつです。
「私はこうして夜を乗り越えています。あなたはどうしていますか。ご無事でしょうか。」と書いた羊皮紙を瓶に詰めて、ひとりタイムラインに流しています。
少し長くなってしまいました。最後までお付き合いいただきありがとうございます。
それでは、今夜も良い夢を見られますように。
おやすみなさい。
午後
SNS作家。2020年5月からTwitterに漫画を投稿をしている。今年1月に初の書籍「眠れぬ夜はケーキを焼いて」(KADOKAWA)を出版。Twitterアカウントは@_zengo。
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