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連載

#74 ○○の世論

菅内閣〝つるべ落とし〟の支持率下落、低迷の原因は本当にコロナ?

次々と起きた「三つのボディーブロー」

新型コロナウイルスワクチンの先行接種会場の視察を終え、フェースガードを外して報道陣の質問に答える菅義偉首相。右は田村憲久厚労相=18日午後1時28分、東京都目黒区の国立病院機構東京医療センター、代表撮影
新型コロナウイルスワクチンの先行接種会場の視察を終え、フェースガードを外して報道陣の質問に答える菅義偉首相。右は田村憲久厚労相=18日午後1時28分、東京都目黒区の国立病院機構東京医療センター、代表撮影

目次

2月13、14日に実施した朝日新聞社の世論調査では、菅内閣の支持率は34%と3割台に低迷しました。上昇に転じるには力強さが感じられない一方で、政権にとって最大の課題でもある新型コロナウイルスへの対応が支持率を左右している様子が明らかになってきました。(朝日新聞記者・君島浩)

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内閣支持は横ばい34%

菅内閣の支持率は、昨年9月の発足直後の調査では65%と高水準でしたが、その後はつるべ落としで、11月は56%、12月は39%、今年1月は33%と急落しました。2月はほぼ横ばいの34%でした。

Q:あなたは、菅内閣を支持しますか。支持しませんか。
【昨年9月】/【10月】/【11月】/【12月】/【今年1月】/【2月】
支持する=65%/53%/56%/39%/33%/34%
支持しない=13%/22%/20%/35%/45%/43%
*その他・答えないは省略
*調査方法=コンピューターで無作為に電話番号を作成し、調査員が電話をかけるRDD方式で調査した。調査日は2020年9月16・17日、10月17・18日、11月14・15日、12月19・20日、2021年1月23・24日、2月13・14日。2月は、固定電話は有権者がいると判明した1208世帯から647人(回答率54%)、携帯電話は有権者につながった2001件のうち950人(同47%)、計1597人の有効回答を得た。

V字回復の気配は?

2月の支持率を分析すると、V字回復の気配は感じられませんでした。内閣を支える自民党の支持層の内閣支持率は、9~11月は8割台でしたが、12月に67%と政権安定の目安となる7割を下回り、今回は63%(前回1月は65%)に落ち込みました。

2月の無党派層の内閣支持率は18%(同16%)と2割に届かないままです。

菅内閣を「支持する」と答えた人を対象に、その理由を「首相が菅さん」「自民党中心の内閣」「政策の面」「他よりよさそう」の選択肢から選んでもらっています。

9月には41%だった「他よりよさそう」が、その後、 43%→ 44%→ 46%→ 54%→ 56%と上昇し続けています。「他よりよさそう」は、ほかの選択肢と比べて支持する理由としては消極的といえます。このことからも内閣支持は弱含みであることがうかがえます。

調査では、菅内閣発足翌月の10月から5回続けて、新型コロナウイルスへの政府対応の評価を質問しています。

Q:新型コロナウイルスをめぐる、これまでの政府の対応を評価しますか。評価しませんか。
【昨年10月】/【11月】/【12月】/【今年1月】/【2月】
評価する=49%/46%/33%/25%/31%
評価しない=37%/40%/56%/63%/56%
*その他・答えないは省略
 

ここで内閣支持率とコロナ対応の評価の推移を比べてみたところ、内閣を「支持する」と答えた人と政府のコロナ対応を「評価する」と答えた人はともに減少傾向を示し、「支持しない」人と「評価しない」人の推移はほぼ平行して上昇していました。

国民生活に暗雲のように垂れ込め続けているコロナへの対応が内閣の支持・不支持に直結していることが、くっきり浮かび上がりました。

 
 

感染者が増えれば支持率は?

一方、菅内閣発足後のコロナウイルスの1日あたりの新規感染者の推移を振り返ってみました。

菅内閣が発足した9月16日は500人台。しばらく増減を繰り返していましたが、11月上旬には千人、中旬には2千人を超えました。12月中旬に3千人を上回ると激増し、年明けの1月には8千人に接近。政府はようやく2回目の緊急事態を宣言し、2月上旬に千人台に減りました。

この間、感染者数は右肩上がりで山をなしましたが、内閣支持率はちょうど逆に右肩下がりの谷をなしていました。つまり、感染者が増えると、内閣支持率が下がり、感染者が減ると、内閣支持率が上がる傾向が見られます。

とはいえ、細かく見ると、2月に入ってから感染者数が急減したのに対し、内閣支持率は復調したとはいえません。2月の調査で、まもなく始まるコロナのワクチン接種について政府の取り組みを聞いたところ、「評価する」が「大いに」の9%、「ある程度」の62%を含めて7割を超え、「評価しない」が「あまり」の21%、「まったく」の5%を合わせて3割に満たなかったことを踏まえると、支持率が十分回復しなかったのは、なぜか、という疑問が浮かびます。

そこで、今回の調査の別の質問を眺めてみると、三つの問題がボディーブローのように内閣にダメージを与えたのでは、と推測できます。

一つ目は、2回目の緊急事態宣言が発令されたにもかかわらず、自民党と公明党の国会議員が深夜、東京・銀座のクラブを訪れていた問題です。調査では、78%が「大きな問題だ」と答え、「それほどでもない」の18%を引き離しました。「大きな問題だ」と答えた人は男性で72%、女性は84%もいました。

二つ目として、放送関連の会社に勤める菅義偉首相の長男らが、総務省の幹部を接待した問題が挙げられます。国会で説明を求められた菅首相が、長男は「別人格」で「私が内容に立ち入るべきではない」と話しました。このことについて「納得できる」と答えた人は36%にとどまり、「納得できない」が54%と半数を超えました。

三つ目は、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長が「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言した責任を取って辞任した問題です。「辞めたのは当然だ」と答えた人は72%に上り、「辞める必要はなかった」の21%を上回りました。「辞めたのは当然だ」と答えた男性は68%で、女性は75%でした。元首相でもある森氏の辞任劇をめぐって、政府や自民党の対応についても「妥当だった」は35%で、「妥当ではなかった」の52%が上回りました。

前門のコロナに加え、世界中が注目する五輪・パラリンピックの行方や「政治とカネ」の問題と、菅内閣は後門ならぬ難問に取り囲まれています。政権基盤が脆弱なだけに、しばらくは綱渡りが続くことになりそうです。

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