連載
#71 ○○の世論
外出自粛、世論調査でわかった〝地域の差〟コロナ疲れ?ゆるみ?
「昨年より自粛」高齢者と若年層でのギャップ
2度目となる緊急事態宣言は、期限の2月7日に解除できるかが危ぶまれています。私たちの「コロナ疲れ」や、自粛のゆるみが影響しているのでしょうか。緊急事態宣言の対象地域と、対象外での違いは? 1月23、24日に実施した全国世論調査(電話)の結果を分析してみました。(朝日新聞記者・風間裕之)
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緊急事態宣言は、1月7日に首都圏4都県に出され、13日には大阪、愛知、福岡など7府県が追加されました。
世論調査で、このタイミングについて聞くと、「遅すぎた」が80%でした。飲食店への営業時間の短縮要請を中心にした対策にも54%が「不十分だ」と答えました。
宣言のタイミングは老若男女を問わず、8割前後が「遅すぎた」と指摘しました。
対策の内容も18~29歳の若年層では「不十分だ」が44%と少なめで、「適切だ」と並びましたが、30代以上は、いずれも半数以上が「不十分だ」と答えました。
菅政権のコロナ対策に対し、「もっと迅速に」「徹底してやらないと」と厳しい評価を下していることがわかります。
調査では、続けて「あなたは、昨年の緊急事態宣言の時と比べて、今は外出をどうしていますか」と、3択で聞きました。結果は……
◇
・昨年よりも自粛している 18%
・昨年と同じくらい自粛している 60%
・昨年の方が自粛していた 21%
◇
「実態」は、少し割り引いて考える必要があります。世論調査では、一般に「社会的に望ましい」選択肢が実態以上に、多くなる傾向があるからです。たとえば、「前回の衆議院選挙で投票に行きましたか」と尋ねると、実際の投票率より高くなります。
そうしたことを考慮すると、社会的には望ましくない「昨年の方が自粛」21%が、「昨年よりも自粛」18%よりやや多いのは、自粛のゆるみを示していると言えそうです。
これを年代別にみてみます。
「昨年の方が自粛」は、18~29歳が36%で突出して多く、年代が上がるにつれ減っています。70歳以上では10%でした。
一方、「昨年よりも自粛」は50代以下では1割強しかいませんが、60代は20%、70代以上では29%と高くなりました。
重症化リスクが高いと言われている高齢者と、若年層とのギャップがはっきり見えます。
昨年の緊急事態宣言の対象地域は、全国に拡大しました。2度目の今回は、感染拡大が深刻な11都府県に限定して出されています。
では、対象の11都府県では、他の地域の人よりも、自粛しているでしょうか。
結果は逆になりました。
「昨年より自粛」は、対象外36道県が21%で、対象11都県の16%より高かったのです。
一方、「昨年の方が自粛」は、対象11都府県が23%で、対象外の18%より高くなりました。
東京と大阪だけをとっても、緊急事態宣言の対象外の地域の人より、自粛がゆるんでいる傾向がみられます。
調査対象者での昨年と今年との比較なので、東京や大阪の人が、昨年からずっと自粛してきたのでこれ以上は……という可能性もあります。
職業別にみると、いわゆるホワイトカラーが多い「事務・技術職層」で、「昨年よりも自粛」が11%と全体よりも少なめで、「昨年の方が自粛」が25%と多めでした。昨年からテレワークの導入が進んでいて、これ以上はできないよ、ということなのかもしれません。
菅義偉首相は国会での施政方針演説で、「いま一度、国民の皆様のご協力をいただきながら、私自身もこの闘いの最前線に立ち、難局を乗り越えていく決意です」と述べ、「30代以下の若者の感染者が増えています。多くの方は無症状や軽症ですが、若者の外出や飲食により、知らず知らずのうちに感染を広げている現実があります」と、特に若者への外出自粛への協力を呼びかけました。
国内での感染者は毎日数千人ずつ増え、死者も多い日には100人を超えています。複数の与党国会議員が深夜に東京・銀座のクラブに行ったと報じられる中、首相の言葉は、どれほど国民、とりわけ若者の心に響いているのでしょうか。
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