連載
#70 ○○の世論
東京五輪、都民もそっぽを向きはじめた…世論調査が示す慎重モード
若年層で高めの「再延期」、70歳以上は?
開幕まで半年を切った東京五輪。1月の全国世論調査(電話)で意見を聞くと、今夏開催への慎重論が一気に高まっていることがわかりました。都民もそっぽを向きはじめた東京五輪への受け止めを分析しました。(朝日新聞記者・磯田和昭)
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朝日新聞社では、昨年の7月から計4回、「東京オリンピック・パラリンピックをどうするのがよいと思いますか」という質問をしています。
1月調査では「2021年夏に開催」はわずか11%、「再び延期」が51%、「中止」が35%でした。回答がほぼ3分していた20年12月調査と比べると、「2021年夏」は3分の1に減り、「再延期」が大きく増えました。
五輪をめぐる世論は、コロナの波に呼応するように推移してきました。
「21年夏に開催」は、20年7月の33%から、10月には41%にいったん増えましたが、冬の「第3波」が拡大するなかで12月は30%に戻っていました。
1月調査は23、24日に実施しました。2度目の緊急事態宣言のさなかであったことに加え、調査直前に英紙が「日本政府は非公式ながら中止せざるをえないと結論づけた」と報道したことも、世論の動向に影響した可能性があります。
今回の調査を、年代別にみてみます。
「21年夏」は、全世代で1割前後と大きな差は見られません。「再延期」は30代以下の若年層で高め、「中止」は70歳以上で高めでした。
では、開催地・東京の都民は、どうみているのでしょうか。
東京都民も「21年夏に開催」は12月の33%から1月は14%に大きく減りました。
今回、都民の4割近くが「中止」がよい、と答えていて、全体より多めです。ずるずると再延期するぐらいなら、中止してしまった方がいい、という思いの表れなのでしょうか。
菅義偉首相は五輪開催を「人類がコロナウイルスに打ち勝った証し」にすると繰り返しています。一方、今回の調査の結果からは、「コロナ感染拡大が抑えられないなかでは、開催は難しいだろう」といった不信感がにじんでいます。
コロナの政府対応を「評価しない」と答えた人(全体の63%)に限ると、「21年夏」はわずか8%にとどまり、「中止」派が40%と全体より高めでした。政府対応を「評価する」人では「21年夏」が17%と比較的高かったのとは対照的です。
2020年9月、65%という歴史的に高い支持でスタートした菅内閣。その支持率はわずか4カ月で33%まで急落し、不支持率(45%)を下回りました。五輪開催の行方は、今後の政局も大きく左右しそうです。
本来なら政権浮揚の材料になるはずの五輪にこだわることで、かえってダメージを受けかねない――。菅政権はそんな苦境にあります。
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