「日本政府が4月1日に緊急事態宣言を出し、2日にロックダウン(外出禁止)を行う(A)」「日本で緊急事態宣言が発令されたら3週間ロックダウン(外出禁止)(B)」これらは2020年4月の一度目の緊急事態宣言の際、実際に流れた情報です。後に安倍総理大臣(当時)は“デマ”という言葉を使って否定しました。
このような情報により、国民の生活にも影響がありました。同年6月に行われた総務省の
『新型コロナウイルス感染症に関する情報流通調査』※によれば、(A)を正しい情報だと思い、信じた人の割合は14.8%、(B)については15.5%。「わからなかった」とした人は共に40%以上いました。また、真偽不明の情報に基づいて、トイレットペーパー・ティッシュペーパー・食料品等の買いだめ(余分に購入)をした人の割合は15.0%でした。
※日本全国の普段インターネットのサービスを週1日以上利用している(学業や仕事で利用している場合を除く)15歳〜69歳の男女2000人を対象にウェブアンケートを実施。期間は2020年5月13・14日。
しかし、実際に7都府県に緊急事態宣言が発出されたのは4月7日、全国に対象を拡大したのは16日でした。菅官房長官(当時)は同年3月30日の記者会見で「そうした事実はない。明確に否定しておく」、安倍総理大臣(当時)は同日の自民党役員会で「明後日、緊急事態宣言をして戒厳令まで出すといったデマが流れているようだが、そんなことは全くない。デマやフェイクニュースに気をつけなければならない」とそれぞれ否定。本来、デマとは「政治的な目的で、意図的に流す扇動的かつ誤った情報」のことですから、特定の情報について時の総理大臣がこう断じるのは極めて異例の対応です。
では、どうしてこのような事態が発生したのでしょうか。経緯を振り返ると、新型コロナウイルス感染拡大の環境下で「情報に踊らされ」やすい人間の弱点、それを拡散させる人間の心理などが浮き彫りになってきます。